後遺障害 [公開日]2018年6月18日[更新日]2024年6月4日

交通事故の外貌醜状|後遺障害はモデルじゃなくても認められますか?

外貌醜状|交通事故の後遺障害はモデルじゃなくても認められますか?

交通事故の怪我(被害)の一つに「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」があります。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、交通事故による怪我の治療後、顔や頭などに目立つ「傷跡」が残ってしまった場合、「外貌醜状」として後遺障害認定される可能性があります。

外貌醜状の場合、モデルでもない限り直接的に仕事に支障を来たすことはありません。
よって、相手方は「外貌醜状であっても収入は減っていない」などと主張してくることが往々にあり、後遺障害認定を受けても損害賠償請求時に争いが発生することがあります。

今回は、交通事故の後遺障害の1つである「外貌醜状」と、それに伴って発生する問題点について、弁護士が解説いたします。

1.外貌醜状とは?

(1) 外貌醜状はどのような後遺障害か

外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)とは、頭や顔、首など、日常的に人の目に触れる部分に、人目につく程度の傷痕が残ってしまうことです。
頭や顔、首などの露出部分のことを「外貌」、人目につく程度の各種の傷跡を「醜状」と言うので、合わせて「外貌醜状」と言います。

醜状の種類として「瘢痕」「線状痕」「組織陥没(欠損)」の3種類があります。
「瘢痕」とはやけど痕などの傷跡、「線状痕」とは線状の傷跡、「組織陥没(欠損)」とは組織の一部が欠けたり陥没したりしてしまうことです。

なお、頭や顔、首に傷跡が残ると外貌醜状ですが、腕や脚など隠せる場所に傷跡が残った場合には「醜状痕」として別の後遺障害が認定されます。
さらに、頭や顔、首に傷跡が残った場合であっても、髪の毛などで隠れるので日常的に露出しない場合には、外貌醜状とは認められません。

外貌醜状になると、傷跡が残っているだけなので、運動や動作に直接の支障はおよびません。
しかし、傷跡が目立つ箇所にあれば社会生活に影響が及ぶため、後遺障害と認められます。

そして、外貌醜状の場合、基本的に醜状痕の大きさが大きいほど高い等級の後遺障害が認定されます。

(2) 外貌醜状となるケースの具体例

交通事故の外貌醜状で後遺障害認定されるのは、具体的には以下のような場合です。

  • 交通事故で、顔に大きなやけどの跡が残った
  • 交通事故で、顔や首に長い線状の傷跡が残った
  • 交通事故で頭が一部陥没して、外からでも確認できる状態になった
  • 交通事故で、鼻の軟骨が欠損した
  • 交通事故で、耳の軟骨が欠損した
  • 交通事故で、まぶたが欠損して閉じられなくなった

交通事故に遭って上記のような状況になったら、外貌醜状で後遺障害認定を受けることを検討すべきです。

2.外貌醜状の後遺障害の等級

(1) 後遺障害7級、9級、12級の可能性

外貌醜状となった場合、後遺障害等級としては何級が認定されるのでしょうか?
認定可能性のある等級は、以下の3種類です。

  • 7級12号:外貌に著しい醜状を残すもの
  • 9級1号:外貌に相当程度の醜状を残すもの
  • 12級14号:外貌に醜状を残すもの

このように、外貌醜状の後遺障害の等級は、醜状の「程度」によって異なります
「著しい醜状」なら最も高く、次が「相当程度の醜状」となり、単なる「醜状」の場合には一番等級が低くなります。

[参考記事]

後遺障害等級とは?認定機関による認定方法とその流れ

(2) 男女間の格差はある?

