むち打ち [公開日]2018年10月18日[更新日]2022年12月16日

軽い追突事故でむち打ち症になったら「嘘」と言われた場合の対処法

軽い追突事故でむち打ち症になったら「嘘」と言われた場合の対処法

交通事故の相手方(加害者側)は、「事故の状況と被害状況は比例する」と考えがちです。
つまり、軽い追突事故でむち打ちになった場合には、「この程度の事故でむち打ちになるはずがない」「嘘の症状を言って多額の賠償金を取ろうとしているのではないか」と相手方の保険会社に疑われてしまうことがあるのです。

しかし、後方からの追突事故では、事故の規模が小さい場合でも「むち打ち」になってしまい、首が痛い、肩が凝るなどの症状が出る場合があります。
人間の身体は、予測不可能な状況で衝撃を受けると見た目以上のダメージを受けることがあるのです。

今回は、交通事故の被害に遭いむち打ちとなったときに、相手方から「嘘」「仮病」と疑われないために知っておきたいポイントや、疑いをかけられたときの対処法について解説します。

1.むち打ちが嘘・仮病だと言われる理由

交通事故によるむち打ちは、次のような特徴があるため、その損害賠償について相手方とトラブルになりやすい(支払いを拒否されやすい)傾向があります。

(1) むち打ちには「他覚症状」がないことが多い

ほとんどのむち打ちには、「他覚症状」がありません。
「他覚症状」とは、わかりやすく言えば、「誰の目にも明らかな症状」のことです。

裂傷(すり傷)や骨折などは、目視やレントゲンなどによって、他人も症状を直接確認することができます。
しかし、むち打ちの症状である「首が痛い」「肩が凝る」「めまい、頭痛がする」などは、怪我をした本人にしかわからない自覚症状に過ぎません。

したがって、「症状がある」と主張しても「嘘をついている、ぼったくるつもりだろう」「通院費用を稼ぐために不要な治療をしているかもしれない」と捉えられやすいのです。

[参考記事]

医学的他覚所見がないむち打ち症の後遺障害認定

(2) 事故状況と症状が比例しない場合がある

実際の交通事故では、「衝撃が僅かでしかない交通事故の場合」にもむち打ちとなる場合があります。

人間の頸部はとてもデリケートで、不測の衝撃にはとても弱いです。
特に、「後方からの追突事故」は、被害車両の運転手や同乗者は事故発生を全く予期できないため、身体も油断していた結果むち打ちになりやすいといえます。

例えば、停止中の車両に後方から追突されたときには、相手車両が徐行程度の低速であっても、むち打ちとなる可能性があります。

しかし、交通事故の当事者ではない相手方保険会社は、「事故による衝撃の大きさ」をベースに、被害状況(ケガの状況)を判断しがちです。

したがって、相手方保険会社が、「追突車両の速度や車両のへこみ具合、修理代金額」などの事情から、「むち打ちとなるわけがない」と主張してくる可能性があります。むち打ちであることが前提となる場合でも、治療期間を短期に制限すべしであるなどの主張をしてきます。

軽い事故のむち打ちは、特に示談がこじれやすい傾向があるのです。

(3) 交通事故以外の要因を疑われる

めまいや頭痛、しびれといったむち打ちの症状は、交通事故以外の原因でも生じる場合があります。

被害者に交通事故以前からの既往症がある場合には、「被害者が訴える症状は、交通事故を原因とするものではない」と相手方から反論されることもあるでしょう。

しかし、既往症がある場合でも、「交通事故によって悪化したことが明らか」であれば、悪化分については補償してもらえます。

2.むち打ちを疑われないための対処法

上記のようなむち打ちに関し、相手方に「むち打ちは嘘」と言われないためには、以下のような対処することが大切です。

(1) 事故直後に医師の診察を受ける

軽微な事故では、「先を急ぐ理由がある」「外傷がないから大丈夫だと思った」といった事情で、事故直後に医師の診察を受けていない被害者も少なくないようです。

しかし、事故から何日も経過してからの通院・診察では、症状の原因が交通事故であることを保険会社に認めてもらえない場合があります。

首が痛いなどのむち打ちの症状は、事故から数日経って初めて現れることも珍しくありません。また、事故直後の緊張・興奮状態の中では、体内ホルモンなどの影響で痛みを感じづらい場合もあります。

身体に衝撃を感じる交通事故に遭ったときには、外傷や痛み・しびれの有無を問わず、必ず事故直後に「整形外科の専門医の診察」を受け、「診断書を作成してもらう」ことが大切です。10日以上経過してから通院した場合、事故の為の治療と判断されない場合もありますので、事故直後であることが重要です。

[参考記事]

追突事故であとから頭痛・むち打ち等の痛みが出た場合の対処法

また、後から痛みが生じた場合にも、医師の診察を受けずに、整骨院・接骨院での施術(マッサージなど)だけで対応してしまう人もいます。

しかし、整骨院・接骨院で施術する柔道整復師は、医師ではないので診断書を発行することもできません。
また、医師が必要と認めない施術についての費用は、補償の対象外となることもあるので注意が必要です。

初回の通院は、必ず整形外科などの病院で受けるようにしましょう。

整形外科と整骨院の同時通院|適正な交通事故慰謝料のために

[参考記事]

交通事故で整形外科と整骨院の同時通院は可能?

