自由診療と保険診療(健康保険)の違い
交通事故被害で受けた治療費に健康保険は使えるのか
交通事故によるケガで、病院で治療を受けようとしたところ、病院から「健康保険は使えません」と言われることがあります。本当に健康保険は使えないのでしょうか?という問い合わせを当事務所でも受けることがあります。
結論から申し上げますと、ご加入の健康保険組合などに「第三者行為による傷病届」を提出することよって、健康保険を利用して治療を受けることができます。
この「第三者行為による傷病届」は、交通事故などのように第三者によってケガを負わされるなどした場合に、健康保険が加害者側に求償(健康保険が治療費を支払った範囲内で加害者に請求をすることを言います)をする際に必要な情報を届け出るもので、交通事故の治療で健康保険を使用するためには必ず必要な手続になります。
自由診療と保険診療の違い
保険診療と自由診療の違いとして、まず挙げられるのは、保険診療(健康保険)であれば自己負担分は原則治療費の3割分ですが、自由診療の場合は治療費全額が自己負担となるという点です。
その他に、保険診療と自由診療の違いとしては、治療点数の単価の違いがあります。医療機関の治療費は、治療内容によって定められた診療報酬点数にしたがって費用の算出がなされます。たとえば、診察や投薬の処方などの治療の結果、合計○○点となり、これに所定の単価をかけて医療費額が算出されます。健康保険では、この単価が1点につき10円と定められています。
しかし、自由診療では単価の定めがなく、医療機関が自由に単価を決めることができると言われています。多くの医療機関では自由診療の場合、1点の単価が健康保険の倍程度の金額としているようです。
保険診療(健康保険)を使用するメリット
「治療費については保険会社が払っているから健康保険を使用するメリットはないのではないか」「被害者なのに自分の保険を使わないといけないのは納得ができない」、という方もいらっしゃいます。しかし、必ずしもそのような考え方が正しいとは言えません。
交通事故においては、当事者どちらかの一方的な過失で生じたと判断されるケースよりも、大小の違いはあれ当事者の双方に過失が発生すると判断されるケースが多いものです。そして、被害者側にも過失が生じる場合、被害者側の過失相当分が損害総額から差し引かれることになります(ただし、自賠責保険の上限120万円の範囲内であり、かつ自賠責保険基準の損害算出方法の範囲内であれば、厳密な過失相殺は行われません)。
そのため、自賠責保険の上限である120万円(治療費だけでなく、慰謝料、休業損害などの損害額全て含む)を超え、被害者に少しでも過失が生じるケースでは、健康保険を使用することによって、自己負担分を減らすことができます。
保険診療(健康保険)を使用する場合の注意点
医療機関によっては、健康保険を使用する場合、自賠責様式の診断書の作成や、後遺障害診断書の作成を断られることもありますので、こうした点を事前に医療機関に確認をしたうえで、保険会社などとも相談し、健康保険を利用されることをおすすめします。