むち打ち [公開日]2018年8月27日[更新日]2023年12月15日

交通事故のむち打ちで後遺障害認定を受ける方法

交通事故傷害で多くの方が悩む症状が「むち打ち」です。
むち打ちで後遺障害等級認定の申請をされる方も多いですが、申請者の気持ちとは裏腹に、認定が認められるケースが少ないのも事実です。

レントゲン1つで判明する骨折や脱臼などとは異なり、むち打ちは原因を客観的に特定することが困難なので後遺障害等級も認定が難いのです。

しかし、むち打ちの後遺障害認定が認定されない、すなわち非該当とならないために今からでもできることがあります。

今回は、むち打ちで後遺障害認定を受けるために知っておきたいポイントを解説します。
非該当となった場合の対処法についても併せて解説するのでぜひご一読ください。

1.むち打ちの後遺障害等級認定が「非該当」となる理由

交通事故でむち打ちの後遺障害等級申請をする際に他覚所見※のない場合には、「14級の後遺障害」の認定あるいは「非該当」のどちらかになります。

むち打ちの後遺障害等級認定が「非該当」となるのは、大きく分けて次の3つの原因があります。

  • 提出される資料が不十分である場合
  • 交通事故との因果関係が否定される場合
  • 症状自体が軽微である場合

※医師が視診、触診や画像診断などによって症状を裏付けることができるもの

(1) 資料が不十分

後遺障害等級認定は、「書面審査」のみで行われます。後遺障害等級を認定する機関が被害者を診察したり検査を実施したりすることはありません。

したがって、適切な後遺障害等級認定を受けるためには、適切で十分な資料を収集・提出する必要があります。実際に重篤な症状があったとしても、資料が不十分であれば、後遺障害等級認定を受けることはできないからです。

実際の後遺障害等級認定の多くは「事前認定」によって行われています。

しかし、事前認定は相手方保険会社が資料を収集するため、認定が微妙なケースにおいては、認定を受けるために十分な資料が収集・提出されない可能性があります。保険会社にとっては、「後遺障害等級認定が非該当」となった方が有利だからです。

また、診断書を作成した医師が後遺障害等級認定に精通していないこともあります。診断書の書きぶりに問題があることで、後遺障害等級認定が非該当となってしまうことも少なくありません。

(2) 事故と怪我の因果関係が否定される

次に、他に既往症のある人が交通事故でむち打ちとなった場合にも、後遺障害等級認定は否定されやすいです。

たとえば、ヘルニアなどの既往症があれば、交通事故後の身体のしびれなどが、「交通事故によるもの」とは断定しきれない場合が多いからです。別の交通事故で同一部位の後遺障害等級認定を受けている場合も同様です。

また、被害者が交通事故後に適切な治療を受けていなかった場合も、「治療の懈怠」が後遺障害の原因と判断されれば、交通事故との因果関係が否定されてしまいます。

(3) 症状自体が軽微で一貫性がない

最後の原因は、「そもそも症状が後遺障害といえる程度ではない」場合です。
たとえば、症状に一貫性や継続性がない場合や、交通事故での衝撃の程度が小さい場合にも後遺障害等級認定は否定されがちです。

 

これら3つが主な原因ということは、逆に言えば、こうした要素が否定できれば、後遺障害認定に近づくということです。

そのため、後遺障害認定のためには、

  1. 資料を十分に用意する
  2. 因果関係が認定されやすいようにする
  3. 症状をきちんと説明できるようにする

ことが重要となります。

この3点を念頭におきつつ、注意すべきポイントを深堀りしていきます。

2.むち打ちの後遺障害認定で注意すべき4つのポイント

14級の後遺障害の認定のためには、むち打ちの自覚症状について「医学的に説明できる」ことが必要とされます。

「医学的に説明できる」とは、交通事故の態様や治療の経過などを考慮すれば、被害者がそのような症状を訴えること自体、医学的にありうると言えるような場合などを指します。

医学的に説明できるようにするための注意すべきポイントは治療の初期段階からあります。順を追って説明しましょう。

(1) 自覚症状を「事故直後」から医師に正確に伝える

後遺障害が認められるためには、症状について以下のことが特に重視されます。

  • 一貫性
  • 継続性
  • 常磁性

交通事故との因果関係を認めてもらうには、症状発生の時期も重要だからです。

特に、他覚症状のないむち打ちは、レントゲンなどの各種の検査では症状を判別できないため、「患者からの申告」をカルテや診断書にきちんと盛り込むことが大切です。

※むち打ちは、「事故直後は無症状で、翌日から頸部痛を訴える例が多い」*との指摘もあるため、当日に診察を受けたが、申告できない場合もあるでしょう。その場合も、痛みを感じ始めたら、なるべく早く医師に症状を訴え、診断書に盛り込んでもらいましょう。*「むち打ち損傷ハンドブック―頚椎捻挫から脳脊髄液減少症まで」第2版・東京医科大学整形外科講師遠藤健司編著・シュプリンガー・ジャパン株式会社発行13頁)

(2) 症状固定まできちんと通院を続けること

「治療(整形外科への通院)をきちんと続けること」も重要なポイントです。

むち打ちの場合には、整形外科の診察よりも症状が緩和されるので整骨院・接骨院での施術を優先してしまう場合が少なくありません。

しかし、診断書を作成できるのは医師のみです。
後遺障害等級認定との関係では、医師が症状固定と判断するまで、少なくとも半年程度は定期的に通院し診察を受ける必要があるといえます(症状固定後も通院を続けた方が後遺障害等級認定では有利になることが多いです)。

整骨院などでの施術を希望する場合は、担当医師の承諾を得た上で、通院と並行して行うことをお勧めします。

整形外科と整骨院の同時通院|適正な交通事故慰謝料のために

[参考記事]

交通事故で整形外科と整骨院の同時通院は可能?

