交通事故の過失割合9対1の示談金!1割の過失で揉めそうな場合
交通事故被害者になったら、病院での治療や慰謝料請求手続きに追われ、日常生活が大変になります。
しかし、治療が終わってやっと示談交渉に臨めると思ったら、被害者であるこちらにも1割の過失があると保険会社から主張されるケースは少なくありません。
今回は、交通事故の過失割合が「9対1」と言われた被害者の方のために、過失割合の基礎知識についてご説明します。
過失割合の決め方、過失割合が9対1になる事例、過失割合9対1の場合の注意点、正しい過失割合のために被害者ができることについて、わかりやすくご説明します。
1.過失割合とは
交通事故の示談交渉で相手方や相手方の任意保険会社と揉めやすい内容の1つに「過失割合」があります。
過失割合に納得できず、弁護士に依頼される方も多いといえます。
では、過失割合とはどのようなものなのでしょうか?
(1) 過失割合の仕組み
過失割合とは、交通事故における損害に対する責任の割合のことを指します。
慰謝料や治療費、車の修理費という交通事故における全損害に対し、当事者それぞれがどれくらいの責任を負うかにつき、数字で割合を決めていくのが過失割合の仕組みです。
実際上は、6対4、8対2というように表示されます。
一般的に交通事故では、被害者・加害者と二分法的に表されることが多いですが、実際上は加害者と被害者が明確に分けられる10対0の交通事故ばかりとはいえません。
逆に、被害者にも過失が認定されることの方が圧倒的に多いといえるかもしれません。特に車対車で、双方動いている場合は、追突かセンターラインオーバーなどでなければ、10対0となることは極めてまれです。
明らかに相手が悪く見えるような事故であったとしても、被害者に小さな前方不注視などの違反があればそれが指摘され、過失割合が9対1となってしまうこともあるのです。
交通事故の示談では、全損害が1000万円で、このうち1割でも被害者の過失が認定できるとすると、1割の100万円が示談金から差し引かれてしまうことになります。
このように、過失割合は最終的な損害賠償額を決定するために必要不可欠な項目といえます。
(2) 過失割合はどのようにして決まるのか
先にご説明した通り、過失割合は損害賠償額全体に影響を与えます。1割でも過失が認定されたら、被害者が受け取れる損害賠償額が減ってしまうのです。
そのため、どのようにして過失割合を決めるのは重要といえます。
過失割合は、基本的には過去の裁判例を参照して決めていくことになります。交通事故のこれまでの判例を集めた本があり、それを参照して今回の事故に似たケースを探し、過失割合を算定します。
これに個別的な事情による修正を加え、最終的な割合を決定していくのです。
また、判例に当てはめていく際に、元となる当該事故事実については警察が作成した実況見分調書などを参考にしていきます。
実況見分長所には、事故が起きた状況などが書かれているため、これを元に判例に当てはめていくことができるのです。
[参考記事]
交通事故の供述調書・実況見分書とは?裁判の証拠にもなる!
(3) 過失割合9:1の事例
完全なる被害者だと思っていたのに、過失が1割でもあるといわれるとあまり気分の良いものではありません。
過失割合が9対1である事例にはどのようなものがあるのでしょうか?
