人身事故 [公開日]2018年5月16日[更新日]2019年11月6日

第一当事者、第二当事者とは?交通事故は決して他人事ではない!

交通事故の「当事者」は、交通事故に関与したすべての人が対象とされます。
つまり、過失のある人、全く落ち度のない人、死亡してしまった人、無傷だった人のすべてが一括りに「当事者」としてカウントされています。

交通事故の統計では「第一当事者(第1当事者)」、「第二当事者(第2当事者)」という用語を用いることがあります。
第一当事者とは、当該交通事故で最も過失の大きかった人や、受傷の程度が重かった人のことを指します。

日頃、ニュース記事などで目にする交通事故に関する報道内容も「第一当事者は誰なのか?」という視点を加えることで、交通事故の実態により迫ることができます。

このコラムでは、交通事故の「当事者」について、詳しく解説していきたいと思います。

1.第一当事者・第二当事者とは?

交通事故の「第一当事者」、「第二当事者」という言葉は、警察庁が取りまとめている「交通事故統計」などで用いられる用語です。
交通事故は複数の当事者が関わっていることが一般的ですが、これを過失の程度や被害の程度に応じて序列化し、「第一当事者」「第二当事者」などと呼びます。

「交通事故の当事者=加害者」というイメージで交通事故のニュースや統計を見ている人も多いかも知れませんが、統計用語としてはそのような取扱いをしていません。

実際の交通事故でも、当事者の双方に過失がある(脇見運転や速度超過など)があることは珍しくなく、また、全く過失のない者も当事者としてカウントされます。

(1) 当事者順位の定義と決定方法

交通事故の当事者順位は、次の原則にしたがって決定されます。

  1. 交通事故の当事者順位は、「過失の軽重」により、重い方を「先位当事者」、軽い方を「後位当事者」とする
  2. 過失の程度が同程度の場合には、「人身損傷の程度」により、損傷の軽い方を「先位当事者」、損傷の重い方を「後位当事者」とする
  3. 単独事故の場合は、常に車両等の運転者を第一当事者とし、その相手方となった「物件」等を第二当事者とする
  4. 同乗者は、当該事故に直接関与した当事者よりも後位の当事者とする

文字だけの説明では少し分かりづらいので、具体例を用いて上の基準を確認してみましょう。

(2) 具体例

ケース1は、(A)が信号無視し、(B)に側面衝突したという交通事故です。
この場合、信号無視をした(A)方が(B)よりも過失が大きいことから、(A)が第一当事者、(B)が第二当事者となります。

ケース2のように、交差点などにおけるいわゆる「出会い頭」の衝突事故では、当事者双方の過失割合が同程度(5:5)ということも少なくありません。
この場合には、交通事故による損傷の重たい方を第一当事者、軽い方を第二当事者とします。

たとえば、(A)は運転手自身が頸部に損傷を負い、(B)は車両の損傷だけというケースであれば、(A)が第一当事者、(B)が第二当事者となります。

交通事故の過失割合は誰が決めるのか?

[参考記事]

交通事故の過失割合は誰が、どう決めるのか?

ケース3

ケース3は、同乗者がいる場合です。同乗者は、交通事故に直接関与した当事者よりも後の順位の当事者として取り扱われます。

たとえば、(A)の運転する乗用車が、(E)の居住する家屋(D)に突っ込んだために、家屋の破損により(E)が負傷したというケースでは、(A)の同乗者である妻(B)および子(C)は、交通事故の直接の当事者である(A)・(D)よりも後順位の当事者(第三当事者・第四当事者)となります。

また、家屋の破損により受傷した(E)は、(A)の同乗者である(B)・(C)よりも後順位の取扱い(第五当事者)となります。

好意同乗

[参考記事]

好意同乗・無償同乗と賠償金の減額

2.当事者に着目した場合の交通事故の実態

(1) 当事者の序列に着目すると見方が変わる

交通事故に関する報道は、ニュースや新聞など、さまざまな媒体で目にすることがあります。
交通安全週間の時期や年末が迫ると「今年の死亡事故件数」の状況などが話題として取り上げられることも少なくありません。

これらの交通事故に関する報道や話題も、「その交通事故で最も過失(被害)の大きい当事者は誰か」という観点で見直すと、よりリアルな交通事故の実態に気づくことができます。

ニュースになる交通事故、ならない交通事故の違いとは?

[参考記事]

ニュースになる交通事故、ならない交通事故の違いとは?

(2) 高齢者による事故

たとえば近年では、社会の高齢化に伴い、高齢ドライバーが増えたことで、「高齢の運転免許返上」や「高齢者の交通事故」などが話題にされることが増えてきました。

内閣府の推計によれば、75歳以上の運転免許保有者の数は、2021年には600万人を超えるものとされています。
特に、近年では、死亡事故における高齢者の割合が増加していることが問題視されています。

死亡事故に関する多くの数値は減少(改善)傾向にあるといえるのですが、死亡事故における高齢者の割合だけが増加(悪化)傾向にあります。

ニュースなどで「高齢者の死亡事故が増えている」などと報道されると、「高齢者だから運転がおぼつかなくて死亡事故につながることが多いのではないか」と想像したり、「高齢者の運転は危険だから高齢の両親の運転免許を早く返上させないと」と考えたりする人も少なくないと思います。

しかし、交通事故の第一当事者というフィルターを通して交通事故の状況を確認すると、上のようなイメージとは違う実態もみえてきます。

原付以上の免許保有者10万人当たりの交通事故件数

上のグラフは、警察庁が公表している「原付以上の免許保有者10万人当たりの交通事故件数(第一当事者の年齢別)」と「死亡事故における高齢者の割合」の推移を1つのグラフにまとめたものです。

たしかに、死亡事故における高齢者(65歳以上)の割合は層化傾向にあり、現在では50%以上を占めています。

しかしながら、第一当事者が65歳以上の高齢者の交通事故件数は、数の上でも割合の上でも若年層(16~24歳)と比べれば圧倒的に少ないことがわかります。

以上のような統計資料を総合すれば、高齢者が死亡する交通事故が多いのは、「高齢者に落ち度がない(少ない)」ケースが決して少なくないということも見て取れます。

なお、警察庁「平成29年中の交通事故の発生状況」によれば、高齢者が第一当事者となる交通事故の大半は、操作不良を原因とした工作物衝突や路外逸脱による単独事故(相手のいない自損事故)が多いようです。

高齢ドライバーの事故率は本当に高い?データから紐解く事故傾向

[参考記事]

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3.まとめ

交通事故に関する話題は様々なところで取り上げられています。特に高齢者に関する問題などは、身近に高齢ドライバーがいない場合などには「縁遠い話」として流してしまいがちです。

しかし、統計資料をよく分析すると、高齢者の死亡事故の大半は「被害者」としてのものであり、加害者は「高齢者問題は無関係」と思っている若年層である場合が少なくありません。

高齢者に限らず、交通事故は、いつ自分の問題となって降りかかってくるかわからない問題です。
日頃から関心を強く持ち、交通事故で何かお困りごとが生じたときには、できるだけ早く泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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