用語集
あ行
赤い本(あかいほん)
「赤い本」とは俗称であり、正式には「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」のことです。表紙が赤いことから、弁護士の実務では「赤い本」と呼ばれております。過去に積み重ねられた裁判例を基に、慰謝料などについて、損害賠償としていくら求めることができるか、事故類型ごとの双方の過失割合の検討方法について記載されています。
慰謝料(いしゃりょう)
慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われる金銭のことをいいます。
交通事故における慰謝料としては、①入通院期間または実際に通院した日数を基に算出される入通院慰謝料と、②後遺障害の等級認定がされた場合に、等級に応じて算出される後遺障害慰謝料があります。
一括対応(いっかつたいおう)
交通事故後の入通院などの病院治療費を、任意保険会社が入通院先の医療機関に対して直接支払うことが主な内容になります。
任意保険会社が一括対応をしている場合には、被害者は病院の窓口で自分のお金から支払いをする必要はありません。
逸失利益(いっしつりえき)
本来であれば得られたはずの利益が、交通事故によって得ることができなくなってしまったことによる損害をいいます。たとえば、被害者が死亡すれば死亡後の収入はなくなりますし、後遺障害が残った場合には仕事の能力や効率が下がり収入が下がることとなります。
内払(うちばらい)
保険会社が、被害者が治療中のため、まだ損害の額が確定していない段階でも、すでに発生している賠償金を先払いしてくれるというものです。本来は、被害者の治療が終了し損害額が確定したあとに、賠償金を請求し、お金を受け取れることとなるのですが、被害者の便益のために保険会社が設けたものです。
打ち切り(うちきり)
任意保険会社が一括対応を終了することです。打ち切りがなされると、被害者にまだ治療の必要があっても、いったんはその治療費を被害者が支出しなければなりません。(被害者が支出した治療費は、示談交渉において保険会社に請求することとなります。)
運行供用者(うんこうきょうようしゃ)
運行供有者とは、一般には、その自動車についての運行支配をし、かつ、その自動車の運行により利益を得ている者をいいます。自動車の運行による人身事故では、「運行供用者」が損害賠償責任を負います。
か行
外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)
頭部、顔面、頸部など日常的に露出する部分に傷が残る後遺障害をいいます。
過失相殺(かしつそうさい)
過失相殺とは、交通事故の加害者だけでなく被害者にも過失がある場合、その割合だけ損害額から減額(被害者の自己負担になる)されることです。
過剰診療(かじょうしんりょう)
必要以上に過剰に医師の診療を受けることをいいます。交通事故による賠償金として認められる治療費は、必要かつ相当な実費とされています。そのため、必要以上に診療行為を行った場合に、賠償が認められないことがあります。
家事従事者(かじじゅうじしゃ)
現に家族のために家事労働に従事する人のことです。
家事従事者が交通事故にあった場合、休業損害や逸失利益が認められています。
休業損害(きゅうぎょうそんがい)
休業損害とは、交通事故により、休業による収入の減少があった場合または有給休暇を使用した場合に発生する損害です。
共同不法行為(きょうどうふほうこうい)
2人以上の人が、共同して、第三者に不法工行為を行うことです。交通事故の場合には、2台以上の車両が関与する事故により第三者に損害を与えることであり、玉突き事故の場合にも、これに該当しうることがあります。この場合、各車両運転者は、第三者に生じた損害の全部を連帯して賠償する責任があります。
経済的全損(けいざいてきぜんそん)
交通事故で壊れた自動車の修理が可能であったとしても、修理費が壊れてしまった車両の事故直前の時価と買替諸費用以上にかかってしまうことをいいます。
後遺障害(こういしょうがい)
医師による治療を受けても完全には治癒せず、身体に一定の器質的・機能的障害などが残存することです。一般的には、後遺症とも言われます。
後遺障害の等級認定(こういしょうがいのとうきゅうにんてい)
症状固定後に、被害者に後遺障害が認められるか、認められる場合には、第1級から第14級までの等級のうち、どの等級に該当するのかについて、自賠責損害調査事務所という機関が判定することを言います。
後遺障害の等級は、後遺障害の内容やその程度に応じて定められており、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額も等級に応じて算出されます。
