事故で家族が意識不明に…「成年後見」とは

1 被害者様が意識不明の場合

車は重量も重く、速度も速い乗り物です。それゆえに、交通事故が起きてしまった際には、重症化してしまう場合も往々にしてあります。

特に、交通事故によって生じた衝撃により、頭をフロントガラスや道路にぶつけてしまうと、理性や感情、意識の働きをコントロールする脳に重大なダメージが生じてしまい、被害者様は意識不明になってしまう場合も少なくありません。

【参考】高次脳機能障害 慰謝料

その場合には、保険会社対応などはご家族の方が行うことになります。しかし、治療中などにはご家族が対応していても、意識不明の状態が示談時まで続いた場合、示談交渉に際して保険会社から「このままだと示談金を支払えないので、成年後見などで対応して欲しい」と言われることもあります。

そもそも、家族の看病すら大変なのに保険会社対応まで・・・と、ご家族の方が思い、交通事故に詳しい弁護士に依頼することを検討されることもあるかと思います。しかし、被害者様が意識不明の状態では、弁護士も交通事故の依頼を受けることができないのです。

2 被害者が意識不明だと示談できない理由

なぜ、被害者様が意識不明の場合、弁護士に依頼できなかったり、保険会社から「このままだと示談金を支払えない」と言われてしまうのでしょうか。

弁護士に依頼したり、示談することは、それぞれ委任契約・和解契約という、契約という類型にあたります。そして、交通事故の事件に関する契約をすることができる人は、原則的には被害者様ご本人ということになります。

そして、契約を締結することができる条件として、「意思能力」がなくてはなりません。「意思能力」は、法律上の判断ができる能力のことです。なぜなら、契約は自由な意思の合致によって成立するものとされており、法的な拘束力(たとえば、強制的にお金を取り上げたりする力)を持つことから、契約の当事者にはメリット・デメリットを理解し、判断する力がなければならないと考えられているからです。

もちろん、意識不明状態では、この意思能力がないと判断されるため、契約を締結できない=無効な契約ということになります。

このため、被害者様が意識不明の場合、弁護士に依頼できなかったり、保険会社から「このままだと示談金を支払えない」と言われてしまうのです。

では、こういった場合、何らかの方法はないのでしょうか。必ずしも、被害者様ご本人でないと、示談したりすることができないのでしょうか。

本来は、示談などの契約は、被害者様ご本人が行わなくてはなりませんが、例外として、「制限行為能力者制度」という制度があります。

たとえば、未成年者の方の場合には、ご両親などの法定代理人が行うことができます。それは、未成年者は「意思能力」が発達中であって、不十分であることが多いので、大人が判断することで保護をしようと法律が決めているからです。

それと同様に、たとえば交通事故によって意識がなくなってしまった人についても、類型的に意思能力を欠いているので、家庭裁判所の監督の下、意思能力がある人に代理をしてもらうことにして、保護をしようというのが成年後見制度です。

制限行為能力者制度の一つである成年後見制度を利用することにより、誰かに成年後見人となってもらうことにより、成年後見人が意識不明の被害者様に代わって示談などの契約をすることができるようになります。

3 どうやって成年後見制度を利用するのか?

成年後見制度の利用方法としては、管轄の家庭裁判所に後見開始の申立を行うことになります。

後見開始申立書を、必要書類と共に、家庭裁判所に提出し、裁判所に後見開始の審判をしてもらうことにより、成年後見人が定まります。ただ、親族が多かったり、財産の種類が多い場合には、苦労することになります。なぜなら、後見開始の審判後、成年後見人は裁判所に対して、初回報告として財産目録や収支予定表などの作成を短期間で行わなければならないからです(民法853条1項)。

具体的には、初回報告として財産目録を提出しなければ、原則として急迫の必要がある行為のみしか行うことはできず、示談などの財産処分などを行えません(民法854条)。

成年後見人については、親族の方もなることができますが、法律上の争点があるなどの場合には、親族を希望していても、弁護士などの法律専門家が選任されることもあります。法律上の争点があるために法律専門家が選任されるような場合には、争点が解消すればリレー方式で親族後見人にバトンタッチすることになります。

特に、交通事故案件の場合には、当初より、交通事故の専門弁護士に一時的に成年後見人に選任させることで、迅速かつ妥当な状態で示談することができます。

4 まとめ

このようにして選ばれた成年後見人であれば、意識不明になった被害者様の代わりに、その被害者様のために示談などの契約をすることができます。事故の結果、被害者様が意識不明になった場合には、手続としては大変ではありますが、成年後見制度を利用して、最終的な解決を図る必要があるでしょう。

成年後見制度は、申立はともかく、その後の手続としても非常に大変ですので、専門家にご相談されることをおすすめいたします。

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