後遺障害 [公開日]2018年4月26日[更新日]2021年9月9日

後遺障害2級の慰謝料相場と逸失利益の算定について

交通事故により怪我をした場合には、当然、症状が改善する見込みのある限り治療を続けるでしょう。
そして、医師の判断として症状の改善する見込みがなくなった状態(症状固定)になれば、そこで治療は終了します。

さて、治療を終了した時点においてなお残存する症状(後遺症)については、各症状の内容・程度に応じて、「後遺障害」として等級認定される可能性があります。

交通事故により怪我をしただけでなく後遺障害まで残ってしまったときには、怪我に関する損害賠償(入通院慰謝料・治療費など)に加え、後遺障害が残ったことについての損害賠償(後遺障害慰謝料・逸失利益)を請求することができます。

今回は、交通事故により後遺障害2級を認定された場合の賠償金の算定について解説します。

1.後遺障害2級となるケース

後遺障害2級が認定されるケースは、「(脳・神経・精神・臓器などに障害を残し)随時介護を要するもの」と「その他の障害」に区別されます。
後遺障害の中でも特に重い症状と言えるでしょう。

具体的には、以下のようなケースで後遺障害2級が認められ得ます。

(1) 随時介護を要する障害

  • 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
  • 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

「随時介護」とは、自律呼吸は可能ですが、日常生活の一部の動作(入浴や排せつ・食事・着替えなど)で介護・看視が必要な状態や、手足の痺れ、判断力の低下や情緒不安定などが理由で看視・声掛けが必要な状態を言います。

例えば、外傷性くも膜下出血による高次脳機能障害、歩行障害、痴呆症状などが挙げられます。

(2) その他の障害

  • 1眼が失明し、他眼の視力が02以下になったもの
  • 両眼の視力が02以下になったもの
  • 両上肢を手関節以上で失ったもの
  • 両下肢を足関節以上で失ったもの

「視力」とは、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正視力です。
また、「上肢を手関節以上」は「肘から手首までの間」、「下肢を足関節以上」は「膝から足首までの間」を指します。

2.後遺障害2級の慰謝料相場

交通事故により後遺障害が残存した場合には、まず、「後遺障害慰謝料」を請求することができます。

入通院慰謝料(傷害慰謝料)は、交通事故により怪我を負ったこと自体の精神的苦痛を慰謝するための賠償金です。
これに対して後遺障害慰謝料は、交通事故により後遺障害の残ったことの精神的苦痛を慰謝するための賠償金であり、両者は異なる内容の賠償金なのです。故に、これらは別々に受け取ることができます。

後遺障害慰謝料は、原則として、認定された後遺障害の等級に応じてその金額の相場が決まっています。

また、入通院慰謝料同様、後遺障害慰謝料の算定基準には、①弁護士基準(裁判基準)、②任意保険会社基準、③自賠責保険基準の3種類あり、その金額は、基本的に、弁護士基準>任意保険基準(非公開)>自賠責保険基準となります。

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後遺障害2級の慰謝料相場は、①裁判所基準=2370万円、③自賠責保険基準=998万円(要介護の場合1203万円)となるでしょう。

3.後遺障害2級の逸失利益算定

交通事故により後遺障害が残った場合、その後遺障害は被害者の将来の就労に悪影響を与えることになります。
その影響についても、金銭的に評価した上で加害者に賠償してもらうことになります。これを後遺障害による「逸失利益」といいます。

逸失利益は、一般的に、「①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数」により算定されます。

基礎収入は、原則として被害者の事故前の収入を基準とします。
しかし、学生や専業主婦などは、男女別の平均賃金を参考にして基礎収入を認定します。

労働能力喪失率とは、認定された後遺障害により喪失する労働能力の程度です。
これは原則として、後遺障害の等級に応じて〇〇%という形で目安が決められており、2級の場合は100%です。
(※ただし、後遺障害の具体的内容、被害者の職種に応じてより細かく検討し、目安から増減させることがあります。)

労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数とは、認定された後遺障害の労働能力に影響を及ぼす期間に応じた中間利息を控除するための係数のことです。

すなわち、逸失利益は、刻一刻と発生する将来の稼得に関する損害を事前に一括して賠償してもらうものであり、その都度の賠償を受ける場合と比較して受領した金銭の運用利益分過剰に賠償してもらっているものと考えられるため、その利息分を控除しなければならないのです。

労働能力喪失期間は、原則として、症状固定日の年齢から労働可能年齢の67歳までの期間であるとされます。
ただし、むちうち症状による後遺障害の場合など、後遺障害の内容により、労働能力喪失期間は制限されることがあります。

【実際の後遺障害2級の逸失利益の算定】
年収600万円の50歳のサラリーマンの被害者について後遺障害2級の認定された場合の逸失利益

600万円×100%(後遺障害2級の労働能力喪失率)×11.2741(労働能力喪失期間=67歳-50歳=17年に対応するライプニッツ係数)=約6,764万円

このように後遺障害による逸失利益は非常に高額になり、時には、1億円を超える金額になることもあります。

4.後遺障害2級に関するその他の損害賠償

交通事故により後遺障害2級が認定された場合の損害賠償は、上記の後遺障害慰謝料と逸失利益のほか、以下のようなものがあります。

まずは、傷害による損害の賠償です。具体的には、治療費、入院雑費、入通院の付添費、通院交通費、休業補償、入通院慰謝料(傷害慰謝料)です。

また、後遺障害を原因として生じる具体的損害、たとえば、将来の介護のために必要となる費用、後遺障害のために自宅をバリアフリーにする必要性のある場合のリフォーム代などもあります。

ただし、このような介護費用やリフォーム代の請求できるのは、後遺障害により支出を余儀なくされたものに限定されます。その賠償を請求する場合には適宜医師の意見書や診断書を必要とすることがあるでしょう。

5.まとめ

交通事故により後遺障害2級の認定を受けた場合には、傷害による賠償とは別に2級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できます。

後遺障害2級を認定された場合の賠償金額は、一般的に高額になります。
相手方の任意保険会社と示談交渉をしている場合、任意保険会社は少しでも支払う賠償金を少なくするために、過失割合や慰謝料などの賠償金額について被害者に不利になる内容の示談案を提示してくる可能性が高いです。

保険会社の提示する示談案の内容は、必ずしも全て正しいとは言い切れません。内容に納得がいかない・金額が低すぎると感じたら、安易に示談書面にサインすることは控えましょう。

後遺障害認定された場合の損害賠償について保険会社と示談交渉する際には、交通事故に精通している泉総合法律事務所の弁護士にどうぞご相談ください。

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