(2) 症状を一貫して訴える

交通事故の示談交渉における「症状の判断」は、「一貫性」や「常時性」がとても重視されます。

相手方へ症状を伝える際には、誤解が生じないように、丁寧に、正確に、一貫した主張を続けることがとても大切です。

また、医師の診察の際にも、一貫した主張を続けることがとても大切です。
むち打ちの症状は、他覚症状がないため、患者の申告内容でしか判断できないからです。

「一昨日は首が痺れていたが、今日は腰が痛い」「雨の日しか痛まない」など、一貫しない症状がカルテなどの診療記録として残ってしまえば、示談交渉で不利な事情となってしまう場合も少なくありません。

(3) 適切な検査を受ける

むち打ちは、骨折などの場合と違い、レントゲン画像などで症状を確認するのは難しい場合がほとんどです。
しかし、MRI検査を実施すれば、神経圧迫などの状況が映し出されることもあり、むち打ちによる症状の原因を確認できる可能性もあります。

また、握力検査、深部腱反射検査、スパーリングテスト、ジャクソンテストなどの検査を実施することで、症状があることを客観的に明らかにできる場合があります。

事故後の通院先は、これらのテストが実施できる医療機関を選択することも大切です。仮に通院先になくても、検査が出来る医療機関を紹介してもらうようにしましょう。

3.「むち打ちは嘘」だと言われてしまったときの対応

保険会社との示談交渉において、実際に感じているむち打ちの自覚症状を「嘘」だと疑われ、不当に低い示談金を提示された際には、交通事故事件に強い弁護士に早めに相談するのが最善の対応です。

示談交渉は、「当事者の合意」がなければ成立しません。「嘘の症状を申告している」と相手方に疑われたときには、相手方が「嘘だと決めつけている理由」を正しく把握し、必要な対策を講じなければなりません。

交通事故に強い弁護士であれば、相手方保険会社の主張にも専門的な観点から反論することができます。

また、むち打ちがあることを証明するために必要な検査方法についても、それぞれのケースに最も適合した、効果的な方法をアドバイスできます。

さらに、検査を実施するための「医師への働きかけ」も、専門的な内容の場合、弁護士を通じた方がうまく行く場合があります。

検査実施によって客観的な資料を揃えることができれば、示談がまとまらなかった場合であっても、民事訴訟によって十分な補償を確保できる可能性も高まります。

4.軽い事故によるむち打ちと嘘に関するFAQ

  • 軽い事故のむち打ちを放っておくとどうなる?

    軽微な事故では、事故直後に痛みもなく、そのまま医師の診察を受けない被害者も少なくないようです。

    しかし、むち打ちの症状は事故から数日経って初めて現れることも珍しくありません。また、事故直後の緊張・興奮状態の中では、体内ホルモンなどの影響で痛みを感じづらい場合もあります。

    仮に事故から何日も経過してから通院・診察したのでは、症状の原因が交通事故であることを保険会社に認めてもらえない場合があります。
    それだけでなく、初期対応が遅れたことで後遺症が残ってしまう危険も0ではありません。

    身体に衝撃を感じる交通事故に遭ったときには、外傷や痛み・しびれの有無を問わず、必ず事故直後に「整形外科の専門医の診察」を受け、「診断書を作成してもらう」ことが大切です。

  • むち打ちが詐病だと言われる理由は?

    むち打ちは、以下のような理由から、相手方保険会社と損害賠償についてトラブルになりやすいです。

    • むち打ちには「他覚症状」がないことが多い
      むち打ちの症状である「首が痛い」「肩が凝る」「めまい、頭痛がする」などは、怪我をした本人にしか分からず、相手方に「嘘をついている」と捉えられやすいです。
    • 事故状況と症状が比例しない場合がある
      相手方保険会社が、「追突車両の速度や車両のへこみ具合、修理代金額」などの事情から、「むち打ちとなるわけがない」と主張してくる可能性があります。
    • 交通事故以外の要因を疑われる
      被害者に交通事故以前からの既往症がある場合には、「交通事故を原因とするものではない」と言われることもあります。

    これに対抗するには、事故直後に医師の診察を受け、適切な検査を受けた上で、医師に一貫した症状を主張することが大事です。

  • 実際に嘘を言ってバレるとどうなる?

    逆に、「痛みがないのに通院する」「怪我が治っているのに痛みを主張する」などは、当然ながらしてはいけません。保険会社は交通事故の受傷事例について経験が豊富であり、少しの矛盾があるとすぐに嘘を見抜くでしょう。

    実際に嘘であることがバレると、示談交渉で不利になり、本来もらえるはずであった満額の賠償金を受け取れなくなる可能性があります。「交通事故の治療費で儲かるだろう」などと考えてはいけません。

5.相手方との示談交渉も弁護士にお任せください

むち打ちは、交通事故ではよくある怪我のひとつですが、「客観的に証明することが難しい」ため、示談交渉が難航することも珍しくありません。

しかし、事故で負った傷病について治療費や慰謝料を請求するのは被害者の当然の権利です。
被害者には全く落ち度のない交通事故で負った怪我を「嘘」と疑われ、十分な補償を受けられないのは大きな問題です。

万が一、示談交渉の際に、相手方や保険会社から「むち打ちは嘘ではないのか?」と疑われてしまったときには、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所なら、交通事故事件の経験豊富な、専門知識と交渉力を兼ね備えた弁護士が最後まで誠心誠意サポートさせていただきます。

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