事故にあわれた直後の方
この度は予期せぬ事故に見舞われ、さぞかし驚かれたこととお察し致します。心からお見舞い申し上げます。
このような時に、まず何をしたらよいのでしょうか。
皆様は交通事故に関して、たとえば、免許の更新の時などに、警察署のビデオや免許センターの講義などで、様々な情報を教えられていると思います。
しかし、交通事故に遭ってしまうと、事故が起きてしまったという精神的ショックのあまり混乱をしてしまったり、事故による衝撃のためにフラフラになり、まず何をすべきなのかということが分からなくなることもありえます。
そんな時にすべきことが分かれば、混乱や不安も少なくて済みますし、後々生じうる紛争を防止できることにもなります。
1.必ずすぐに警察に連絡を入れる。
- (1)事故の被害に遭ってしまった場合には、必ずすぐに警察に連絡を入れ、警察官を呼んでください。これは、運転者が道路交通法上の義務(道路交通法72条、罰則117条)として行わなければならない当然の行為です。
- (2)それだけでなく、交通事故賠償にも関係してきます。具体的には、交通事故があったという立証にも関係してきます。警察に連絡を入れて、警察官が現場に来て書類を作成すると、後々交通事故証明書という文書を入手することができます。この文書が入手できる状態になることにより、加害者側の保険会社も対応してくれるようになります。その理由としては、自賠責保険に加害者が請求するための必要な書類であるからです。
- (3)そして、警察官が来たら、事故状況を正確に伝えるようにしてください。いい加減に伝えてしまうと、その情報が警察の文書に記録されることにより、後々加害者側が言い分を翻した際に、事実関係を証明できなくなってしまうこともありえます。
また、おケガをしている場合には、物件事故ではなく人身事故扱いにしておいた方がよいです。特に、追突など、明らかに被害者様に過失割合が0の場合でなく、過失割合に関する争いが発生しそうな場合には、物件事故だと「物件事故報告書」という簡素な内容の文書しか作成されていないのに対し、人身事故であると「実況見分調書」という厳密な文書が作成されます。事故状況の立証については人身事故扱いにしておいた方が有利であるということをご理解しておいてください。
なお、この実況見分調書は事故状況に関する重要な文書であり、訂正できませんし、あとでこれと違う内容を主張しても基本的に採用されませんので、しつこいようですが警察官には事故状況を正確に伝えてください。
また、目撃者がいる場合には、目撃者の確保も行っておいた方がよいと思われます。
2.加害者側の情報を入手する
警察官が来た際にも告げられると思いますが、被害者様と加害者のお互いの免許の確認をしてください。その際には、免許証記載の加害者の住所・氏名だけでなく、携帯電話番号などの連絡先や保険会社の情報も入手するようにしましょう。これは、次の項目で重要になってきます。
さらに、加害者にも被害者様の住所・氏名・連絡先などを教え、加害者側が加入する保険会社に連絡を入れてもらうようにしましょう。これにより、加害者加入の保険会社から連絡がかかってくることになり、対応がスムーズになります。
なお、強制保険である自賠責保険については、前述した交通事故証明書に記載されています。
3.自分側の保険会社にも連絡を入れる
事故状況などによっては、被害者様側にも一定程度過失割合があるケースもあります。そのような場合には、加害者側の物損人損について対応する必要があります。したがって、必ず事故直後にはご自身の側の保険会社にも連絡を入れるようにしましょう。その時には、前述、「3.加害者側の情報を入手する」で確認した情報が必要になります。
また、過失割合が大きい場合には加害者側の保険会社が被害者様の治療に関して保険対応してくれないケースもありえます。このような場合、本来の民法の原則通り、原則としてご自身のお金で通院して、あとで自賠責保険や加害者側に請求という形になってしまいます。
しかし、人身傷害保険や搭乗者傷害保険等の保険に加入している場合には、自分の保険会社に連絡してそれらの保険を利用することで、ご自身の保険会社が加害者側保険会社の代わりに支払い対応してくれる可能性もあります。また、仮に加害者側が無保険である場合には、無保険車補償保険などを使うことになります。
なお、自分側の保険会社というのは、必ずしも運転者ご自身で加入していなくても構いません。場合によっては、同居のご家族や、独身の場合はご両親の保険会社にも確認し、利用できるか確認してみてください。
4.必ず事故後早めに通院をする
警察・保険会社対応が終わったら、必ず事故後、早い段階で病院に通院し、痛みや問題のある個所について、医師に伝えるようにしてください。特にむち打ちなどでは、事故直後には痛みが出ないことが多く、事故から数日経った段階で出てくることが多いです。痛みが出たら、たとえ忙しくても、すぐに病院へ行ってください。
その理由としては、「交通事故による」損害として認められるためには、原因である交通事故と、結果であるケガの内容との間に因果関係なければならないからです。仮に、事故から期間が空いてしまうと、「痛ければ通常病院に行くでしょう。」「事故以外の理由があるのではないか。」と考えられてしまい、因果関係が切れてしまうと判断されやすくなってしまうからです。
特に、事故から14日が経過すると、機械的に、自賠責に「因果関係がない」と判断されることになりますので、任意保険会社も対応してくれなくなってしまいます。機械的にというのは、たとえばお正月やお盆であっても、通院できない理由にはならないということです。
また、単に通院するだけではなく、部位や症状も明確に伝えてください。自賠責や裁判などにおいては、診断書やカルテに記載されたことが重要な証拠となり、それらに記載されていないことはないものとして扱われてしまいます。特に、特定の部位について後遺障害が残ってしまい、その部位について初期の診断書やカルテに何ら記載されていないといった場合には、大きな問題になってしまいます。
その為、事故直後に通院を開始し、通院初期の段階に医師に的確な情報を伝えるというのはとても大事なことです。
5.まとめ
事故直後で、精神的にも肉体的にも、とても辛い時期であるとお察しいたします。
しかし、警察対応・初期の保険会社対応・治療の開始は、後々問題となるリスクを回避し、安心して治療に専念できるようにするために、とても重要な点です。的確に対応したうえで、治療に専念するようにしてください。