後遺障害の異議申立て(こういしょうがいのいぎもうしたて)
後遺障害の認定内容に不服がある場合に、再度、等級認定の審査をしてもらうこと。
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)
脳の損傷が原因で、記憶力や集中力における障害や、言動の異常が生じることを言います。
交通事故証明書(こうつうじこしょうめいしょ)
当該事故発生を証明する書類のことです。証明書は、自動車安全運転センターの各都道府県事務所に申し込むのですが、「交通事故証明書申込用紙」が各保険会社、警察署、派出所、駐在所、交番、自動車安全運転センターの各都道府県事務所にあります。
交通事故紛争処理センター(こうつうじこふんそうしょりせんたー)
自動車事故に伴う損害賠償の紛争を解決するために、事故の当事者との面接相談を通して、相談、和解のあっ旋および審査を行っている公益法人のことです。
さ行
時効(じこう)
被害者が加害者に対して損害賠償を請求しうる権利は、事故の日から3年(後遺障害のある場合については症状固定日から3年)経つと、消滅します。(ただし、平成22年4月1日以降の事故の場合です。それより前の事故は2年の消滅時効となります)。
被害者の自賠責保険会社に対する被害者請求権は、事故の日から2年(後遺障害のある場合については症状固定日から2年)経つと、消滅します。
事前認定(じぜんにんてい)
後遺障害の等級認定申請について加害者側の保険会社を通じて行うものです。
具体的な手続の流れとしては、任意保険会社が後遺障害等級認定の申請を自賠責調査事務所に申請し、自賠責調査事務所がその結果を任意保険会社に通知し、任意保険会社がその結果を被害者の方に伝える、という流れとなります。
自賠責保険(じばいせきほけん)
交通事故の被害者の方へ最低限の救済を担保するために、加害者に加入が義務付けられる公的保険をいいます。交通事故証明書に保険会社の名前が書いてありますが、これは自賠責保険の会社名です。自賠責保険は、対物賠償は含まれません。そして、その支払いには限度額が定められています。限度額を超える部分の支払は、任意保険会社の負担によって行われることとなります。
自由診療(じゆうしんりょう)
健康保険などを使わない診療であり、治療費の全額を自己負担する必要があります。
交通事故の場合でも書類を提出したうえで、健康保険などを使った診療が可能です。
就労可能年数(しゅうろうかのうねんすう)
逸失利益の算定において、もし交通事故がなかったら被害者の方があとどのくらいの期間働くことができたかを考える必要があり、その基礎となる数字です。
交通事故の実務では、一般的に67歳まで就労可能と考えられるので、原則として、死亡時から67歳までが就労可能年数となります。
症状固定(しょうじょうこてい)
治療を続けていった結果、ある時期を境に、リハビリ治療に通うと一時的に良くなったように感じるが、少しするとまた同じような痛みや支障が出てしまうという、いわば一進一退の状況になることがあります。このように、それ以上の治療を続けても治療の効果が望めない状態をさして症状固定といいます。
保険会社による損害賠償は症状固定日までとなります。
素因減額(そいんげんがく)
被害者の心因的要因および身体的要因(既往症など)が損害の拡大に影響している場合には、損害賠償額を減少されるときがあります。ただし、全ての心因的要因および身体的要因(既往症など)が減額の対象とされるわけではなく、当該身体的要因が疾患に当たる場合にかぎられるなど、減額される対象をめぐって、多くの裁判例があります。
た行
第三者による傷病届(だいさんしゃによるしょうびょうとどけ)
交通事故の被害によるケガの治療に健康保険(国民健康保険)を使う際に必要となる届け出のことをいいます。
な行
任意保険(にんいほけん)
自賠責保険で補償されない物損事故、また自賠責保険金額を超える損害賠償部分を補ってもらうため、個人の意思で加入する保険です。
は行
評価損(ひょうかぞん)
自動車の修理をしても、機能や外観に欠陥が残ったり、あるいは事故歴があるとの理由で自動車の価値が低下することで発生した損害のことです。
物損事故(ぶっそんじこ)
交通事故のうち、人に死傷がなく、自動車や着衣などの器物に損壊が生じた事故を(特に人身事故との区別の意味で)物損事故と言います。
弁護士費用特約(べんごしひようとくやく)
弁護士に依頼した場合に発生する弁護士費用を、自分が加入している自動車保険などの保険会社が支払ってくれるという特約です。加入者の家族も特約が使える場合がありますので、加入されている保険会社に確認してみてください。
ま行
免責証書(めんせきしょうしょ)
保険会社と示談がまとまった際に、その合意内容を記載した和解書です。
や行
ら行