駐車場事故の過失割合と対応策。閉鎖空間でのバック駐車に要注意!
道路上の交通事故は十分に気をつけているという方でも、気が緩んでしまいがちなのが駐車場内です。
ショッピングセンター内の駐車場や屋外駐車場、立体駐車場など、様々な場所で事故が起きています。
実は多くの危険が潜んでいる駐車場スペース。事故が起きた時の対応策や予防方法はご存知でしょうか?また、過失割合はどうなるのでしょうか。
今回は、駐車場事故での事故態様から対応策・予防策までを解説します。
1.駐車場事故の特異性
(1) 駐車場事故が多い理由
実は、駐車場内での事故は、交通事故全体の3割を占めると言われています。
これには、以下のような駐車場の特性が関係しています。
- 狭い空間で車同士がぶつかりやすい
- 対向車と通行人が入り混じる状態
- 車両の動きが不規則になるため、事故を予測しにくくなる
駐車場スペースは、基本的には公道よりも狭い空間です。そのため「車同士がぶつかりやすい」ということが考えられます。
公道のように整備された環境であれば良いのですが、駐車場内の通路が一方通行になっていない場合は、対向車と通行人が入り混じっている状態になるため、事故が起きやすくなるのです。
また、公道上とは異なり、車が一定方向に走行しているという状況ではなく、「車両の動きが不規則になるため、事故を予測しにくくなる」という特徴もあります。
他の運転者に対し「ここでは、止まってくれるだろう」という予測も当たらない場合が多いとも言えます。
(2) 駐車場内事故の取り扱い
では、駐車場内での事故の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
駐車場内での事故は、私有地内での事故です。そのため、「法律の適用も曖昧なんじゃないの?」と思われるかもしれません。
実際、道路交通法の適用は、公道路上における事故に適用され、私有地は適用外であるのが原則です。
しかし、道路交通法では、人・車が自由に通行できる場所であれば、「一般交通の用に供するその他の場所」として、「道路」に該当することになり、適用の対象となることになります。
駐車場は、不特定多数の車両が行き交いする場所であることが前提ですので、判例上も道路交通法の適用を認めた事例が数多くあります。
むしろ駐車場内は車がバックして来たり、切り返しなどの方向転換が頻繁に行われていますので、前方注意義務や徐行義務が高度に要求される場合もあります。
つまり、駐車場内での事故でも、道路交通法上課される前方注意義務や徐行義務などは、同様に課されると理解しておいたほうがよいことになります。
また、駐車場内で事故があった場合は、公道上の交通事故と同じような手順を踏んで取り扱われます。したがって、駐車場内のひき逃げがあった場合は、公道上のひき逃げと同様に処罰の対象になるのです。
このように、私有地であっても道路交通法は適用されるケースがあります。警察に報告することや、通常の手続を踏むという点も、理解しておくべきでしょう。
[参考記事]
道路交通法の目的とは|運転者が注意すべき規定や実際の運用
2.駐車場での事故事例の過失割合
次に、駐車場事故の過失割合について見ていきましょう。
なお、過失割合とは、当該交通事故における責任の割合を法律上算定したものを指します。
責任の割合とは、主に事故に対する落ち度や不注意の程度のことです。
[参考記事]
交通事故の過失割合|もめる・ごねる相手に納得いかない場合の対処法
(1) 駐車場事故の過失割合の原則
駐車場内の車両事故の場合、大抵は両者に落ち度があるので当事者双方の保険担当者が過失割合の交渉を行うことになります。
交渉において、基礎とされるのは過去の判例です。
判例に照らし合わせて、実際の事故状況を見ながら過失割合の修正を行っていくことになります。
では、実際よくある駐車場事故の事例における具体的な過失割合を見ていきましょう。
(2) 停車中の車に衝突したケース
まず、止まっている車に衝突した場合、基本的には衝突した側の車両に100%の過失が認められます。「相手車両が勝手に衝突してきた」状況ですので、0:10となるのは当然と言えるでしょう。
ただし、駐車禁止スペースに止めていた場合などは話が別です。この場合は、過失割合が修正されるので、事故態様によっても変わりますが、1:9〜2:8となる可能性があります。
