もらい事故と弁護士|損しない!泣き寝入りしない対応方法
「赤信号で停車中に突然後ろから追突された」…このような事故は一般に「もらい事故」と呼ばれています。
もらい事故は、交通事故全体の約3割を占めると言われるほど発生件数が多いのが現状です。
いつ自分の身に起こるか分からない事故ですので、対処の仕方や一般的な事故との違いをきちんと理解しておくことは大切です。
今回は、「もらい事故」について、知っておくべきことを解説します。
1.もらい事故とは?
実際に、どのような事故がもらい事故となるのでしょうか。
具体的には以下のパターンが挙げられますが、事故の類型としては、停車中に相手が衝突してきたケースと言えます。
もらい事故というのは法律上の専門用語ではないので、明確な定義はないのですが、一般的には停車して全く動いていない状態で事故に巻き込まれた、というのがもらい事故であり、停車していた側に責任はまったくなく、追突した側に一方的に責任がある事故のことです。
- 赤信号で停車していたら、後から走行してきた車に追突された
- 交差点内に停車中、カーブを曲がりきれなかった対向車が衝突してきた
- 駐車場内で適切に駐車していたら、走行する車に当てられた
- 渋滞の最後尾に停車していたら、後続車に追突された
車対車の交通事故の場合、通常は両当時者それぞれに事故の原因となる過失が認められ、80対20などのように責任の重さに応じて過失割合が決められます。
この過失割合が相殺され、損害賠償金の負担額が決められるのです。
しかし、もらい事故の場合は過失がゼロですから、事故の責任はすべて加害者にあるということになります。
[参考記事]
交通事故の過失割合10対0!注意点と慰謝料・示談金の相場
もらい事故に遭った後の流れや、正しい初期対応は通常の事故と変わりません。
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
交通事故の初期対応としてするべきこと
2.もらい事故の注意点
では、もらい事故に遭った場合、他の事故と異なること(特に注意する点)は何なのでしょうか。
(1) 被害者が加入する保険会社は動いてくれない
被害者が任意に加入する自動車保険には通常、「示談代行サービス」が付帯され、交通事故に遭った場合に保険会社の担当者が相手側との交渉を担当してくれます。
しかし、もらい事故の場合、被害者に賠償責任がないため、被害者が加入する保険会社は損害賠償金を支払う義務がなく、示談を代行することはできません。
保険会社が被害者を代行して示談交渉をしてしまうと、法律(弁護士法72条)違反になります。
つまり、もらい事故では、被害者ご自身が加害者側の保険会社との交渉に対応しなければならないのです。
被害者が保険会社への対応を行うのは大変骨が折れます。
もらい事故の交渉の代行は、弁護士に相談することが必要でしょう。
[参考記事]
相手の保険会社の対応が悪い・連絡が遅い場合
(2) 加害者が過失を主張してきた場合に備え反論方法を準備しておく
もらい事故は被害者にまったく落ち度のない事故ですから、過失割合は被害者0:加害者100です。
ただし、交通事故の過失割合は警察が決めてくれるわけではなく、基本的に両当事者が話し合って決定するものです。
過失責任0のもらい事故と言えるには、自分の車は動いていなかった等の一定の要件が必要です。
運転していた際に速度制限や一旦停止などの注意義務をすべて遵守し、一切の過失がないことを証明できれば損害賠償責任は課せられません。
加害者側がすんなり100%の責任を認めれば問題はないのですが、いざ示談の話し合いになると、被害者にも過失があることを主張してくるケースも否定できません。
ドライブレコーダーを設置したり、事故を目撃している第三者に事前に連絡先を聞いたりするなど、加害者が過失を主張してきた場合には自分には過失がないということを反論する方法を用意しておくことも必要でしょう。
(3) もらい事故でも等級が下がる可能性がある
先述の通り、もらい事故は被害者の過失が0の事故です。
そのようなもらい事故でも、自分の車両保険を使うと等級が下がることになります。
(※人身傷害保険金の支払いだけであれば過失割合に関係なく等級は下がりません。)
例えば、相手方が任意保険会社に未加入で、自分の車両保険を適用するなどのケースが挙げられます。
「自分には一切責任がない事故なのに等級が下がるなんて…」と思うのは当然ですが、火災や盗難、自然災害などによる保険利用でも等級は下がりますので、これは致し方ないと言えるでしょう。
しかし、保険の種類によっては、責任(過失)がない被害事故において、一定の条件を満たせばノーカウント事故として取り扱ってくれるようです。
3.もらい事故で請求できる損害賠償
交通事故の損害賠償請求における損害には、財産的損害と精神的損害があります。
財産的損害は、治療費や通院交通費などの実際にかかった費用や、逸失利益などの事故が原因で得られなくなった利益分としての損害です。
精神的損害は、怪我による苦痛に対する金銭的補償で「慰謝料」と言われるものです。
もらい事故で怪我をした場合、通常の人身事故と何も変わらず、相手方から財産的損害と精神的損害の両方を受け取ることができます。
(怪我なしの物損事故の場合、受け取れるのは財産的損害としての物の賠償金のみで、原則として慰謝料の請求はできません。)
もらい事故も他の事故同様、被害者の当然の権利として損害の程度に応じた賠償金を受けることができるのです。
交通事故による損害賠償金の内訳は以下の通りです。
示談金の種類 | 損害賠償金の内訳 | 補償の内容 |
---|---|---|
傷害部分の示談金 | 治療費 | 入院や通院時にけがの治療に要した実際の費用 |
通院交通費 | 通院に要した交通費 | |
休業損害 | 治療期間中に減少した収入や利益 | |
入通院(傷害)慰謝料 | けがや治療に伴う精神的苦痛に対する金銭的補償 | |
後遺障害部分の示談金 | 後遺障害慰謝料 | 後遺障害を負ったことによる精神的苦痛への金銭的補償 |
後遺障害逸失利益 | 将来得られたはずの収入が後遺障害を負ったことで減少したことへの補償 |
もらい事故の慰謝料・示談金の相場については、以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
もらい事故の慰謝料・示談金の相場は?
4.もらい事故も弁護士へご相談ください
被害者に落ち度のないもらい事故の場合、責任のすべてが相手側にあるのですから、一般的な交通事故に比べると多額の損害賠償金を得ることが可能です。
しかし、被害者の保険会社が示談交渉を代行してくれないため、被害者自身が交渉を進めることになり、大きな負担となることもあるでしょう。
そのような場合は、是非、交通事故に詳しい弁護士へご相談ください。
泉総合事務所にご相談いただければ、交通事故の解決実績豊富な弁護士が責任もって最後までサポートさせていただきます。
特に、もらい事故であっても「弁護士費用特約」に加入しているなら、費用の心配は不要です。
[参考記事]
弁護士費用特約とは?|誰が、いつ、どんなことを補償されるか
相談のタイミングは早い方が、弁護士としても有効な対処を行うことができます。事故への対応・怪我の治療・保険会社との交渉などでお困りの方は、どうぞお早めにご連絡ください。