人身事故 [公開日]2018年8月6日[更新日]2021年11月10日

交通事故の診断書の役割とは?

交通事故による怪我の損害賠償を請求する際には、「診断書」が重要になります。

交通事故では、怪我の程度、治療の内容・日数などに応じて損害賠償額が異なるため、損害賠償額を公平に算出するために、怪我の程度・状態を客観的に記録した「診断書」がカギとなるのです。

また、物損事故で処理をされると治療費や慰謝料が受け取れないため、当該事故が人身事故であったことを証明するためにも診断書が必要です。

今回は、交通事故の際に作成する診断書について解説していきます。

1.診断書とは?

診断書とは、医師が作成する書類です。症状についての所見や診断内容、治療内容などを証明するためのものであり、法律上医師にしか作成できません

したがって、診断書を作成する場合、まずは医師(専門医)の診断(診察)を受ける必要があります(整骨院にいる先生は柔道整復師であり、診断書を作成できません)。

(1) 診断書の記載内容・書き方

診断書には多くの種類があり、保険会社に提出する書式と警察に提出する書式とは異なります。

保険会社に提出する書式は、保険会社によって異なります。しかし、相手方の保険会社に直接治療費の支払いを任せている(一括対応の)場合には、保険会社用の診断書を目にすることはないでしょう。

一方で、警察に提出する診断書は、病院の書式をそのまま使用することが多く、以下の項目に傷病者名、診断した医師の署名・押印や病院名が加わることになります。

  • 受傷の日付
  • 傷病名
  • 治療に要する日数
  • 作成日 など

診断書の「治療に要する日数」について

警察に提出する診断書には、「治療に要する日数」が記載されますが、頸椎捻挫や打撲の場合「治癒に要する日数」は、「全治2週間」以内の記載が多いようです。

この記載は、あくまで治癒や症状固定までに要するであろう治療の見込み日数です。

「全治〇〇日」の記載にかかわらず治療の継続は可能であり、実際に支払われる損害賠償額は、実際の治療期間や治療日数を基に算出されます。したがって、日数が短いと心配する必要もありませんし、症状が残っているのであれば、診断書に記載された日以後も治療を継続すべきです。

(2) 診断書の追加提出・書き直し

診断書に、例えば「全治2週間」との記載があり、実際には治療にそれ以上の日数がかかってしまった場合には、診断書を再提出する必要はあるのでしょうか?

結論を言うと、警察に提出した診断書は、行政処分・刑事処分を目的として使用されるのであり、損害賠償の請求とは無関係なので、診断書の追加提出は必要ありません。

では、警察用以外の診断書を含め、診断書を書き直してもらうことはできるのでしょうか?

明らかな誤記であれば、当然書き直してもらうことは可能です。修正などにも応じてもらえることが多いですが、その場合は、修正が必要な理由を明確に伝えましょう。

修正の必要があるか判断が難しい、なかなか修正に応じてもらえないといったケースでお悩みであれば、弁護士に一度相談してみてください。
特に後遺障害診断書については、誤記や不足のままにしておくと後遺障害が認定されない可能性がありますので、入念にチェックしましょう。

(3) 診断書の作成期間と料金相場

診断書の作成にかかる期間は概して2週間程度です。
作成の料金は、警察用で2,000円程度、自賠責保険への請求用で4,500円程度、後遺障害診断書で5,000円程度となります。

費用負担が大きいと感じられるかもしれませんが、診断書作成に支払った金額については、ものによっては、後から文章料として加害者側に請求することができるでしょう。

2.診断書の提出先

交通事故では、複数の場面で診断書の提出が必要となることがあります。
「何枚必要なのか?」と迷うこともあるかと思いますので、必要な提出先を一通りご確認ください。

(1) 警察

警察への事故の届け出に伴い診断書を提出すると、人身事故である旨を記載した交通事故証明書を発行してもらうことができます。

これは、相手方に怪我に関する損害賠償(治療費や慰謝料など)を請求する際の提出書類となります。

しかし、実際の交通事故処理の場面では、事故直後に目立った自覚症状がないことを理由に、その場は物損事故として処理してしまうことも少なくありません。

物損事故として届け出た後に人身事故として切り替えるためには、診断書が必要です。

診断書に提出期限はありませんが、事故日からできるだけ早い時期に提出する必要があります。
事故から日が経ってから人身事故への切り替えを申し出ても、警察に受理してもらえないことがあるからです。

