下肢の後遺障害慰謝料
下肢とは、脚部つまり足全体を言います。
下肢の後遺障害としては、①欠損障害、②機能障害、③変形障害、④短縮障害があります。それぞれの後遺障害等級と認定基準は以下のとおりです。なお、足関節から先の部分については、足指の後遺障害として、別途後遺障害等級が定められています。
① 欠損障害
下肢の欠損障害については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。
【欠損障害に関する後遺障害等級と認定基準】
等級 | 後遺障害の内容(認定基準) |
---|---|
別表第2
1級5号 |
両下肢をひざ関節以上で失ったもの ※「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、(1)股関節において寛骨と大腿骨を離断したもの、(2)股関節とひざ関節との間において切断したもの、(3)ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの、のいずれかに該当するものを言います。 |
別表第2
2級4号 |
両下肢を足関節以上で失ったもの ※「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、(1)ひざ関節と足関節との間において切断したもの、(2)足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの、のいずれかに該当するものを言います。 |
別表第2
4級5号 |
1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
別表第2
4級7号 |
両足をリスフラン関節以上で失ったもの ※「リスフラン関節以上で失ったもの」とは、(1)足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの、(2) リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの、のいずれかに該当するものを言います。 |
別表第2
5級5号 |
1下肢を足関節以上で失ったもの |
別表第2
7級8号 |
1足をリスフラン関節以上で失つたもの |
後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1100万円(3000万円) | 2800万円 |
2級 | 958万円(2590万円) | 2370万円 |
4級 | 712万円(1889万円) | 1670万円 |
5級 | 599万円(1574万円) | 1400万円 |
7級 | 409万円
(1051万円) |
1000万円 |
注)1級の自賠責保険金額3000万円のうち、1100万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。
ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。
② 機能障害
下肢の機能障害については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。
【機能障害に関する後遺障害等級と認定基準】
等級 | 後遺障害の内容(認定基準) | 別表第2
1級6号 |
両下肢の用を全廃したもの ※「下肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(股関節、ひざ関節及び足関節)の全てが強直したものを言います。3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直したものもこれに含まれます。 |
---|---|
別表第2
5級7号 |
1下肢の用を全廃したもの |
別表第2
6級7号 |
1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの ※「関節の用を廃したもの」とは、(1)関節が強直したもの、(2)関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの、(3) 人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、のいずれかに該当するものを言います。 ※「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものを言います。 |
別表第2
8級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
別表第2
10級11号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの ※「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、(1)関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、(2)人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの以外のものを言います。 |
別表第2
12級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの ※「関節の機能に障害を残すもの」とは、「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものを言います。 |
後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1100万円(3000万円) | 2800万円 |
5級 | 599万円(1574万円) | 1400万円 |
6級 | 498万円(1296万円) | 1180万円 |
8級 | 324万円(819万円) | 830万円 |
10級 | 187万円(461万円) | 550万円 |
12級 | 93万円(224万円) | 290万円 |
注)1級の自賠責保険金額3000万円のうち、1100万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。
ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。
③ 変形障害
下肢の変形障害については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。
【変形障害に関する後遺障害等級と認定基準】
等級 | 後遺障害の内容(認定基準) | 別表第2
7級10号 |
1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ※「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、(1)大腿骨の骨幹部等に癒合不全を残すもの、(2)脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの、(3) 脛骨の骨幹部等に癒合不全を残すもの、のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものを言います。 |
---|---|
別表第2
8級9号 |
1下肢に偽関節を残すもの ※「偽関節を残すもの」とは、(1) 大腿骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要とするもの以外のもの、(2) 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要とするもの以外のもの、(3) 脛骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要とするもの以外のもの、のいずれかに該当するものを言います。 |
別表第2
12級8号 |
長管骨に変形を残すもの ※「長管骨に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものを言います。 (1)(a)大腿骨に変形を残すもの、(b) 脛骨に変形を残すもの、のいずれかに該当する場合で、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)以上のもの (2)大腿骨若しくは脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの又は腓骨の骨幹部等に癒合不全を残すもの (3)大腿骨又は脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの (4) 大腿骨又は脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの (5) 大腿骨が外旋45度以上又は内旋30度以上回旋変形癒合しているもの |
後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) | 弁護士基準 |
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7級 | 409万円(1051万円) | 1000万円 |
8級 | 324万円(819万円) | 830万円 |
12級 | 93万円(224万円) | 290万円 |
注)7級の自賠責保険金額1051万円のうち、409万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。
ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。
④ 短縮障害
下肢の短縮障害については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。下肢の短縮については、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較して等級を認定します。
【短縮障害に関する後遺障害等級と認定基準】
等級 | 後遺障害の内容(認定基準) |
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別表第2
8級5号 |
1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
別表第2
10級8号 |
1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
別表第2
13級8号 |
1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) | 弁護士基準 |
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8級 | 324万円(819万円) | 830万円 |
10級 | 187万円(461万円) | 550万円 |
13級 | 57万円(139万円) | 180万円 |
注)8級の自賠責保険金額819万円のうち、324万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。
ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。