かつては、外貌醜状の後遺障害に男女間の格差がありました。男女で別の基準が用いられていたのです。
男性の場合、著しい醜状の場合は12級、単なる醜状のケースは14級となっており、女性の場合と最大5等級もの差がありました。また、当時は「相当程度の醜状」(9級)はありませんでした。

ところがその後、裁判所が、このような区別は平等権に反して違法であると判断したため、男女間の格差は撤廃され、9級が新たに追加されて現在の形になりました。

つまり、現在は交通事故に遭っても男女別の後遺障害等級が認定されることはありません。

(3) 外貌醜状と他の後遺障害の関係

外貌醜状の場合、他の後遺障害との関係が問題になることがあります。

交通事故で顔面や頭部を損傷すると、まぶたや鼻、耳などに複数欠損を生じることがあり、このような場合はそれぞれの部位の欠損による後遺障害認定基準に該当する可能性がありますが、同時に外貌醜状の後遺障害にも該当する可能性があります。

まぶたや鼻、耳などの欠損障害と外貌醜状の両方に該当する場合には、どちらか高い方の等級が認定され、併合認定は行われません

たとえば、耳の軟骨の2分の1以上がなくなってしまった場合、耳介の欠損障害による後遺障害等級は12級4号「1耳の耳殻の大部分を欠損したもの」となります。
これに対し、外貌醜状の基準にあてはめると7級12号となるので、高い方の外貌醜状が優先されて、後遺障害等級は7級12号となります。

また、鼻の軟骨部の大部分がなくなってしまった場合、9級5号の「鼻を欠損」に該当します。
これに対し、外貌醜状だと7級12号に該当するため、やはり外貌醜状が優先されて、7級12号が認定されます。

鼻の軟骨部の一部がなくなったケースで、鼻の欠損障害としては等級認定されない場合でも、外貌醜状の「単なる醜状」になれば12級14号が認定されます。

このように、特に顔面部の欠損障害が発生した場合、複数の等級を同時に検討して「どちらの等級が認定されうるのか」ということも意識しながら後遺障害等級認定の請求を行う必要があります。

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3.外貌醜状の賠償金

では、外貌醜状で後遺障害認定を受けると、どのくらいの賠償金が支払われるのでしょうか?

(1) 後遺障害慰謝料

後遺障害が認定されると、被害者は大きな精神的苦痛を受けることになるので、慰謝料の請求が認められます。
後遺障害認定によって認められる慰謝料のことを、後遺障害慰謝料と言います。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級によって異なります。
外貌醜状の場合の金額の相場は、以下の通りです(弁護士基準の場合)。

7級12号 1000万円
9級16号 690万円
12級14号 290万円
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(2) 後遺障害逸失利益

一般的に、後遺障害が残ると身体が不自由になるので、それまでと同じように働くことが難しくなります。
すると、生涯にわたる収入が低下すると考えられるので、その収入低下分を損害として請求することが可能です。この失われた収入による損害賠償金のことを、後遺障害逸失利益と言います。

後遺障害逸失利益は、各後遺障害の等級によって決まる「労働能力喪失率」によって計算します。

外貌醜状のそれぞれの等級における労働能力喪失率は、以下の通りです。

7級12号 56%
9級16号 35%
12級14号 14%

7級の場合、事故前の年収にもよりますが、3000~4000万円以上の後遺障害逸失利益を請求できることもあります。
9級でも数千万円の後遺障害逸失利益の請求ができることもありますし、12級の場合でも1000万円程度の後遺障害逸失利益が発生する可能性があります。

後遺障害逸失利益は、交通事故の賠償金の中でも高額になりやすい損害の項目ですから、被害者救済のために非常に重要です。損をしないように請求するようにしましょう。

[参考記事]

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4.外貌醜状の損害賠償請求で揉める理由

外貌醜状の後遺障害認定を受ける際には、特有の問題点がいくつかあり、これが理由で後遺障害認定が難しくなったり、相手方保険会社と揉めたりすることがあります。

(1) 認定時には調査事務所で面接が行われる

外貌醜状による後遺障害認定を受けたいときには、まず後遺障害認定請求の際に提出する後遺障害診断書の「醜状障害」の欄に、傷あとの大きさや状態などを図で示す必要があります。

