交通事故裁判 [公開日]2018年8月29日[更新日]2024年1月19日

無免許運転の同乗者の責任

無免許運転の同乗者になってしまった場合_原本

「無免許運転をしてはいけない」というのは周知の事実です。
しかし、実は無免許運転の同乗者にも重い責任が課せられる場合があります。

自分で無免許運転をすることはなくても、以下のような事例でヒヤリとする方はいるかもしれません。

【こんな場合は大丈夫?】

  • 知人に運転を頼んで乗せてもらった所、後日その知人が無免許運転で捕まった
    (よくよく思い返せば無免許だということは事前に調べがつきそうだった)
  • 相手が無免許と知っていたが、強引に誘われて断り切れず同乗した

今回は、無免許運転の同乗者の責任と処罰規定について解説していきます。

1.無免許運転:同乗者の責任

実際に犯罪を行った者ではなくとも、それを手助けした者は罪に問われます。
これをほう助犯(刑法62条)といいます。

無免許運転を手助けすれば、同乗者でもほう助犯として罰せられるのです。

(1) 刑事責任

無免許運転は道路交通法(以下「道交法」)違反の犯罪です。無免許運転の運転者は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(道交法64条1項、第117条の2の2第2号)。

無免許運転の同乗者は、①運転者が無免許であることを知りながら、②運転者に自己を運送することを要求し、又は依頼して、③無免許運転者が運転する自動車又は原動機付自転車に同乗した場合、道交法上の無免許運転ほう助罪として処罰されます(道交法64条3項)。

通常であれば、ほう助犯の刑罰は実際に犯罪を行った者の半分になります。
つまり、無免許運転のほう助犯の場合には、1年6ヶ月以下(3年の半分)の懲役又は25万円(50万円の半分)以下の罰金という計算です。

ところが、無免許運転ほう助罪は2年以下の懲役または30万円以下の罰金(道交法117条の3の2第1号)に処せられる可能性があります。
このように、無免許運転ほう助罪は、一般の刑法におけるほう助犯より重い刑罰を科せられるのです。

(2) 行政責任

基本的にはありませんが、その行為が「重大違反唆し(そそのかし。他人に重大な違反行為をさせる、そそのかす、違反行為を助ける行為)等」と判断されれば、無免許運転と同等の処分がなされる可能性があります。

無免許運転の運転者の自動車免許制度における行政責任は、違反点数25点(一発免許取消となる点数)、免許を取得できない欠格期間2年です。

2.無免許運転ほう助罪になるケース

以下の3つの要件のすべてを満たす場合に限り、無免許運転ほう助罪として処罰の対象になります。

  1. 運転者の無免許を知っていた
  2. 運転者に自己を運送するよう要求又は依頼した
  3. 自動車に同乗した

たとえば、飲酒により自分は自動車を運転できないため、その知人が免許を持っていないことを知りながら(要件1)、運転して自分を家まで送るよう頼み(要件2)、実際に同乗して(要件3)家まで運転させたようなケースには、上記の要件をすべて満たすため、無免許運転ほう助罪として重く処罰されます。

3.無免許運転ほう助罪にならないケース

一方、以下のようなケースでは要件を満たさないため、無免許運転ほう助罪にはなりません。

(1) 運転者の無免許を知らなかった

そもそも運転者の無免許の事実を知らなければ、無免許運転ほう助罪にはなりません。

ここでポイントなのは、「よくよく考えれば無免許であると分かるようなケース」「調べれば無免許だとすぐ分かるケース」などでも同じということです。
つまり、同乗者について、運転者が無免許であると知らなかったことにつき落ち度がある場合でも、知らなかった以上は無免許運転ほう助罪にはなりません

無免許運転ほう助罪には、不注意による犯罪(過失犯)を処罰する規定はないからです。

(2) 運転者に自己を運送するよう要求又は依頼していなかった

運転者が無免許であると知っていた場合でも、運転者の方から同乗するよう要求してきて断れずに同乗してしまったケースでは、無免許運転ほう助罪にはなりません。

また、友達や家族などの他人を車で送って欲しいと頼む場合も「自己を運送するよう要求又は依頼」したわけではないので無免許運転ほう助罪にはなりません。
ただし、このケースでは無免許運転を促しているのですから、刑法上のほう助犯としては処罰される可能性があります。

(3) 自動車に同乗しなかった場合

たとえば、無免許運転になることを知りながら家まで車で送ってくれるよう頼んだものの拒否され結局同乗しなかった場合には、無免許運転ほう助罪にはなりません。

この場合には未遂罪にもなりません。未遂罪は、法律で特に未遂を罰することを定めなければ、犯罪として処罰することはできません。
道交法違反の罪について未遂を罰する規定はないため、無免許運転ほう助罪の未遂罪は存在しないのです。

【そんな規定知らなかった、は通じるか?】
無免許運転ほう助罪は、2013年12月1日から施行された改正道交法において新設された犯罪です。今回はじめて無免許運転ほう助罪という名前の犯罪を知っという方もいるかもしれません。しかし、このような犯罪の存在を知らなかったから処罰されるのはおかしいと主張することはできません。
原則として、「罪を犯す意思がない行為」は罰せられません(刑法38条1項)。しかし、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない」(刑法38条3項)とされています。無免許運転ほう助罪の規定を知らない場合でも、そこに書かれた犯罪に当たる行為をしている認識さえあれば処罰されるのです。

4.まとめ

運転者の無免許を知りながら、自己を運送するよう要求・依頼して同乗することは無免許運転ほう助罪になり、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。

現在では、無免許運転に対する制裁は非常に厳しくなっており、たとえ同乗者でも無免許運転を助長させる行為をした以上、非常に厳しく処罰されます。決してそのようなことがないようにしましょう。

ご依頼をお悩みの方も、一度ご相談ください。
初回のご相談は無料です。
まずはお気軽にお問い合わせください。
0120-260-105
【通話無料】電話でのご相談はこちら
平日 9:3021:00 / 土日祝 9:3018:30
お問い合わせは全国から受け付けております。