また、通院期間だけでなく、通院頻度も後遺障害等級認定では重視されます。少なくとも症状固定までは、週に2・3回を目安に定期的な通院が必要です。

(3) 適切な検査を受ける

症状が外傷を原因とすることが明らかであれば、後遺障害等級認定はかなり有利になります。

たとえば、画像所見で後遺障害があることが客観的に明らかである場合には、事前認定で後遺障害等級認定を受けても適切な等級を認定してもらえる可能性は高いといえます。

ところが、むち打ちの場合には、レントゲンまでは撮影するがMRIやその他の検査(各種反射テスト)などまでは実施しない医師も少なくありません。被害者としてもMRIなどは検査にも時間がかかり負担もあるため、「そこまでしなくても」と判断してしまう場合も多いようです。

実は、むち打ちの後遺障害等級認定では、MRIでの画像診断が重要な要素となることが少なくありません。MRIでは、レントゲンでは確認できない変形などを見つけられる場合があるからです。

自覚症状が外傷を原因とする可能性が少しでも疑われるときには、必要な検査をしっかり受けることが大切です。

また、必要な検査を実施できる医療機関を選択して受診することも重要となります。たとえば、各種の反射テストをうけるにはリハビリ科のある病院で診察を受けた方が良い場合も多いでしょう。

(4) 交通事故の記録を整理しておく

交通事故の程度と後遺障害等級認定は密接に関連しています。

人身事故として処理されているときには、警察が作成した実況見分調書で事故の状況を確認することができますが、被害者自身でも、自動車の破損状況、事故現場の状況をスマホ・携帯で撮影するなどして、記録を残しておくと、補完資料として役立つ場合があります。

3.むち打ちで非該当となった場合の3つの対策

では、万が一非該当となってしまったら何か打つ手はあるのでしょうか?

後遺障害等級認定で「非該当」となった場合でも、諦めずに対応することで、後遺障害等級を認めてもらえる場合があります。

(1) 異議申立てを行う

後遺障害等級認定が非該当となったときの最も一般的な対応方法は、「異議申し立て」を行うことです。異議申し立ては何度でも行うことができますが、「書類審査」しか行われないという審査の性格上、新しい資料(検査結果・専門医の意見書など)が追加できなければ、結論の変化は期待できません。

しかし、事前認定で等級認定がなされた場合などには、提出資料が不十分な場合も少なくありません。その場合には、後遺障害認定等級に精通した弁護士事務所に依頼し、必要な資料を収集しなおした上で異議申立てをすることで、異議が認められる可能性も十分期待できます。

また、被害者請求で非該当となった場合であっても、非該当となった原因を適切に分析し、必要な補完資料を揃えることで、非該当の認定を覆すことも可能です。

実際、泉総合法律事務所では、被害者請求で非該当となった事案について、適切な追加資料を揃え異議申し立てをして第14級の認定を勝ち取った実績があります。

[解決事例]

30代男性、後遺障害非該当→異議申立で14級9号に認定、賠償金310万円を獲得

(2) 自賠責保険・共済紛争処理機構に調停を申し立てる

自賠責保険(共済)による損害賠償の支払いについてトラブルが生じたときには、自賠責保険・共済紛争処理機構が実施している調停を申し立てることができます。

自賠責保険・共済紛争処理機構は法律に基づく指定紛争処理機関です。調停は無料で利用することができます。

また、自動車保険会社は、自賠責保険・共済紛争処理機構での調停の結果には必ず従うことになっているので、十分な資料を揃えられているにもかかわらず、異議申し立てが認められないときには、有効な手続きであるといえます。

なお、調査事務所への異議申し立ての場合とは異なり、調停は1回しか利用できません。

(3) 民事訴訟を提起する

後遺障害等級認定の結果だけでなく、異議申立ての結果についても民事訴訟を提起することができます。

ただし、民事訴訟においても調査事務所による後遺障害等級認定の判断が重視される傾向があるので、非該当となった事案を覆すことは簡単ではありません。

とはいえ、適切で有力な証拠に基づいた主張を展開することができれば、後遺障害等級に変化がなくても損害賠償額の上積みを期待できる場合も少なくありません。実際に認定される賠償額は、一律均等という訳ではなく、同じ等級であっても個別事件による幅があるからです。

また、訴訟は、最終的な紛争解決手段であり、裁判の結果がすべてに優先し、判決が確定するとこれ以上不服申し立てをすることはかないません。

4.まとめ

むち打ちで後遺障害等級認定を獲得するためには、治療初期段階から適切な対応をとることがとても重要です。正しく医師に働きかける(症状の申告・診断者への記載の仕方・必要な検査の実施)ためには、後遺障害等級認定についての正しい知識・経験が必要です。

事前認定で非該当となった場合にも諦める必要はありません。追加で資料を収集できる可能性があれば、異議申し立てなどで認定を覆せる可能性は十分に残されています。

ただ、交通事故被害者の方がこれらを単独でやるには実際ハードルが高いです。こんなときこそ、専門家である弁護士を頼ってください。

泉総合法律事務所では、後遺障害等級認定のノウハウに熟知した弁護士が、事故や治療の初期段階から誠心誠意サポートさせていただきます。無料相談も実施していますので、お気軽にお問い合わせください。

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