慰謝料・賠償金 [公開日]2018年8月27日[更新日]2021年5月24日

交通事故での治療の受け方と注意すべきポイント

交通事故被害に遭ったら、事故当初からしっかりと治療を受け、正当な金額の損害賠償金を加害者側に請求すべきです。
軽い事故で外傷がない場合には病院にもいかず、手続きも物損で済ませてしまう方もいますが、後になってから身体に痛みが出てくるケースもあるため注意が必要です。

今回は、交通事故の治療の受け方と、適正な金額の治療費・慰謝料などを受け取るために注意すべきポイントについて解説します。

1.交通事故の怪我をしっかり治療すべき理由

小さな事故や軽い怪我だった場合、日々の忙しさから治療を蔑ろにしてしまう方もいます。
しかし、適切に治療を受けることは非常に重要です。その理由2つをご説明します。

(1) 適切な慰謝料・賠償金を受け取るため

交通事故の被害者となった場合、治療費の実費や慰謝料(怪我をしたことに関する精神的損害への賠償)を相手方に請求できます。
実際には、加害者本人ではなく、相手方が加入している任意保険会社に請求することになるでしょう。

しかし、軽い事故や怪我の場合には、仕事が忙しいなどの理由から適切な治療が行われていないケースを散見します。

例えば、事故後すぐに多少の痛みを感じたものの大したことがないと考え、仕事の予定もあることから物損事故(物件事故)で済ませてしまうケースです。この場合、数週間経ってむち打ち症などが酷くなるケースもあります。

しかし、その頃になってから病院の治療を受けたとしても、事故と怪我の因果関係が否定されてしまい、適切な金額を受け取れなくなってしまうことがあるのです。

[参考記事]

追突事故であとから頭痛・むち打ち等の痛みが出た場合の対処法

また、事故後に人身事故として処理したものの、治療を怠ってしまうこともあります。

痛み等の症状を自覚していても「仕事が休めない」「面倒臭い」という理由から、定期的に病院に通っていなかった場合には「それほど深刻な症状ではない」と捉えられてしまい、慰謝料額にも影響が出てしまうことがあります。

[参考記事]

交通事故のリハビリは毎日通院?|慰謝料と通院日数・頻度の関係

このように、事故直後から一貫して適切な治療を受けないと、治療費・慰謝料額に影響が出る可能性があります。
事故当時に少しでも衝撃を感じたならば、重い、怠いのみで痛みがなくても病院へ行き、診察を受けることが重要です。

(2) 後遺症を残さないため

治療をしても残念ながら症状が治らず、完治しないケースは多いです。

適切な治療を継続的に受けないと、後遺症を招いてしまう原因にもなり得ます。

後遺症が残った場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。しかし、継続的な治療を受けていないと、後遺障害認定でそもそも認められないか、認められたとしても適切な「等級」を獲得することにも困難が伴います。

後遺障害慰謝料を受け取るには、後遺障害認定で等級を獲得することが必須であるため、万一症状が残存してしまった場合のためにも継続して治療を受けることが重要となるのです。

後遺障害認定の手続きは完全なる書類審査です。よって、適切な検査で症状の原因を突き止める必要があります。
これに加えて、継続した通院や一貫した症状を訴えることが重要です。

[参考記事]

後遺障害等級とは?認定機関による認定方法とその流れ

2.交通事故後の治療の受け方

次に、交通事故後に治療を受ける際のポイントをお伝えします。

(1) 事故当日に診察を受け、問題のある部位は全て伝える

まず、極力事故当日に病院にいきましょう。事故当日に病院に行かないで数日経ってから病院へ行くと、事故と症状との因果関係が否定される可能性が高くなってしまいます。一週間も空けてしまうと、その危険性が極めて高いでしょう。

また、単に診察を受けるだけでなく、問題のある部位については事故直後の通院時に全て伝えましょう。「実はここも痛かった」等という場合、後から別の部位を足してもらっても、因果関係が否定されてしまうことが多くあります。

交通事故による症状ではないと判断されてしまうと、慰謝料だけでなく治療費も受け取ることが難しくなります。

このように、事故直後の診察というものは非常に大事です。

「大した痛みや症状ではない」「一時的なもの」と考えず、必ず病院に行き、症状を的確に伝えていくことをおすすめします。

(2) 症状は一貫して伝える

後遺障害認定を受けるためには、事故直後から症状固定の時期まで連続して症状が続いていることが重要となります。そのため、できるだけ一貫した症状を医師に伝えることが大切です。

