後遺障害 [公開日]2018年6月7日[更新日]2019年3月20日

被害者請求に要する期間は?手続きに不安があれば弁護士へ

被害者請求とは、交通事故の被害者の方が、後遺障害の等級認定をしてもらえるよう、認定機関である自賠責事務所に対して、直接審査を請求することができる手続きをいいます。

被害者請求を使うと、申請資料を被害者自ら用意することができるので、十分な準備が可能となり、被害者に有利な等級認定がおりる可能性が高まるというメリットがあります。

また、後遺障害等級認定により、加害者の任意保険会社に対する請求金額の示談前であっても、慰謝料を早く受け取ることが可能になるというメリットもあるので、ぜひ積極的に活用していきたいところです。

しかし、被害者請求をすることができる期間にも時効があります。

今回は、被害者請求を選んだ場合、請求手続きの準備・申請自体に要する時間と、いつまで請求をすることができるのかという点について解説します。

1.被害者請求の申請書類の準備にかかる時間

被害者請求は、被害者自らがその手続きの準備を進めなければなりません。

被害者請求の申請期限には3年という時効があるため、定められている各種書類を準備する期間を考慮する必要があります(時効については段落3にて解説します)。

目安として、必要書類ごとにかかる期間の目安を以下で解説します。

(1) 交通事故証明書

まず、交通事故証明書の交付を、自動車安全運転センターあてに申し込む必要があります。

申し込み方法は、自動車安全センターの窓口で直接申し込むほか、郵便局またはインターネットで申し込むことができます。窓口に出向いて交付を受ける場合は原則即日交付してもらうことができますが、郵便局払い込みまたはインターネットで申し込む場合は、10日前後かかると見ておく必要があります。

郵便局やインターネットは自宅や勤務先の近くで申し込み可能であるため、時効までに時間に余裕がある方には便利です。
そうでない方は、窓口申込みと受け取りが安心です。

(2) 診断書・診療報酬明細書

申請対象である交通事故の後遺症について、治療を受けている病院から診断書・診療報酬明細書を取得する必要があります。

加害者の保険会社が、被害者の後遺症の治療費を被害者の病院に直接支払っている場合(一括対応)、かかっている病院すべての診断書・診療報酬明細書の写しを保険会社が保管していることが多いです。まとめて写しを送ってもらえないか確認してみましょう。

書類作成に要する期間は、病院や医師によってまちまちですが、月末締めで月毎に作成する病院が多いようですので、翌月以降に取得できるというイメージでいるとよいでしょう。

もし、診療報酬明細書を発行してもらえない場合は、「診療報酬明細書不添付報告書」を作成することになります。

また、死亡事故について遺族が被害者請求する場合、医師に作成してもらうのは死体検案書(死亡診断書)となります。

(3) 後遺障害診断書

後遺障害診断書は、後遺障害について特に詳しく記載するもので、治療を受けた主治医の先生に書いてもらう必要があります。

症状固定(治療を続けてもそれ以上良くならない状態)後に作成してもらうことになりますが、主治医が忙しい場合、依頼してから長ければ数カ月かかる例もあるそうです。

人間同士の関係ですから、主治医と日ごろから良好なコミュニケーションを保ち、損害賠償金を受け取って早く新たなスタートを切りたいという気持ちを切実に訴えて、なるべく早期に作成していただけるよう働きかけてみると良いでしょう。

(4) 病院の画像データ

MRI画像データ・レントゲン写真など、後遺障害を外観で確認できる資料があれば、等級認定に有効な資料となりますので、ぜひ自賠責事務所に提出しましょう。

画像データは、通院していた医療機関にお願いして取得することになります。ただ、加害者の保険会社が一括対応をしている場合は、保険会社の方で医療機関からすでに画像を取得しているケースもあり、貸し出してもらえる可能性がありますので、保険会社に確認してみましょう。

(5) 主治医への診断書修正依頼・意見照会

主治医から作成してもらった診断書等を見て、申請にあたって特記してもらいたいこと、強調してもらいたいことがある場合、随時追加で書面作成をお願いすることになります。

主治医は治療のプロですが、慰謝料獲得について詳しいとは限りませんので、要望があれば積極的に伝えましょう。

期間は、事案や主治医の忙しさによっても変わりますので、十分な余裕をみておいたほうがよいでしょう。

(6) 弁護士、行政書士などによる資料検討・意見書作成

申請書類を起案するために、交通事故案件に詳しい弁護士や行政書士にサポートをお願いすることもおすすめです。

交通事故の被害者になることは一生に何回もあるものではありませんが、専門家は毎日のように被害者の代理として手続きのサポートをしており、書類作成には経験値があります。自分で作成するよりも、良質かつ早い資料作成が期待できるでしょう。

事務所や事案にもよりますが、意見書の作成依頼には1~2週間かかることが一般的です。

 

この他、被害者請求で必要な書類の詳細は、以下の記事をご覧ください。

[参考記事]

被害者請求(後遺障害申請)で必要となる書類

2.後遺障害認定審査にかかる期間

次に、被害者申請を受け取ったあとの自賠責事務所でも、それを審査し決定するために一定の期間がかかることを考慮しておく必要があります。

被害者申請から等級認定までかかる期間としては、以下のような統計がでています。

  • 1カ月以内:全体の85.2
  • 1カ月~2ヶ月:9.3%
  • 2ヶ月超~3ヶ月:4.4%
  • 3カ月超:3.7%

3.被害者請求の時効

被害者請求ができる権利は、3年間で時効消滅してしまいます。

民法上、権利を主張する者は自ら一定期間内に努力しなさい、という趣旨により消滅時効が定められており、被害者請求権もこの例外ではありません。

  • 傷害による損害:事故日の翌日から起算して3年
  • 後遺障害による損害:症状固定日の翌日から起算して3年
  • 死亡による損害:死亡日の翌日から起算して3年

(平成22年4月1日以降に発生した交通事故の場合)

しかし、消滅時効は、一定の事由により中断させることができます。時効期間が気になる方は、検討されてみてください。

  • 仮渡金・保険金の支払い
  • 時効中断申請書の提出
  • 裁判上の請求

また、任意保険会社が一括扱いをしている場合、一括扱いを解除しない限り、自賠責保険への被害者請求の時効は進行しないというのが実務上の扱いとなっています。

なお、後遺障害等級認定結果に不服がある場合に再審査を要求する「異議申立」には、期間制限はありません。3年の時効期限のみ考慮していれば大丈夫です。

4.被害者請求のサポートも泉総合法律事務所の弁護士へ

被害者にとって大きなメリットがある被害者請求ですが、このように、手続きの準備には一定の時間がかかるので、計画的な準備が必要です。

被害者請求の準備や手続きに不安がある方は、ぜひ一度、泉総合法律事務所にご相談ください。
交通事故解決の経験豊富な弁護士が親身にサポートさせていただきます。

当事務所において被害者請求が成功した事例(一例です)
[事例56] 40代男性 肩関節可動域制限で後遺障害10級 示談金約1830万円を獲得した事例
[事例61] 60代女性 鎖骨変形などで後遺障害11級 示談金約760万円を獲得した事例
[事例106] 40代会社員(現場作業員)、後遺障害9級認定、示談金は1600万円超

なお、被害者請求だけでなく、事前認定(加害者請求)を含めた後遺障害認定の期間を知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。

[参考記事]

後遺障害認定にかかる期間|何日待てば良い?

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