後遺障害 [公開日]2018年3月2日[更新日]2018年8月30日

後遺障害5級の慰謝料相場と逸失利益などの損害の計算について

病院のベット

【この記事を読んでわかる事】

  • 交通事故による損害は、後遺症に関する損害と後遺症以外の損害がある
  • 後遺障害5級に当たる後遺障害には、高次脳機能障害などがある
  • 後遺障害5級の場合、後遺障害慰謝料は、通常1400万円程度

ご家族が、ある日突然交通事故で後遺症を負い、後遺障害5級と認定された場合に、加害者に対して、どのような損害を主張できるのでしょうか?

また、その場合の損害額はどのようにして計算されるのでしょうか?

そして、後遺障害5級とはどの程度の障害なのでしょうか?

請求できる損害の種類や額は、個々の事案に応じて異なりますが、共通して請求することが多い項目について、計算方法や裁判上で認められる平均的な金額などを説明していきます。

1.後遺障害とは

後遺障害とは、事故などの負傷が、一般的に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待しえない状態で、かつ、残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状固定)に達したときに、身体に障害が残る状態を言います。

後遺障害に基づく慰謝料などの損害賠償を加害者に対して請求するためには、症状固定の状態で、損害保険料算出機構(自賠責調査事務所)などの等級認定を経る必要があります。

後遺障害は、第1級から第14級までの等級で分類されていて、後遺障害5級は、5番目に重い後遺障害の等級です。

2.後遺障害5級の症状

それではどのような場合に、後遺障害5級と認定されるのでしょうか。

後遺障害5級は、

  1. 一眼が失明し、他眼の視力が1以下になったもの
  2. 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  4. 1上肢を手関節以上で失ったもの
  5. 1下肢を足関節以上で失ったもの
  6. 1上肢の用を全廃したもの
  7. 1下肢の用を全廃したもの
  8. 両足の足指の全部を失ったもの

が該当するとされています。

1の失明とは、眼球を失ったものや、明暗を区別できないもの、ようやく明暗を区別できるものとされています。

2および3は、身の回りの動作は可能であっても、高度の神経系統または胸腹部臓器の機能に著しい障害があるため、独力では、一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないものとされています。

特に、高次脳機能障害の場合には、

「単純の繰り返し作業に限定すれば、一般就労も可能であるものの、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなったりするため、就労を継続するために、職場の理解が必要であるような場合」

にも、後遺障害5級に該当するとされています。

6の「1上肢の全廃」とは、a)肩、肘、手関節の完全強直の場合や、b)障害がない側と比べて障害がある側の可動域が10パーセント以内に制限されて手指の障害が加わる場合や、c)肩・肘・手関節が完全麻痺している場合、d)先に近い状態で手指の障害が加わる場合にも、後遺障害5級に該当する「1上肢の全廃」とされています。

7の「1下肢の用を全廃したもの」とは、片方の足が、a) 股・膝・足関節の完全強直、b)障害がない側と比べて生涯がある側の運動可能領域が10%以内に制限され、足趾の障害が加わるもの、c)股・膝・足関節の完全麻痺、およびこれに近い状態で足趾の障害が加わるものとされています。

8の「両足の足指の全部を失った」とは、具体的には、中足指節関節から失ったものとされています。

3.後遺障害5級で加害者に請求できる損害

交通事故による損害は、大きく分けると、①後遺症に関する損害と②後遺症以外の損害があります。

そして、後遺症に関する損害も大きく分けると、

  • 後遺症に関する慰謝料
  • 逸失利益
  • その他の損害

に分かれます。

4.後遺障害5級の慰謝料相場

それでは後遺障害5級に該当すると慰謝料などの損害額はどのくらいになるのでしょうか?

後遺障害5級の場合、後遺症に関する慰謝料は、通常1400万円程度とされています。ただ、個々の事案に応じて増減したりします。

また慰謝料には、後遺症に関する慰謝料だけではなく、後遺症以外の損害として、別途事故時から症状固定時までの入院、通院期間の長短を基準として算定される慰謝料もあり、一般的には、入通院慰謝料と呼ばれるものもあります。

この入通院慰謝料は、症状固定までの入通院期間に応じて発生するもので、たとえば事故から半年間入院したのちに、1年間通院したケースでは、入通院慰謝料としておよそ298万円と認定されたケースがあります。

このようなケースだと、後遺障害慰謝料と入通院慰謝料とあわせて合計1698万円の慰謝料が認められることとなります。

5.後遺障害5級の逸失利益の計算方法

逸失利益は一般的に、被害者の①基礎収入に、②労働能力喪失率、③労働能力喪失期間、④中間利息控除率をそれぞれ乗じて算定されます。

①の基礎収入は、被害者の方の事故前までの現実の収入を基礎として計算されます。

ただ、現実の収入額以上の収入を得られる立証ができれば、その金額を基礎に計算することも可能です。

この点、事故時に未成年で就業していなかったような場合には、別途、賃金センサスと呼ばれる、我が国の賃金統計調査による平均的な賃金を計算の基礎とする場合もあります。

②の労働喪失率は、後遺症によって労働が制限される割合のことで、後遺障害5級の被害者は、後遺症によって特に軽易な労務以外の労務に服することができないとされ、独力では、一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないものとされています

そのため、後遺障害5級の場合の労働喪失率は、裁判などでは、通常0.79で計算されています。

③の労働能力喪失期間とは、後遺症によって労働ができなくなる、または労働能力が制限

されている期間のことを指しますが、後遺障害5級の場合には、終身にわたって労働能力が障害によって制限されていると評価されますので、労働能力喪失期間の終期は、通常、就労可能な年齢だとされる67歳までとされています。

④の中間利息控除率とは、将来にわたって発生する損害について、一括で請求する場合に

運用益に相当する利息を控除するためのものです。

一般的には、ライプニッツ係数とよばれる係数用いて計算します。

【参考】後遺障害・死亡事故で請求できる逸失利益の具体例と計算方法を解説

6.その他被害者の症状や固有の事情による損害

そのほか、被害者の症状などの固有の事情に応じて認められる損害もあります。

たとえば、神経系統機能の障害として、高次脳機能障害の場合を例にしますと、介護費用などが損害として認められることがあります。

後遺障害5級は、自分の身の回りのことはできる程度の障害とされていますので、通常介護費用は損害として認められないことが多いです。

しかし、後遺障害5級の障害であっても、場合によって、介護費用が損害として認められることがあります。

高次脳機能障害の場合には、火や刃物に対する注意力が低下することからその取扱いに注意が必要だったり、入浴時の介助が必要だったりするため、後遺障害5級の場合であっても、職業付添人または近親者による看視が必要とされる場合もあり、介護費用または看視費用という名目で損害として認められることもあるのです。

【参考】交通事故で起こりうる後遺障害「高次脳機能障害」はどのような症状か

7.後遺症以外の損害

後遺症に関する損害以外にも、先ほどの入通院慰謝料のほかに、治療費、入院費用、医療器具などの費用、休業損害、近親者の付添の費用など、交通事故に関連して発生した損害が後遺症に関する損害とは別途請求できます。

8.まとめ

泉総合法律事務所では、これまでに数多くの交通事故被害者の方からご相談いただき、解決させてきました。その中で培われた実績や経験値、キャリアには絶対の自信がありますので、交通事故被害でお悩みの方は是非とも当事務所にご相談ください。

一人ひとりのお悩みに合った適切な解決方法をご提案いたします。

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