人身事故 [公開日]2018年5月2日[更新日]2022年5月19日

追突事故で痛くなくても病院に行くべき理由

特に追突事故に遭い身体に衝撃を感じた時には、たとえ痛みなどの症状が無くても、すぐに病院に行き、医師の診察を受けるべきです。

事故直後に初診を受けなかったばかりに、怪我が治り難くなることや適正な損害賠償を受けられないことがあるからです。

今回は、交通事故の直後には痛くない場合でも、すぐに病院に行き医師の診断を受けるべき理由とメリットについて解説します。

1.追突事故後、痛くなくてもすぐに病院に行くべき理由

「痛くないのに通院をしたら、保険会社や医師に嫌な顔をされるのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、以下のような理由から、交通事故(追突事故)で身体に衝撃を感じたら、事故当時は痛くなくても早めに病院で診察を受けるべきと言えます。

(1) 追突事故によるむち打ちが慢性化する可能性

追突事故により発症することが多いといわれる頸椎捻挫(いわゆる「むち打ち症」)・腰椎捻挫などは、事故直後には痛みがなく、顕著な自覚症状が現れないことがあります。

そのため、後から痛みなどの症状が現れても、それを事故による症状だとは考えず、病院に行かない方も多いです。

しかし、むち打ちは放置すると慢性化してしまうこともあります。通院しなかった結果、後遺障害が残ってしまうケースもあるでしょう。

よって、症状が現れたときにはすぐに治療を開始すべきですし、違和感が生じた段階で念のために通院することが重要です。

(2) 初診遅れで重篤な症状をもたらす可能性

交通事故により頭部に衝撃が加わった場合には、脳内出血や慢性硬膜下血腫が起きている可能性も0ではありません。
これは、脳内部において徐々に出血が広がり、あるとき歩行困難、麻痺、嘔吐などの重篤な症状が現れます。

こうした怪我は、頭部の精密検査でなければ発見することは難しいものです。事故当時に強い痛みは感じない場合でも、すぐに病院に行き診察してもらうべきなのです。

(3) 事故と怪我の因果関係が認められない

上記のような身体上のリスクの他にも、事故後すぐに病院に行かず初診が遅れることで、交通事故と怪我に因果関係が認められず、次のようなデメリットが発生することがあります。

警察に人身事故の届出を受理してもらえない可能性

事故により怪我をすれば、警察に人身事故の届出をすることになりますが、この際、医師の診断書を必要とします。

[参考記事]

交通事故の診断書の役割とは?

しかし、事故から日数が経過した時点での診断では、せっかく診断書を作成してもらっても、事故による怪我であるものと判断されず、最悪人身事故の届出を警察に受理してもらえない可能性があります。

保険会社に治療費を支払ってもらえない可能性

事故自体が軽いもので、事故からある程度の日数が経過してから初診を受けたようなケースでは、保険会社に「あのような事故で怪我をするはずがない」「事故による怪我の治療ではない」と判断され、治療費の支払いをしてもらえないことがあります。

痛くないのに通院していると仮病扱いされる可能性

むち打ちは、事故後数日、遅ければ1ヶ月程度後に痛みなどの症状が現れることがあります。

初診が事故から日が経ってしまっていることや他覚症状がないことから、加害者や加害者側の保険会社から、「痛みもないのに通院している」と仮病扱いされることがあります。

そんなケースに該当する方は、是非以下の関連記事をお読みください。

軽い追突事故でむち打ち症になったら「嘘」と言われた場合の対処法

[参考記事]

軽い追突事故でむち打ち症になったら「嘘」と言われた場合の対処法

後遺障害等級認定が受けられない可能性

事故による後遺症が残った場合には、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料、逸失利益といった損害についても請求が可能になります。

そして、後遺障害等級が認定されるためにも、事故との相当因果関係が必要となります。

事故から日にちが経過してからの受診では、そもそも事故による怪我が生じたことが証明できない=事故による怪我が存在しないと判断されてしまうことになり得ますので、後遺障害等級の認定においても非該当となる可能性があります。

 

このように、交通事故による損害の賠償は、事故との因果関係が認められる損害についてのみ請求することができるため、初診が遅れると正しい金額の賠償金を受け取れなくなってしまうおそれがあるのです。

交通事故と怪我との因果関係については、事故日から初診日まで1週間以上経過すると疑われてしまう傾向にありますから、最低でも、事故日から1週間以内には病院に行くようにしましょう。

2.示談後に痛みが現れたときの対処法

では、事故直後の通院を怠った結果、相手方の保険会社と示談した後に後遺症等が現れた場合はどう対処すれば良いのでしょうか。

交通事故における示談とは、事故により生じた被害者の損害賠償について、被害者と加害者(加害者側の保険会社)との間において、一定の賠償金額の支払を行い、さらに示談において決まった賠償金額以上の賠償金を請求しないこと(清算条項)を約束する合意です。

したがって被害者は、一旦示談が成立してしまえば、原則として、それ以後、加害者に対して示談後に生じた損害の賠償を求めることはできません

(1) 追加請求の可能性を留保して示談する

この対策として、保険会社と示談する際に、将来新たに事故による損害が発生する可能性のある場合には、その都度、別途協議して損害賠償の問題について解決していくことを示談の内容として盛り込むことがあります。

また、後遺障害が認定される可能性のある事故において、傷害部分の賠償につき先行して示談する場合には、後遺障害が認定された場合における後遺障害による損害の賠償について、別途協議する旨を示談書に記載します。

これにより、示談後、新たに発生した後遺障害について、その賠償について改めて保険会社と協議する道が残されることになるのです。

このような示談書の作成・確認については、後のトラブル防止のためにも、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。

交通事故で保険会社が用意した示談書に被害者が泣き寝入りしない方法

[参考記事]

交通事故の示談書|納得いかない、保険会社が送ってこない場合の対応

(2) 新たな損害賠償を認めた判例

一旦示談すれば、いかなる場合でも、示談後に生じた後遺障害についての賠償を請求できないとするのは、被害者にとってあまりに酷です。

過去の裁判では、被害者と加害者の双方が事故による全損害を把握できない状況において、一旦示談が成立した場合でも、その後に事故により生じた新たな損害が判明した場合には、例外的に被害者は加害者に対して、その新たな損害の賠償を求めることができるとした例があります(最高裁昭和43年3月15日判決)。

このように、示談当時、被害者と加害者の双方が予見することの困難であった後遺障害についての損害の賠償請求については、例外的に追加請求できる場合があります。
諦めて相手方保険会社の言いなりにならずに、まずは弁護士にご相談ください。

3.まとめ

交通事故により怪我を負った際、事故直後には、痛みなどの自覚症状が現れない場合があります。
しかし、自覚症状がなくても、事故後はすぐに病院を受診して医師の診断を受けるべきです。

頸椎捻挫(むち打ち)や腰椎捻挫の場合には事故後しばらくして症状が現れることは珍しくないですし、怪我の内容によっては将来的に重篤な障害を残すものもあるからです。

もし初診が遅れてしまえば、保険会社に事故と怪我の因果関係を否定され治療費の支払いを受けられなかったり、後遺障害の認定を受けられなくなったりする可能性があります。

きちんと損害の賠償をしてもらうためにも、事故直後に医師の診察を受けることは重要です。

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