具体的には、以下の通りです。
- 信号機のない交差点で一方が優先道路の場合に、優先道路を直進した被害者に優先道路ではない道路を直進した加害者が衝突したケース
- 追越禁止であるにもかかわらず、後ろから追い越そうとした直進車が前方の車と衝突したケース
- 車道と歩道の区別がない道路で、道路の中央を通行していた歩行者(道路の幅員が8m未満)に自動車が衝突したケース
- 道路の工事中で歩道が通行できない場合に、車道側の端を通行していた歩行者に自動車が衝突したケース
2.過失割合の計算方法と計算例
次に、過失割合の実際の計算方法と計算例を見ていきましょう。
(1) 具体的な計算方法
交通事故では、両方に過失がある場合、各自の損害を双方が合意した過失割合に従い負担することになります。例えば以下の例を見てみましょう。
全損害が1000万円であり、このうちAの損害が300万円、Bの損害が700万円だったとします。過失割合はAが9割、Bが1割です。
この場合、AがBに支払うべき損害賠償額は、630万円(700万円×90%)であり、BがAに支払うべき損害賠償額は、30万円(300万円×10%)となるのです。
このように、それぞれが責任分を支払うという方法で計算します。
(2) 過失割合9対1における被害者の注意点
過失割合が9対1の場合で、被害者が負担する金額が数万円という場合、交渉で折れても良いと思うケースもあるでしょう。
しかし、過失割合が低い被害者が多くの損害を負担しなければいけないケースもあるのです。
例えば、被害者が古い車に乗車していて、相手が高級車に乗車していた場合です。一般に、高級車は修理費が高額になりますので、この場合過失割合が小さくても修理費が高ければ被害者の負担が大きくなるのです。
車の修理費が全体で30万円の場合、被害者の過失割合が1割であれば3万円ですが、高級車で200万円の修理費がかかる場合は20万円もの負担になってしまうということです。
またこれ以外にも、損害賠償を保険でカバーすると、翌年の保険料が上がり、その分被害者の負担が大きくなってしまうこともあるのです。
このように、最終的に過失割合9対1を認めても良いという結論を出す前に、実際の負担がいくらになるのかをしっかりと確認することが大切です。
3.正しい過失割合のために被害者ができること
最後に、正しい過失割合を算出するために被害者ができることをお伝えします。
(1) 実況見分調書に記載される内容に気を付ける
事故後警察に連絡すれば、一般的には10分程度で交通事故現場に来てもらえます。
このとき、事故の状況を残すために実況見分が行われますが、ここで注意が必要です。
というのも、事故直後のショックで被害者が適切な内容を伝えられないこともあるからです。
気をつけるべきこととしては、以下が挙げられます。
- 曖昧なことは言わない
- 客観的な証拠を抑えるために撮影しておく
- 救急搬送された場合には、後日実況見分調書をしっかり確認する
保険会社は警察の実況見分調書をもとに、過失割合の提案を行います。そのため、少しでもこちらに落ち度があるようなことを匂わせると、それが実況見分長所に残ってしまい、過失が認定される可能性があります。
曖昧な内容は言わないことが大切です。
また、ご自身でも証拠を残すようにしましょう。
警察の実況見分長所が事実と異なることもあります。後で自分の主張を裏付けるため、怪我がない場合や精神的に余裕がある場合は事故現場をスマホで撮影したり、事故状況をメモしたりしておきましょう。
そして、怪我が酷くすぐに病院に搬送された場合、多くは加害者のみで実況見分を行いますが、これにより被害者に不利な状況になってしまうこともあります。
作成された実況見分調書に不安がある場合は、押印をせず、再度被害者立ち会いのもとでの実況見分を要求することも可能です。
(2) 保険会社の言い分に対し交渉すること
保険会社との交渉で9対1の過失割合が主張された場合でも、その過失割合をそのまま鵜呑みする必要はありません。納得できない場合は交渉することが必要です。
過失を0にする方法としては、過失割合10対0の事例を過去の判例から探してご自身の事例に当てはまることを主張するか、相手の過失が増える要素やこちらの過失が減る要素を主張していく必要があります。
これについては専門的な知識が必要であるため、ご自身で強気に交渉して、保険会社が折れないようであればできるだけ早い段階で弁護士に相談してください。
[参考記事]
交通事故の過失割合|もめる・ごねる相手に納得いかない場合の対処法
4.過失割合でお悩みの方は、弁護士へ相談を
保険会社に提示された過失割合に納得できない場合は、諦めないで交渉を続けることが大切です。
しかし、交渉のプロを相手に被害者だけで立ち向かうのには限界があります。
示談交渉がうまくいかないと思ったら、交通事故に強い弁護士に相談するのが一番です。
泉総合法律事務所は、交通事故に関する案件を数多く取り扱い、経験豊富で知識やノウハウも熟知した弁護士が交通事故の示談交渉にのぞみます。
弁護士が代理人となると、弁護士基準での慰謝料計算で慰謝料を増額できる可能性もありますので、どうぞお気軽ご相談ください。