目の前で事故が起きたらすべきこと|通報・証言は必要?
目の前で交通事故が起きた場合、目撃者としてはどう対応すべきか迷ってしまうと思います。
「他人事としてそのまま立ち去って良いのか」「積極的に声をかけて助けるべきなのか」「通報する義務・証言の義務があるのではないか」「SNSに投稿しても良いのか」等と不安になる方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、交通事故を目の前で目撃した方がすべきことについて解説します。
被害者を積極的に助けたい場合にできること・注意すべきことについてもご説明しますので、ぜひお読みください。
1.交通事故の目撃者が負う義務はある?
もし、ご自身の出来事として交通事故の当事者になってしまった場合、当事者には道路交通法にて「報告義務」というものが課されており、これをしない場合には「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」(119条1項10号)に処される可能性があります。
また怪我人が出ている場合には「救護義務」も発生します。交通事故で怪我人が発生した場合には、当事者は直ちに運転を停止して負傷者を救護する義務があり、救護しなかった場合には、「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(117条2項)に処される可能性があります。
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交通事故で警察を呼ばなかった場合、後日被害者に生じるデメリット
では、これらの義務は、目撃者に発生するのでしょうか?
結論からいって、交通事故における報告義務や救護義務は、目撃者には発生しません。仮に目の前で事故を目撃した場合、何もせずその場を立ち去っても先に示したような罰則が課されることはないのです。
もっとも、事故時の同乗者であった場合には、運転手ではなくても報告義務や救護義務が課されますので、きちんと対応する必要があります。
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交通事故の加害車の同乗者|責任は発生する? 慰謝料請求できる?
【事故の状況はSNSにアップしても良い?】
大きな損傷がある事故を目撃した場合、思わず写真や動画を撮ってSNSにアップしたくなることもあるかもしれません。
しかし、結論から言うとこれは控えるべきです。というのも、事故の当事者が写っている場合は、肖像権の侵害として訴えられる可能性があるからです。具体的には、顔がはっきり写っている写真を当事者の許可なくSNSにアップロードした場合には肖像権の侵害になる可能性があるでしょう。本人が写っていない場合でも、車のナンバー等がはっきり写し出されている場合には問題となる可能性があります。
顔を撮影しない、車両を特定できないように加工するなど配慮をしたとしても、トラブルの元になる可能性は否めませんので、基本的に撮影して公表することは控えましょう。
2.事故を目撃したらするべきこと
何の義務もないとはいえ、事故を間近で目撃してしまうと、そのまま立ち去るのも良心が痛むという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、以下のような対応を行うと良いでしょう。
(1) 当事者が怪我を負っている場合は警察に連絡する
大きな事故であった場合、加害者・被害者のどちらも怪我を負っている可能性があります。また、被害者が精神的ショックで電話できそうにない・加害者が何もせずに走り去ってしまうというケースもあるでしょう。
当事者のどちらも通報できない様子であれば、代わりに警察と消防に連絡してください。
道路の状況次第では、迅速に事故を処理することで交通の妨げも早く解消され、早期に通行の安全を確保することができるでしょう。
警察に報告すべき内容は?
目撃者として警察に通報する場合、何を話せば良いのかと不安になるでしょう。
しかし、電話をすれば職員の方が必要事項について話を進めてくれますので、基本的には聞かれたことについて答える形で心配ありません。
質問の内容としては、事故の場所、発生した時間、被害者の状態(歩けるか、呼びかけに応じるか)などが挙げられます。
これらについて正確に分からない場合でも、近くにある交差点の名前やおおよその時間(約○○分前など)を把握していれば、これを伝えましょう。
(2) 現場の状況を撮影しておく
先に示したように、SNSに事故現場の写真をアップするのは控えるべきです。
しかし、あくまで被害者のために提供する目的での撮影を行うことはお勧めできます。
事故後は、事故を起こした当事者が精神的ショックにより気が動転しているケースも多くあります。特に、警察が来る前に加害者が逃げてしまうと、加害者を探すことが難しくなってしまうため、相手の車のナンバー等を撮影しておくと役立ちます。
また、事故後の状況を撮影しておくと、警察による実況見分調書の作成などに役立ち、被害者が損害賠償請求をする際の助けになる可能性もあります。
(3) 証言の協力には無理のない範囲で応じる
警察に通報した場合、電話先で「その場に残れるかどうか」を聞かれることがあります。そこで、可能であればその場に残り、警察の実況見分に応じましょう。
目撃者の場合は、事故の状況について質問を受ける可能性があります。知っていることだけで良いので、できるだけ詳細に話しましょう。
特にひき逃げの場合には、相手のナンバーなどを覚えていると、これを警察に告げることで捜査に大いに役立ちます。
また、後日連絡をするために、氏名や電話番号を聞かれることがあります。被害者と加害者の言い分が異なる場合には、目撃者の意見が重要になりますので、参考人として後日に警察署に呼び出される可能性もあるのです。
これについては、応じられる範囲で応じると良いでしょう。
とは言え、目撃者に証言の義務はありません。仮に多忙などで応じられない場合には、丁寧にその旨を伝えてください(仮に断った場合でも罰せられるなどの問題はありません)。
(4) 絶対に嘘はつかないこと
仮に家族や友人が事故の加害者となってしまい、その様子を目撃していた場合には、加害者に有利な話をしたくなるかもしれません。
しかし、これは絶対にやってはいけないことです。仮に嘘の証言をしてしまうと、犯人隠避罪(刑法103条)に問われ、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処される可能性があります。
また、裁判で宣誓した後に、記憶に反したことを言ってしまうと偽証罪(刑法169条)に問われることもあります。こちらは「3か月以上10年以下の懲役」という重い罰則が課されています。
3.当事者になってしまいお悩みなら弁護士へ相談を
目撃した交通事故については、通報せずに立ち去っても罪に問われることはありません。
しかし、同乗者や事故の当事者である場合は、報告義務や救護義務が発生します。
この他、交通事故被害者となってしまい、損害賠償請求や慰謝料請求でお困りの方は、交通事故に強い弁護士にどうぞお早めにご相談ください。