事故から数日経ってむち打ち症の自覚症状が現れたようなときには、速やかに医師の診察を受け、診断書を作成してもらいましょう。

[参考記事]

物損事故から人身事故への切り替え注意点!手続方法・期限など

(2) 「一括対応」ではない場合の保険会社

人身事故の損害賠償は、限度額まで自賠責保険から支払いが行われ、自賠責保険の限度額を超える部分は、任意保険から支払われることになります。

したがって、形式的には、2つの保険会社に損害賠償を請求する必要があり、診断書もそれだけ必要となるはずです。

しかし、実際に、2つの保険会社にそれぞれ損害賠償の支払いを求めることは、被害者にとって煩雑です。そこで、保険金の支払い請求の手続きを相手方の任意保険会社に一括して任せるのが一般的です(これを「一括対応」といいます)。

一括対応では、相手方の任意保険会社から送付される「同意書」に必要事項を記入・押印して返送すれば、医療機関からの診断書の受け渡しを含め、相手方の保険会社が治療費や保険金の支払いまで一括して行います。

対して、自賠責保険に直接保険金の支払いを請求する被害者請求の場合には、被害者自らが、自賠責保険に診断書を提出しなければなりません。

(3) 被害者加入の保険会社

被害者自身が加入している傷害保険に保険金を請求する場合、その保険会社に診断書を提出する必要があります。

(4) 会社(仕事を休む場合)

交通事故による怪我の治療のために仕事を休む場合には、勤務先にも診断書を提出する必要があります。

なお、交通事故の診断書は原則としてコピーは不可ですが、会社に提出するものはコピーでも認められるケースがあるようなので、確認してみると良いでしょう。

3.診断書の作成依頼をする際の注意点

(1) 提出目的に応じて作成してもらう

診断書は「ただ医師に作成してもらえば良い」というものではありません。
提出する目的に応じて、適切な内容が記載された診断書を作成してもらうことが何よりも大切です。

たとえば、仕事を休むために勤務先に診断書を提出する場合には、「治療のために仕事を休む必要がある」ことを、医学的理由を含めて記載してもらう必要があります。

また、通院にタクシーを利用する場合や、個室の病室に入院する場合にも、それぞれ「その必要がある」ことを診断書に記載してもらわなければなりません。

(2) 医師に症状をしっかりと説明する

医師は、あくまでも医療の専門家であって、損害賠償制度の専門家ではありません。

実際、医師が損害賠償請求用の診断書の作成に不慣れであるのは珍しいことではありません。場合によっては書いてくれない・作成に消極的であるというケースもあるでしょう。

医師に診断書の作成を依頼するときには、提出する理由を医師に説明し、自分の症状を正確に説明した上で、適正な損害賠償を受けられるよう記載してもらうことが大切です。

4.加害者から「診断書の取り下げ」を求められたら

加害者から「警察に診断書を出さないでほしい」、「警察に提出した診断書を取り下げてほしい」といったお願いをされることがあるかもしれません。

もちろん、診断書を警察に提出しないことはできます。いったん提出した診断書を取り下げることも、被害者の怪我がとても軽微で、捜査開始前といった一定の条件の下では可能です。

しかし、警察に診断書を提出しないということは、事故を物損事故扱いとすることになるため、治療費を自己負担しなければならなくなったり、賠償額が変わったり、後遺障害の認定に影響が出たりすることもあり得ます(物損事故の場合、怪我の治療費や慰謝料は支払われません)。

一番の問題は、万一裁判になった場合、過失割合の争点に関して、事故の状況を証明してくれる実況見分調書といった資料も作成されないことになります。

[参考記事]

交通事故の供述調書・実況見分書とは?裁判の証拠にもなる!

もし、診断書を出す・出さないで加害者ともめているなら、一度、弁護士に相談してみてください。

[参考記事]

加害者に「診断書を警察に提出しないで」と頼まれた!?

5.まとめ

交通事故において、診断書はとても大切であることがお分かりいただけたかと思います。

診断書の記載内容によって、受け取れる損害賠償の金額が大きく変わることもあります。
交通事故に精通した弁護士であれば、被害者の方が通院中の段階から関与することで、適切な損害賠償額を確保することができる可能性があります。

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