例えば、たまたま病院に行った日に調子が良かったとしても、安易に「治った」と言ったり、病院に行くのをやめたりするのはNGです。
後で痛みなどの症状が振り返すこともありますので、ご自身で良くなったと判断するのは危険といえます。

後遺障害認定の申請が必要なケースでも、「症状に一貫性がない」と非該当となってしまい、慰謝料などを受け取れなくなる可能性があるでしょう。

(3) 通院は自己判断で中断しない

事故後の病院への通院は大変です。一週間に2〜3回通院しなければいけないことも多く、抵抗を感じる方もいるでしょう。

しかし、一定の頻度で通院を続けることは重要です。きちんと通院していなかった場合には、保険会社に「もう完治したでしょう」「もう因果関係がない」と言われ、治療費を打ち切られてしまうことがあります。

[参考記事]

むち打ちで「治療打ち切り」を告げられた時の対処法

また、途中で治ったと思って、自己判断で通院を中断しないようにしてください。医師の指示がある間は通院を続けることが大切です。

ただし、必要もないのに病院での治療を受けると、今度は不正請求が疑われてしまいます。
必要かつ相当な範囲内で医師の指示通りに通院を続けることが重要です。

【過度な治療を行っても支払いはされない】
被害者として、「慰謝料や治療費はできるだけ多く請求したい」と思うのは当然です。しかし、必要のない治療を受けると、保険会社から支払いを拒否されてしまう可能性があるため注意すべきです。
必要以上に長く通院かったり、不必要な回数の治療をしている場合、また症状から考えて必要のない治療を受けたと判断された場合には不正請求が疑われます。症状が続く間通院を続けることは全く問題ありませんが、徐々に良くなり回復したのにそれを医師に伝えず、長期間治療費を受け取る場合は後でトラブルになります。必要かつ相当な範囲内で治療を続けてください。具体的な期間、治療内容は主治医と相談しましょう。

(4) 必ず整形外科に行き、診断書を作成する

事故後に最初に行く病院は「整形外科」です。
軽い痛みしかない場合や普段から通っている接骨院・整骨院などがある場合はそちらを選択しがちですが、最初は必ず「整形外科」ということを覚えておいてください。

なぜ接骨院・整骨院がNGなのかというと、診断書を出せる医師がいないためです。また、接骨院・整骨院では、診断のために必要な検査なども受けられません。

最初に接骨院・整骨院に行ってしまうと、医師による診療を受けていないとして、治療費請求を拒否されたり、後遺障害認定が難しくなったりすることがあります。

整形外科に受診後なら、医師の許可の下で接骨院・整骨院に通うこともできる可能性がありますので、初回は必ず整形外科に行くようにしましょう。

整形外科と整骨院の同時通院|適正な交通事故慰謝料のために

[参考記事]

交通事故で整形外科と整骨院の同時通院は可能?

3.治療では健康保険を使える

治療費を打ち切られてしまった場合や、事故の相手が任意保険に加入していない場合には、自己負担で治療を続けなければいけません。
この場合、かなりの負担になってしまいますので、健康保険を活用するようにしましょう。

実は、交通事故の怪我の治療でも健康保険は使えます。

もっとも、交通事故を原因とする怪我や症状の治療をする場合は、特別な手続きが必要です。健康保険組合に対し「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。
本来は加害者が支払うべき費用なので、将来的に保険組合が請求するための手続きが必要となるのです。

詳しく知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

交通事故と健康保険|使えないは嘘?デメリットはある?

4.交通事故の治療についてお悩みがある方は弁護士に相談を

交通事故で「十分な治療費・慰謝料が受け取れない」「治療費を打ち切られた」などのトラブルが発生することは多いです。
このような問題が発生した場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所では、これまでにたくさんの交通事故事案をより良い解決に導いてきました。治療以外にも、慰謝料や後遺障害認定に関するご相談も随時受け付けています。

わからないこと・不安なことがあれば、ぜひ当法律事務所の無料相談をご利用ください。

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