後遺障害認定にデメリットはある?
交通事故被害に遭い、怪我が完治しない場合は、後遺障害等級認定手続きを検討すべきです。
しかし、被害者によっては「後遺障害認定を受けるべきか迷っている」という方もいらっしゃるでしょう。実際に、「認定されたら何か不便になることがあるのでは?」と不安になってしまう方も多いそうです。
そこで今回は、後遺障害認定を受けることにデメリットがあるのかどうかについてご説明します。
1.後遺障害認定とは?
交通事故の怪我が完治せず後遺症が残ってしまった場合、「後遺障害認定」により「等級」を獲得すると、傷害部分の慰謝料や休業損害とは別に、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できるようになります。
後遺障害慰謝料とは、交通事故で後遺障害が残ってしまったという精神的苦痛に対する賠償金です。
また、逸失利益とは、当該交通事故の怪我がなければ将来得られたであろう収入を保障するものです。
これらは、後遺障害等級認定を獲得しないと請求できません。
交通事故で後遺障害が残ってしまった場合は、通常の入通院慰謝料や治療費に加え、この後遺障害慰謝料と逸失利益が加わるため、賠償額は大きくなります。
すべての賠償額のうち後遺障害に対する賠償金が半分を超えるということも少なくありません。等級によっては数百万円以上も賠償額が上がります。
後遺症が残ってしまったならば、後遺障害等級認定を受け、正当な賠償額を請求すべきなのです。
[参考記事]
後遺障害等級とは?認定機関による認定方法とその流れ
2.後遺障害認定にデメリットはあるの?
「後遺障害認定」と聞くと、「障害」という言葉からか、内容を重く受け止め、将来的に何か自分に不利益になってしまうのではないか?と不安になってしまう方がいらっしゃいます。
結論から言って、後遺障害認定されたからといって、デメリットはありません。
後遺障害認定は、交通事故が原因で怪我を負い、完治しなかった方を救済するため制度であり、等級獲得者に対し不利益をもたらすような制度ではないのです。制度を利用して等級を獲得すること自体を心配する必要はありません。
治療を受けても完治しない場合は、その点に対する賠償も受けるべきですので、医師から症状固定と診断された時点で後遺症が残っているなら、後遺障害等級認定を受けることを第一に考えるべきです。
後遺障害等級認定を受け、上記の賠償金を獲得すると、以下のようなメリットがあります。
・治療費やリハビリに当てられるお金も増える
・将来受け取るべきだった収入が、障害等級・内容に応じた一定程度の割合で保障されるため、生活が安定する
その後も通院を続けたい場合、等級獲得による賠償金を、治療費やリハビリに当てることができます。そして、症状でこれまで通り働くことができなくなった場合でも、その分の収入が賠償金として保障してもらえるのです。
参考:交通事故の慰謝料はいくらもらえる?
3.後遺障害認定のデメリットに関するよくある疑問
後遺障害認定を受けることにデメリットはないといっても、やはり「認定されたらどうなるの?」という不安が残る方もいらっしゃるでしょう。
そこで、最後に、後遺障害認定とデメリットに関するよくある噂や疑問にお応えします。
(1) 完治すると信じていても認定を受けたほうが良い?
「いつか必ず回復する」と信じて治療を続けるのは良いことです。将来にも希望が持てますし、その希望を捨てる必要はありません。
しかし、治療を長期にわたって続けていると、必ず医師から「症状固定です」と告げられる時がやってきます。
症状固定とは、医学的に見てこれ以上回復しない状態を指します。症状固定と診断されてしまうと、保険会社からの治療費がストップするため、治療を続ける場合は自費か健康保険を利用することになり、これは被害者にとって大きな経済的負担です。
そのため、症状固定後も治療を続けたい場合は、寧ろ後遺障害等級認定を受けることをおすすめします。
後遺障害として等級認定を受ければ、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益が受け取れるため、これを治療やリハビリ費用に回すことができるからです。
希望を捨てないためにも、後遺障害等級認定を獲得すべきなのです。
(2) 回復したら後遺障害認定を取り消してもらうことはできる?
まず、後遺障害認定についての取消しは、制度上想定されていません。そのため、将来的に回復したとしても認定を取り消してもらうことはできません。
後遺障害等級認定で等級を獲得することは、被害者にとってデメリットではなくメリットです。そのため、取消しを考える必要性もないでしょう。
仮に、医学的に見て回復する可能性がある状態の場合は、そもそも等級を獲得することはできず、「非該当」という結果になります。
後遺障害等級認定は申請すれば簡単に獲得できる種類のものではなく、厳格な書類審査があります。医学的に見て回復する可能性がある場合は、そもそも獲得できないと考えるべきでしょう。
[参考記事]
後遺障害認定が非該当になる理由とは?正しい認定を受けるために
(3) 生命保険に入る際、加入条件等で不利になることはある?
生命保険に加入する場合は、持病などの告知義務があります。そのため、症状によっては、保険加入を拒絶される、免責条件が付け加えられる、などの問題が出てくる可能性はあるでしょう。
しかし、後遺障害者等級認定は、障害者手帳に関わる等級とは異なります。あくまでも交通事故による後遺障害に対する保障のための制度です。
そのため、後遺障害の等級が直接保険加入に影響することはないと考えられます。
保険加入を考えている方は、加入検討をしている保険会社に直接問い合わせてみることをおすすめします。
以上から、症状があることで不利になる可能性は否定できませんが、後遺障害等級を獲得してもそれ自体が不利に働くことはありません。
(4) 就職、結婚で不利になることはある?
等級を獲得したことにより、就職や結婚で不利になることはありません。
等級を受けたことよりも、実際の症状などがどれほど仕事に影響するのかといった事情の方が影響する可能性が高いでしょう。
14級など軽度の後遺障害であれば、当該業務をこなすことに関して問題ないと判断される可能性もあります。
もっとも、これはどのような症状を持っている人がどのような職種に就職するかによって影響を受けるため、一概には分かりません。
就職の際は、業務に支障が出る可能性がある場合は、先に申告することをおすすめします。就職後に業務に支障が出てしまい、それが理由で退職しなければいけなくなってしまう可能性はあるからです。
以上から、不利になることはありませんが、症状などから将来的な収入などに不安がある場合は、きちんと等級を獲得すべきと言えます。
(5) 後遺障害等級獲得に関する情報は周囲にバレない?
後遺障害等級認定の審査や手続き過程において、手続をしたことやその結果等が知人などにバレることはありません。
また、弁護士や医師には守秘義務がありますので、ご自身が周囲に話さない限り、情報が漏れることはないでしょう。
4.後遺障害等級認定にデメリットはない!申請は弁護士に相談を
交通事故で後遺症が残ったら、まずは後遺障害等級認定を受けることを考えましょう。後遺障害として等級が認定されれば、被害者の将来の生活のために必要となる賠償金を獲得できるからです。
後遺障害等級認定は、獲得する等級によって賠償額が数十万〜数百万円異なることもあります。
確実な等級獲得を目指す場合は、弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所は、交通事故被害者の方の治療に関するアドバイスから、後遺障害等級の認定まで、被害者の方の利益を守ために誠心誠意サポートいたします。
弁護士と一緒に、正当な等級獲得を目指しましょう。