保険会社から示談金を提示された方

人損の賠償については、症状固定ないし治癒をして、治療が終了した段階で、傷害部分の損害範囲が確定することになります。また、後遺症が残ってしまった場合については、後遺障害の認定を得た場合、後遺障害部分の賠償が定まってくることになります。

往々にして、後遺障害の認定結果が出た時点において、加害損保側から損害賠償額の提示が送られてくることが多いです。本項目は、その提示が送られてきたあとの話をさせていただきます。

1.損害の提示と示談書が送られてきたあと、注意しなくてはならないこと

この時点で示談書が送られてきても、すぐに名前を書いて送ってはなりません!この書面を送付した時点で、事件が終了してしまいます。「実は、金額が少なく納得がいかなかった・・・。」と思っていて、その後に弁護士に依頼しようとしても手の打ちようがなくなります。

示談書が送られてきた時点ですべきことは、金額が正当なものかどうか、ということを判断する必要があるということです。

では、何によって金額が正当なものなのかを考えていくべきなのでしょうか。保険会社の初回の提示は、ほとんどの場合、自賠責基準によるものか、その保険会社の内部の基準(任意保険基準)を基にして計算をしてきます。

しかし、弁護士の立場からしますと、これらの基準によるものは、弁護士介入後に利用される「裁判基準」と呼ばれる基準より低いことが多いです。示談交渉段階でも、弁護士に依頼することで「裁判基準」によって請求することができます。

もちろん、示談は和解契約であることから、互譲が必要となり満額を獲得できるとはかぎりませんが、それでも任意保険会社の基準よりも上昇することが往々にしてあります。特に、後遺障害を獲得されているような場合には、保険会社の提示額は裁判基準にて請求できる金額よりもかなり低いことが、当事務所のこれまでの経験上多いです。

ただし、自賠責保険の場合には、被害者様側に7割以上の過失が存在しなければ、過失割合減額がされないので、通院期間が短い場合、過失割合の程度によっては裁判基準の方が低くなることもあります。

保険会社の提示額が適正か知りたい

2.弁護士に依頼するか検討する際に必要なこと 弁護士費用特約の有無

(1)弁護士に依頼すれば基準が変わり、示談金額が上がるとは言っても、弁護士費用が必要になります。弁護士費用の支出によって、手取り額が減少したのでは、依頼した意味がなくなります。

この場合、弁護士費用を差し引いた裁判基準と、現在の提示とどちらが有利なのかを慎重に検討する必要があります。

(2)弁護士特約とそのメリット

「弁護士費用等保障特約」(通称「弁護士特約」)、こちらの特約に加入されている方は、弁護士費用の問題で頭を悩ます必要は、ほとんどのケースにおいてありません。内容についてはそれぞれの保険会社の約款によって異なりますが、本文書作成時点において、大部分の保険会社の弁護士特約の内容は法律相談費用10万円まで、弁護士費用最大300万円までを支出するというものです。もちろん、約款によって異なりますので、保険会社によっては一部支出する可能性がありえます。したがって、念には念を入れて、ご自身の保険会社に確認するようにしましょう。

さて、大部分の保険会社の弁護士特約を前提にお話しますが、この300万円というのは、着手金報酬金などの報酬や実費などを含めて支出されます。しかし、300万円というのは、相当高額の請求ができる場合でないかぎり、達することはありません。

たとえば、10級程度のやや重い後遺障害等級であって、被害者様が若く、障害が残り続けてしまう後遺障害類型の場合などには、この300万円を超えることがあります。もちろん、このような場合には、保険会社の提示は低いことが多く、弁護士特約なしの場合でも弁護士を入れて請求した方が、獲得金額が圧倒的に増えることもあります。

しかし、非該当の方の場合や、労働能力喪失期間が裁判上かぎられている神経症状の後遺障害が認定された場合などについては、基本的に300万円を超えることはないものと思われます。この場合には、基本的に、弁護士特約から全額報酬などが支払われるので、被害者様が支出する費用は0(ゼロ)となります。

また、保険等級が下がるなどのデメリットも一般的にはありません。したがって、費用の支出なしに裁判基準にて請求することができるというメリットのみが得られるのです。

(3)そして、この弁護士特約は、利用可能範囲が広いことが多く、具体的には被保険者の方だけでなく、同居の親族や、別居していても未婚の方も含まれることが多いです。

自動車保険だけでなく、クレジットカードの保険や、火災保険など他の保険に付保されていることがありますので、保険証券を確認後、それぞれの保険会社にご確認ください。

(4)弁護士への法律相談をご検討中であれば、あらかじめ保険会社に弁護士特約を使いたいと事前連絡を入れておくと、スムーズに対応することができると思います。

弁護士費用特約

3.長期間示談をしないことのリスク

「示談書にすぐサインをしないということが大切である」ということをお伝えしましたが、逆に示談をしないでずっと放置しておくと、それはそれで問題が生じます。

一つ目としては、事故から3年経過した場合、時効の問題を考えなくてはいけません。

人身傷害保険など自分側の保険会社ではなく、加害損保が治療費対応などをしている場合、加害損保からの提示が出た場合や、後遺障害が認定された場合には、時効の起算点が変更される可能性があり、その結果、事故日から3年ではなくなる可能性が出てきます。したがって、消滅時効については十分に注意を払っておくことをおすすめします。

二つ目としては、加害損保側から、債務不存在確認訴訟を提起されるリスクがあります。訴訟については、一般的には被害者が原告として起こすことが通常ですが、加害者側も事件を早く終わらせたいと考えて、原告として債務不存在確認訴訟を起こしてくることもあります。この場合、原告側である被害者の方にとっては、準備不十分のまま訴訟対応をしなければならなくなったり、訴訟提起されたことで自賠責の判断が止まってしまい、異議申立ての判断が出なくなってしまうリスクが生じます。

いずれにせよ、適切な理由なしに不用意に長引かせるのは、逆に危険を招くことにもなりえますので、あまりおすすめできません。

4.まとめ

いかがでしたか。一旦、示談してしまうと引き返すことができません。一般的に、保険会社の人身損害の提示は弁護士介入時と比べて低いことが多いため、十分な確認が必要です。

そして、弁護士を介入させると被害者の方にとって有利な結果を得やすくなりますが、弁護士特約があるとよりそのメリットを享受しやすくなりますので、この段階の方は必ず、弁護士特約の加入有無を確認しましょう。

不用意に長引かせると、逆にリスクもありますので、提示が出たら早期に専門家である弁護士などに相談されることをおすすめします。

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