止まっている車にぶつかってしまうと、動いている車が圧倒的に不利だということです。
(3) 入庫時にぶつかったケース
ハンドルを切りながらバックで駐車し、入庫しようとしている車両に、後方から通行してきた車がぶつかった場合を想定します。
この場合、駐車しようとしている車両の過失割合は2、直進通行してきた車両の過失割合が8となります。バックする側の不注意よりも、前方進行する側の不注意の方が圧倒的に高くなってしまいます。
もちろん、個別事情により過失割合は変化しますので、目安であると理解しておいてください。
(4) 出庫しようとしている車とぶつかったケース
このケースの場合、原則として、出庫する自動車の過失が7、通路を前方走行してくる車の過失が3という過失割合になります。
駐車する場合(入庫)とは異なり、出庫する車両は前方方向に出ていくことになります。死角も少なくなるため、一般道路と同様に、直進自動車が優先される原則が適用されることになるからです。
ご紹介したのはほんの一部で、これ以外にもたくさんの事故事例があるので、過失割合も個別ケースにより異なります。
また、駐車場は、閉鎖的なことから目撃者も少なくなってしまいます。そのため、適切な過失割合を算出するためには慎重な実況見分が必要不可欠です。
ちなみに駐車場内での歩行者と車の事故の場合、歩行者にも原則として1割の過失があるとされています。駐車場内は多くの車の行き来が予想されるので、歩行者もある程度の注意をすべきであるというのがその理由です。
3.駐車場事故に遭わないために気をつけるべきこと
駐車場内では事故が多発しています。
事故に遭わないためにも、駐車場内での車両走行・駐車で気をつけるべきことを学んでおきましょう。
(1) 徐行運転とヘッドライト点灯
駐車場は、車両だけでなく歩行者も行き交う場所です。早い速度で走行していると、事故を起こしやすくなります。
焦っている時は自然とスピードも上がってしまいがちですので、10キロ以下の徐行運転を心がけるようにしましょう。
また、駐車場内は暗い場所も多いはずです。ヘッドライト点灯で視界をクリアにしておくことも大切です。
バック時は特に注意しましょう。「バックしてきた車にぶつけられた」と言うケースは非常に多いです。
バック時は後ろばかりに目が行きがちですが、前方・側面も短い間隔で確認するように心がけてください。
(2) ドアを勢いよく開けない
また、外に出る時は勢いよくドアを開けないことです。
隣の車にぶつけてしまうだけでなく、歩行者にぶつかってしまうこともありえます。
(3) 駐車場内のルールを守る
大きな駐車場内では一方通行や一時停止の表示があるはずです。
公道上じゃないからといって、無視をすると事故が起きがちです。万が一事故に遭った場合は過失割合にも影響するので、ルールはしっかり守るようにしてください。
(4) クラクションの活用
危ないと思ったときは、クラクションで相手に自分の存在を知らせましょう。
通行車両やバック車両が事故を起こしそうなときは、クラクションで知らせるのが適切です。
また、急いでいても、駐車中の車を無理に追い越そうとしないで待ちましょう。すれ違いざまの事故が多くなっています。
このように、駐車場内の事故は自分から予防策を打つことで一定程度、回避することができます。
駐車場内でぶつけられて、そのまま逃げられてしまうケースもあります。これを「当て逃げ」と言います。
当て逃げ事故では、加害者の情報を少しでもキャッチすることが大切です。そのため、可能ならば相手の車両を確認する、負傷者がいたら救急車を呼ぶ、警察に連絡などをしてください
加害者車両が走り去ろうとしている場合は、ナンバーを控えたり、スマホで撮影をしたりしておくと、加害者特定を行うのに便利です。
4.交通事故の対応は泉総合法律事務所へ
交通事故は、駐車場以外でもいつ・どんな場所で起こるか分かりません。
現在、交通事故の交渉でお悩みの方は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
交通事故の問題解決の経験が豊富な専門家が親身になって対応いたします。
初回相談は無料となっておりますので、まずは一度ご連絡いただければと思います。