そして、外貌醜状で後遺障害認定請求をすると、自賠責保険の調査事務所において直接面談が行われます。

ここでは、後遺障害診断書や事前に提出していた画像などの資料を参照しながら、傷あとの大きさや長さを測定したり、形や色の状態を確認したりします。
そして傷跡が何級に該当するのか、「人目につく程度」と言えるかなどを判断され、等級が決まります。

このとき、1mmでも足りないと後遺障害認定されない可能性も出てきますから、正確に醜状痕の状態を計測してもらい、適切に等級認定してもらうことが重要です。

なお、事前認定の場合には、通常面接ではなく傷あとの状況を示す具体的な資料によって審査が行われるのが通例です。

(2) 労働能力喪失を否定される可能性

外貌醜状の逸失利益と労働能力喪失率については前述しましたが、問題となるのは実際に後遺障害が認定された後です。

通常、後遺障害が残ったら後遺障害逸失利益を請求することができますが、それは後遺障害によって労働能力が低下しているからです。
ところが、外貌醜状の場合、単に醜状が残っているだけで身体能力には影響しないので「労働能力は低下していないのではないか」と相手方保険会社に言われてしまうのです。

多くの場合、モデルなど外貌が仕事内容に直結するケースでもなければ、保険会社は外貌醜状の後遺障害の逸失利益を否認してきます。

それでは、後遺障害逸失利益は主張しても一切認められないのでしょうか?

実際にはそのようなことはなく、外貌醜状でも労働能力喪失が認められて逸失利益が肯定されている裁判例がいくつもあります。

たとえば、営業職や介護職など、日常的に他人と接触する仕事であれば、外貌の傷跡が円満な人間関係の形成に悪影響を与えたり、コミュニケーションを阻害したりすることは十分に考えられます。また、傷あとにより転職や昇進などに影響が及ぶ可能性もあります。

現時点では特段仕事に支障を来していないように見えても、外貌醜状による逸失利益は認められる余地があるので、諦めず弁護士などを介して相手方を説得しましょう。

5.外貌醜状で逸失利益と慰謝料を認める裁判例

(1)外貌醜状による逸失利益を認めた裁判例

では、外貌醜状による逸失利益を認めた具体的な裁判例をご紹介します。

前額部の線状痕で労働能力喪失を認めた事例

被害者の女性が、交通事故によって前額部に9.5センチメートルの長さの線状痕が残り、7級が認定された事案です(なお、これは旧基準によるものであり、現在であれば線状痕では9級しか認定されません)。

裁判所は、以下のような事情を考慮して、被害女性に対して労働能力喪失率20%を認め、逸失利益を認定する判決を下しました(神戸地裁平成25年11月28日)。

  • 被害者の傷あとの位置や長さ
  • 被害者が始終人目を気にしており、労働効率に悪影響がおよんでいること
  • 前額部につっぱり感があり、傷痕部分にしびれ感が残っていること
  • 首の凝りやめまい、耳鳴り、頭痛などの症状があること
  • 現実に減収はないが、それは、被害者による努力を積み重ねによるものであること
  • 今後の転職の際にも不利益が予想されること

6歳の女児に49年分の労働能力喪失を認めた事例

症状固定時6歳の女児が顔面醜状痕によって7級の後遺障害が認定された事案です。

裁判所は、就労可能年数を18歳から67歳までの49年間として25%の労働能力喪失を認めました。

7級の一般的な労働能力喪失率は56%であり、そこからは大幅な減額となっていますが、逸失利益が否定されなかった点は注目すべきです(神戸地裁平成3年6月26日)。

接客業のアルバイト女性の労働能力喪失を認めた事例

アルバイトの女性が顔面醜状で後遺障害7級となった事例です。

この事案では、被害者が接客業に就いていたことなどを考慮して、女性の賃金センサス平均賃金を基礎収入として、30%の労働能力喪失を認めました(大阪地裁平成17年9月21日)。

