症状固定・治療打ち切りになった方
交通事故に遭ってしまい、頚椎捻挫・腰椎捻挫などの傷病名の場合、大部分の方は3か月から6か月程度経過した段階で、症状固定状態となり、治療打切りとなってしまう可能性があります。もちろん、骨折などの大ケガの場合には、それ以上の治療が必要ということがあります。
症状固定かどうか、つまり治療が医学的に効果を有するかどうかということについては、一次的には診察している医師が判断すべきことです。しかし、一方で法的な概念であることから、医師は継続すべきと考えている場合でも、加害者側の保険会社が治療費支給の打ち切りを宣言してしまうということがあります。打切りの打診であれば、交渉によって期間を延長してもらえることもあります。しかし、完全に打切られてしまうと、現状の裁判実務において、保険会社のサービスとして行っていると判断されているため、治療費の支払いを保険会社に強制させることはできません。
それでは、医師の方で、治療の効果があると考えているにもかかわらず、加害者保険会社が治療費支払いを打切りした場合、被害者様側はこれに応じて治療を止めなくてはいけないのでしょうか。
この場合、たとえば健康保険を利用して通院することが可能です。ただし、他人(加害者)の行為から生じた治療費などの損害については、原則として加害者が負担すべきものです。そのため、加害者の行為から生じたケガの治療費について、健康保険が医療機関に支払った場合、健康保険は加害者に損害賠償請求できます(健康保険法57条)。
この健康保険の権利行使の機会を確保するため、健康保険を利用して治療を継続するためには、第三者行為届やその付属資料を提出する必要があります。これにより、被害者様は健康保険を用いて治療を継続することができるようになります。
ただし、通院自体は継続することはできますが、支払った3割の部分について、被害者様が加害者保険会社に請求して認めてもらえるかは別問題です。そもそも、加害者保険会社は、打切り後の部分について、医学的に有効な治療ではないと考えて因果関係を否定的に考えたから、打切りの判断をしています。そのため、医師の判断や治療費などについて回収不可能なリスク、医療機関によっては後遺障害診断書を作成してもらえない可能性があるリスクを踏まえて、慎重に判断していく必要性があります。
その他、たとえば通勤中の事故などの時には、労災を利用して通院することもできます。
保険会社打切り時にせよ、健康保険で通院するにせよ、症状固定の日はいずれやってきます。仮に打切りが6か月程度経過した時点であれば、適切な検査を受けて後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害等級の獲得を目指すべきです。そして、適切な検査は、症状固定の判断が下る前に行わなくてはなりません。
特に、頚椎捻挫や腰椎捻挫においては、神経学的な検査をしてもらい、後遺障害診断書に記載してもらうことが重要です。
後遺障害の詳細については、後遺障害が残ってしまったという項目でご説明させていただきます。