後遺障害等級13級とは|慰謝料相場と逸失利益を解説
交通事故の被害に遭った後、怪我が完治せずに後遺症が残った場合に認定される可能性がある「後遺障害」は、1〜14の等級が定められています。
この等級のどれに該当するかにより、受け取れる後遺障害慰謝料や逸失利益(健康だったら得られたはずの収入の賠償)の金額に違いが出てきます。
後遺障害13級は比較的軽い後遺症が残ったケースで認定される等級ですが、この記事では、具体的にどういった障害を負ったときに認定されるのか、慰謝料や逸失利益の賠償額の算定基準はどうなっているかなどを解説していきます。
1.後遺障害13級の症状
後遺障害等級13級は、具体的には次の症例が残った場合に認定される可能性があります。
- 1眼の視力が0.6以下になったもの
- 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
- 1眼に半盲症、視野狭窄、視野変状を残すもの
- 両眼の瞼の一部に欠損を残し又は睫毛はげを残すもの
- 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
- 1手の小指の用を廃したもの
- 1手の親指の指骨の一部を失ったもの
- 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
- 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
- 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
なお、後遺障害認定の流れや申請方法については、以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
後遺障害等級とは?認定機関による認定方法とその流れ
後遺障害13級に認定されると、その等級に応じた金額の後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができます。
これらについて、以下で詳しく解説します。
2.後遺障害13級の慰謝料額
後遺障害が残ってしまったことに対する精神的損害への賠償が後遺障害慰謝料で、これは入通院慰謝料(傷害慰謝料)とは別に受け取ることができます。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級に応じたものとなります。
「慰謝料」は、精神的損害を賠償するものであるため、治療費などのように実費に基づいて払われるものではありません。平等性を確保するため、算定のための基準が定められています。
交通事故の場合、慰謝料算定の基準には異なる3つの種類があります。それぞれ「自賠責基準」「任意保険会社基準」「弁護士基準(裁判基準)」と呼ばれ、もっとも高額で被害者に有利なのは、弁護士基準(裁判基準)です。
(1) 自賠責基準
13級の後遺障害慰謝料額:57万円
交通事故の被害者に最低限の補償を行うための制度が自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)です。
「最低、ここまでは補償してくれる」という制度であるため、その金額もかなり低いものとなっているのが実状です。
(2) 任意保険会社基準
13級の後遺障害慰謝料額:70万円程度
任意保険会社基準は、加害者が加入している任意保険会社が社内で用いている内部基準です。
昔は全保険会社に共通の基準がありましたが、保険が自由化されてから、保険会社ごとに社内の基準が用いられるようになりました。
13級の場合は、自賠責基準よりも僅かに高額な70万円程度の提示がなされることが多いようです。
(3) 弁護士の基準(裁判所の基準)
13級の後遺障害慰謝料額:180万円
被害者と加害者(加害者側の保険会社)の間で損害賠償の金額に争いが生じた場合、これを最終的に決定するのは裁判所です。そこで用いられるのが弁護士基準(裁判基準)であり、交通事故の賠償額を決めるために最適な基準と言えます。
弁護士団体が、過去の例や裁判所における運用をまとめて基準として発表しています。
その中で、広く用いられているものが「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部発行)、通称「赤い本」で、本記事での弁護士基準金額も「赤い本」による数字です。
13級の自賠責基準57万円であるのに対し、弁護士基準では180万円と、約3倍もの開きがあります。
弁護士基準で請求することがいかに大切なことがお分かりいただけると思いますが、弁護士基準による算定を相手方の任意保険会社に認めてもらうには、被害者が弁護士に交渉の代理を依頼することが必要です。
3.後遺障害13級の逸失利益の計算方法
後遺障害が残った場合、それによって働く能力(労働能力)が低下し、健康だったら得られたはずの収入が失われたと評価できます。この失われた収入(利益)が逸失利益です。
