むち打ちの治し方・通院頻度を解説
交通事故の中でも、追突事故で発症しやすいのが「むち打ち」です。
むち打ちは、その傷病がレントゲンやCT、MRIでも映らないことが多く、重度ならば半年程度完治しないことがある怪我です。
今回は、そんなむち打ちの治療方法や治療期間などについて解説します。
1.整形外科での一般的なむち打ちの治療方法
まず、「むち打ちになったかも」と思ったら、整形外科を受診してください。
むち打ちには、様々な症状があります。むち打ちの症状については次のコラムを参考にしていただき、早急に整形外科を受診するようにしましょう。
[参考記事]
追突事故でむち打ち!対応のポイントと慰謝料相場を解説
ここでは、むち打ちの治療方法について解説します。
(1) 冷湿布での痛みの緩和・炎症の抑制
むち打ちの急性期における治療は、冷湿布での痛みの緩和と炎症の抑制です。
また、損傷部位が固くなって動かしにくくなっているため、無理に動かさないようにネックカラーと呼ばれる一種のコルセットで、患部を固定することもあります。
患部の固定と同時に、痛み止めを服用し、症状を抑えます。
(2) 電気治療、牽引といった理学療法
理学療法とは、病気や怪我で低下した身体の機能の回復・維持を目的とした運動、温熱、電気、水、高専などを用いた治療法です。いわゆるリハビリもその一つです。
いずれも、炎症が治まった後に行われます。
整形外科のむち打ちの治療では、電気治療が一般的に行われています。
電気治療には、マッサージ(硬くなった筋肉を解す)、温熱(血液の循環を促す)、牽引(硬くなった筋肉のストレッチ)といった効果がありますが、効かないといった声があることも確かです。しかし、電気治療は、受けて直ぐに効果がでるものではありません。
治療を継続しても、効果に疑問があれば、正直に主治医に訴えてみてください。
(3) トリガーポイント注射
トリガーポイント注射とは、痛みを軽減するために、凝りや痛みが強い部位に局所麻酔を注入することです。
痛みによる副交感神経の興奮を抑え、血流の改善を促し、痛みを増強する物質を改善された血流で洗い流して痛みを抑えます。
(4) ブロック注射
ブロック注射は、トリガーポイント注射とは異なり、神経や神経周辺へ注射をします。
痛みを抑え、血流を改善することで、神経など損傷している箇所の治癒力を高めます。
(5) 整骨院や鍼灸院での治療
人によっては、整骨院や鍼灸院での治療が有効なこともあります。
整骨院ではマッサージや温熱療法、鍼灸院では、患部に鍼や灸をして治療することになります。
整形外科とこれらの大きな違いは、整形外科が様々なデータを基に局所的に治療するのに対して、整骨院や鍼灸院は、体全体の不調を内側から整えることにあります。
整骨院や鍼灸院に通う際には、整形外科にも継続して通院し、主治医の同意を得たうえで、保険会社に連絡しておくことが極めて重要になります。
交通事故で治療費が支払われるのは、「必要かつ相当な範囲」です。整形外科の主治医が整骨院や鍼灸院の治療がむち打ちの治療に必要だと認めてれくれれば、治療費の支払いを受けられるでしょう。そうでない場合には、支払われないリスクが生じますのでご注意ください。
[参考記事]
交通事故で整形外科と整骨院の同時通院は可能?
2.むち打ちの一般的な治療期間
では、交通事故でむち打ちになってしまったら、どれくらいの期間病院に通わなければならないのでしょうか?
(1) むち打ちの平均的な治療期間
むち打ちで必要な平均的治療期間は、約3ヶ月といっていいでしょう。
少し古い資料になりますが、東京労災病院整形外科の「当院における頚椎捻挫例の検討」によれば、「1987年1月~1993年2月までに当科を受診し治療を終了した患者のなかで頸椎捻挫,外傷性頸部症候群,鞭うち損傷などと診断され2回以上受診して症状の変化を知り得た287例を対象」とした平均治療期間は、被追突(106人)で85.8日、被追突以外(56人)で78.9日という報告があります。
ただし、これは、平均の治療期間であり、むち打ちの治療期間は人によって大きく異なるため、3ヶ月以内で治癒することも3ヶ月以上経過してから治癒することも多々あります。
(2) 全治と治療期間の関係
むち打ちで、診断書に「頸椎捻挫 全治2週間」と記載されたとしても、2週間の治療期間で完治するとは限りません。
診断書に記載されている「全治」はあくまで治療期間の目安です。
「全治2週間」との診断で、2週間で完治しなくても問題はありません。
それよりは、治療を継続し、一刻も早くむち打ちを治すことに専念することが重要です。
3.むち打ちは治療期間だけでなく通院頻度も大切
むち打ちの治療では、治療期間だけでなく、通院の頻度も重要です。
それには、以下2つの理由があります。
(1) 保険会社からの治療費打ち切りリスク
まず、通院頻度が低いと、保険会社から治療の必要性を疑われてしまいます。
結果として、保険会社から治療費打ち切りの打診を受ける可能性が上がってしまいます。逆に多すぎても、過剰な診療=「必要かつ相当な範囲」でない治療として、打切りを誘発する可能性もあります。
なお、保険会社から治療費打ち切りを打診されたときの対処法については、次のコラムを是非お読みください。
[参考記事]
むち打ちで「治療打ち切り」を告げられた時の対処法
(2) 入通院慰謝料が減額されるリスクを避ける
交通事故で怪我をした場合には、実費で支払われる治療費とは別に、治療期間に応じた入通院慰謝料の請求が可能になります。
弁護士基準による入通院慰謝料の計算は、どれくらいの期間入院・通院したかを基準に算定します。
入通院慰謝料の詳しい計算方法については以下のコラムに譲りますが、むち打ちは、前述した通り、レントゲンやCT、MRIといった他覚所見がないことが多く、その場合、交通事故の弁護士基準を定めた通称「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)によれば、「通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある」としています。
赤い本には残念ながら「長期」についての明確な基準は示されていませんが、少なとも、「3日に1回」以上通院しなければ、実際の通院日数より少ない賠償額となってしまう可能性があるわけです。
[参考記事]
交通事故通院6ヶ月以上の慰謝料|7ヶ月・8ヶ月・9ヶ月の事例
(3) 適切な通院頻度
では、むち打ちの適切な通院頻度とはどれくらいなのでしょうか?
適切な入通院慰謝料を獲得するためにも、通院は、週2~3回・月10回程度するべきです。
むち打ちの完治と適正な慰謝料の獲得を目指して、適切な通院頻度を守りましょう。
4.まとめ
交通事故でむち打ちとなってしまった被害者の方にとって、症状がなかなか改善しないことは最大のお悩みだと思います。特に、治療が長引いている場合、治療を投げ出してしまいたくなることもあるかもしれません。
しかし、むち打ちの治癒のうえでも損害賠償のうえでも、治療を途中で投げ出してしまうのは、得策とは言えません。
泉総合法律事務所では、交通事故でむち打ちになってしまった被害者からのご相談も多数解決してきた経験・実績がございます。
もし、むち打ちの治療や示談・賠償などお悩みであれば、是非一度、ご相談ください。