事前認定と被害者請求の違い

■後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2つの申請方法があります。以下では、事前認定と被害者請求の違いにつきご説明します。

1 事前認定とは

事前認定は、加害者側の保険会社が申請手続を行います。ですから、被害者は医師に作成してもらった後遺障害診断書などの必要書類を加害者側任意保険会社に送れば、あとの手続は加害者側任意保険会社に全部やってもらえます。

症状固定まで相手保険会社による治療費の一括対応がされていたのであれば、通院中の診断書や診療報酬明細書などは、医療機関から加害者側任意保険会社に提出されているはずですので、通常は後遺障害診断書を送るだけです。

【事前認定のメリット・デメリット】

事前認定は、加害者側任意保険会社に必要書類の収集や画像の取得などを全て任せることができるので、被害者にとっては手間がかからないというメリットがあります。自分で病院に行って画像を取り付けたり、役所で印鑑証明書を取得したりする時間がないという方や、なるべく費用をかけたくない方、後遺障害が認定される見込みが低いがとりあえず申請してみたいという方などは、事前認定がやりやすいでしょう。

ただ、一方で、デメリットと言いますか、注意しておかなければならないことがあります。

1つは、加害者側任意保険会社は等級認定がされるよう積極的にアドバイスなどしてくれるわけではないということです。ですから、必要最低限の資料のみ自賠責に提出することになります。

もう1つは、事前認定の場合は、かりに等級が認定されても、加害者と示談をするまでは賠償金は支払われないということです。等級認定の結果が出たあと、示談がスムーズに進めば特に問題ありませんが、加害者側と過失割合や金額などで揉めてなかなか示談できないとなりますと、賠償金が手元に入ってくるまでに時間がかかってしまいます。

ですから、「等級認定されたら、自賠責限度額分だけでも早く賠償金を受け取りたい!」という場合には、事前認定ですとご希望どおりにいかない可能性がありますから、よく考えて申請方法を選んでいただく必要があります。

2 被害者請求とは

被害者請求は、被害者自らが必要書類を収集したうえで、加害者が加入する自賠責保険会社に直接後遺障害の等級認定を申請する手続です。自動車損害賠償保障法16条に規定されているので、「16条請求」と呼ばれたりもします。被害者請求の書式は、加害者が加入する自賠責保険会社から取り寄せることができます。

【被害者請求のメリット・デメリット】

被害者請求は、被害者自身で病院に行って画像を取り付けたり、役所で印鑑証明書を取得したりするなど、申請の準備に手間と時間、費用がかかります。

ですが、事前認定の場合と異なり、加害者側任意保険会社が間に入ることはないので、加害者側任意保険会社に適正な等級認定を妨げる資料を付けられるのではないかといった不安はありませんし、逆に、等級認定の補強となる資料があれば、必要書類だけでなく補強資料を付けて申請することもできます。

また、被害者請求の場合、等級が認定されると、加害者側と示談をする前であっても、自賠責から被害者に直接、認定された等級に応じた賠償金が支払われます。支払われる金額は自賠責限度額までの金額ですが、加害者側との示談の前に一定の金額を受け取ることができますので、余裕をもって示談に臨むことができます。

被害者請求には以上のようなメリットがありますので、加害者側任意保険会社に任せるのはなんとなく不安だという方や、必要書類だけでなく等級認定の補強となる資料も提出したいという方、加害者側と示談する前にとりあえず自賠責分の賠償金について先に受け取りたいという方などは、被害者請求の方法で申請することになります。

■必要書類

被害者請求による後遺障害等級認定の申請にあたり必要となる書類には、一般的には以下のようなものがあります(保険会社により違いがありますし、事故内容によって必要書類が変わってくることもあります。)。なお、事前認定の場合は、通常は、後遺障害診断書を加害者側任意保険会社に送付するだけです。

  • 支払請求書兼支払指図書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書、診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書
  • 印鑑証明書
  • 前年分の源泉徴収票など収入額を証明できる資料
  • MRI、CTなどの画像データ など

■申請から等級認定の結果が出るまでの流れ

事前認定と被害者請求は、等級認定の申請を加害者側と被害者側のどちらが行うかという違いであり、申請をした後、認定結果が出るまでの流れに違いはありません。

後遺障害等級認定の申請がされると、損害保険料率算出機構(自賠責調査事務所)という機関が、提出された資料に基づき、審査、判断を行います。場合によっては、追加で資料の提出を求められることもあります。

認定の結果は、だいたい1~3か月程度で出ます。事前認定の場合は加害者側任意保険会社を通じて、被害者請求の場合は加害者が加入する自賠責保険会社から直接、被害者に結果の通知がされます。

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