逸失利益は、次の算式で計算します。
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
(1) 基礎収入
基礎収入は、手取りではなく、税金や社会保険など各種控除をする前の総所得額です。実際に得ていた収入が基準になります。
なお、主婦や子ども(学生)の場合は、賃金センサス(厚生労働省による賃金構造基本統計調査)に基づいた平均賃金を使って計算します。
(2) 労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺障害によって失われた働く能力です。各等級によって数値が定められ、後遺障害等級13級の労働能力喪失率は9%です。
例えば、年収1000万円の人の労働能力喪失率が9%ならば、事故後一年間の逸失利益は単純計算で「1000万円×(100分の9)=90万円」となります。
(3) 就労可能年数とライプニッツ係数
就労可能年数とは、将来的に働くことができたであろう期間です。事案にもよりますが、通常は67歳までを基準とします。
例えば、50歳で受傷したときは、喪失期間は17年です。
逸失利益を一括で受け取る場合、利息に相当する金額の利益が生じうることになるため、その利息分(中間利息)は逸失利益から控除します。
現在の裁判実務では、ライプニッツ方式という中間利息を控除する計算方式を使用しています。同方式では、計算に「ライプニッツ係数」を使います。
就労可能年数に対応するライプニッツ係数は、「自動車損害賠償責任保険の保険金及び自動車損害賠償責任共済金等の支払基準」(平成13年金融庁国土交通省告示第1号)の別表Ⅱ-1の表で調べることができます。
「国土交通省 就労可能年数とライプニッツ係数表」からダウンロードできます。
この表では、被害者の年齢、就労可能年数(67歳までの年数)と、それに対応した係数が一覧表となっています。
事故に遭った時の年齢の横に、67歳までの就労可能年数が記載されています。その右側の「係数」が、就労可能年数に対応したライプニッツ係数です。
例えば、年収500万円、年齢28歳、喪失率9%の場合、同別表Ⅱ-1の対応するライプニッツ係数は令和2年4月1日より前の事故であれば17.017、以後に発生したものなら22.8082であり、令和2年4月1日より前の事故であると仮定すると、逸失利益は以下のように計算されます。
逸失利益=500万円×9%×17.017=765万7650円
(4) 逸失利益は個別の事情を考慮して算定する
逸失利益の計算は、実際の裁判実務では、「基礎収入」「労働能力喪失率」「就労可能年数」の各要素について、個別の具体的事実に応じた数字が使用されます。
たとえば、「収入」は、事故前3か月内に得ていた現実の収入を基礎とすることが原則です。
しかし、より高収入の職場を求めて転職の活動中に事故に遭い、事故がなければそこに転職していた可能性が高いと認められる場合などには、転職後の年収を基準としても不合理ではなく、実際、転職後に得られたであろう金額が採用されることがあります。
労働能力喪失率も、認定を受けた後遺障害等級の喪失率が絶対というわけではありません。
弁護士基準では、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前の稼働状況などを総合的に判断して評価することとされています。
例えば、13級には「五歯以上に対し、歯科補綴を加えたもの」という症状がありますが、歯科補綴、すなわち歯にクラウンや入れ歯などを入れた治療が行われたものは、後遺障害等級こそ13級とされているものの、働く力を低下させるものではないとして、労働能力の喪失が認められないことが一般的です。
このような場合に逸失利益を求めるためには、収入の減少が実際に生じているのかどうか、後遺障害が存在することによって収入をもたらすべき労働能力にどのような影響を生ぜしめているかなどを、具体的に主張・立証する必要があるとされています(※「別冊判例タイムズ16号・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂4版」東京地裁民事交通訴訟研究会編15頁)。
損害額を決める際には個別の具体的な事情が考慮されるのであり、弁護士基準(裁判基準)は金額算定上の出発点に過ぎません。
適正な金額の賠償金を得るためにも、交通事故被害により後遺症が残ってしまった方は、お早めに弁護士へ相談されることをお勧めします。
4.まとめ
後遺障害慰謝料額には、自賠責基準・任意保険会社基準と弁護士基準との間に大きな差があります。
後遺障害13級に認定された方の多くは、弁護士へ依頼をすることで、賠償金(示談金)の金額が増額される可能性がかなり高いと言えます。
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