就職で不合格となった短大生の労働能力喪失を認めた事例

短大生の女性が顔面の線状痕で12級となった事例です。
被害者は、短大卒業後、就職活動を行いましたが、航空会社のグランドホステスの面接で不合格となりました。

その後他社に就職しましたが、裁判所は、当初不合格になったのは顔面の線状痕が影響を与えた可能性があること、年齢や職種、線状痕の影響によって就労が制限されていることなどを考慮して、19年間にかぎり、14%の労働能力喪失を認める判決を下しました(大阪地裁平成11年10月15日)。

集金業務がある新聞配達員の労働能力喪失を認めた事例

新聞配達員の兼業主婦が脳挫傷となり、頭痛で12級12号、前額の組織陥没の醜状痕によって7級12号、併合6級が認定された事案です。

この事例では、醜状による影響で、被害者が集金に際して顧客と顔を合わせる際に差し障りがあること、再就職が制限されることなどを考慮して、20%の労働能力喪失を認めました(名古屋地裁平成18年10月4日)。

 

以上のように、裁判例には外貌醜状のケースであっても労働能力喪失を認めて逸失利益を認定しているものがたくさんあります。

保険会社から逸失利益を否定されても、あきらめる必要はないので、まずは弁護士までご相談ください。

(2) 慰謝料が増額された裁判例

外貌醜状の場合、逸失利益が認められる例もたくさんあるのですが、否定されてしまうケースがあるのも事実です。

ただ、外貌醜状で逸失利益が否定されても、その分慰謝料が増額される例が多いです。
外貌醜状になった場合は特に精神的なショックが大きいですし、逸失利益が否定された分、慰謝料によって調整しようという考え方があるためです。

外貌醜状で慰謝料が増額された裁判例には、以下のようなものがあります。

歯科衛生士の慰謝料が増額した事例

被害者が交通事故により、右頬部に人目につく5センチメートル以上の長さの線状痕、眉間部分に3センチメートル以上の長さの線状痕が残り、後遺障害7級が認定された事案です。

被害女性は歯科衛生士でしたが、裁判所は、「被害者が女性として周囲の視線を気にする場面も考えられること、対人関係やさまざまな活動に消極的になる可能性があること、間接的に労働に影響をおよぼす可能性があること」などを考慮して、1200万円の後遺障害慰謝料を認めました。

電話オペレーターの慰謝料が増額した事例

交通事故によって、被害者の左前額部から左頭部にかけて線状痕が残りましたが、5センチメートルに足りなかったため後遺障害12級が認定された事案です。被害者は、電話オペレーターでした。

裁判所は、被害者の現在の職業に傷あとが影響しているとは認められないこと、被害者が今後転職する予定もないこと、髪型を工夫して傷あとを隠せることなどから逸失利益を否定しました。

ただし、被害者が周囲の視線を気にして消極的になったり対人関係を築きにくくなったりすること、間接的に労働や日常生活に影響を及ぼす可能性があることなどを考慮して慰謝料を増額し、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の合計として450万円を認めました(金沢地裁平成28年9月15日)。

6.まとめ|外貌醜状の後遺障害認定は弁護士へ

以上のように、交通事故で顔や頭、首なども目立つ場所に醜状が残った場合、まずはきちんと後遺障害認定を受けることが重要です。
その上で、適切な金額の後遺障害逸失利益と慰謝料を請求すべきです。

外貌醜状になった交通事故被害者の方が不利益を受けないためには、専門的な知識とノウハウを持った弁護士に交渉を依頼する必要があります。
これから後遺障害認定を受けようと考えていらっしゃる方は、是非とも一度、泉総合法律事務所までご相談ください。

泉総合法律事務所には外貌醜状による後遺障害認定の実績が豊富にありますので、安心してお任せいただければと思います。

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