接触事故で「相手が行ってしまった・立ち去った」ケースの対処方法
車同士をぶつける、あるいは歩行者や自転車にぶつかる接触事故が起こった際、軽い事故だと稀に相手が立ち去ってしまうことがあります(=当て逃げ)。
このような場合は、通常の交通事故と異なる対応法を理解しておく必要があります。
今回は、接触事故で相手が逃げてしまった場合(相手がわからない場合)の対処法をご説明します。
1.接触事故とは?
交通事故は、毎日多くの場所で起きています。その態様は、大きな怪我を負う事故から怪我人のいない小さな事故までさまざまです。
接触事故とは、物や人に接触して損壊・負傷などの損害を与える交通事故全般のことを指します。
物には、ガードレールや電柱、車両(本体、サイドミラー等)、自転車、家屋など、車がぶつかる可能性のある全てを含みます。当たったかわからない程度の軽い接触でも接触事故となります。
また、人の負傷に関しては、擦り傷程度の軽傷から骨折など重度の負傷まで様々です。歩行者や自転車がぶつけられて怪我をすることもあれば、車に乗車していてむち打ちなどの被害に遭うケースもあります。
特に運転初心者のときは、バックをする際に車の角をぶつけてしまう、狭い道などで車体を擦ってしまう、などの経験をお持ちの方もいるでしょう。
そのため、ドライバーであれば誰もが起こす可能性があるのが「接触事故」といえます。
車体をガードレールに擦っただけなど、負傷者のいない軽い接触事故などの場合は、「警察に言わなくても大丈夫」と考えがちです。しかし、実際上はどんな小さな事故でも警察に報告すべきです。というのも、道路交通法には届出義務が規定されているからです。道交法72条1項後段では、物損・人身にかかわらず「当該交通事故を・・・報告しなければならない」を規定しており、これに反し報告しなかった場合には「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(119条1項10号)」が科される可能性があります。また、他人の車や自転車、電柱、ガードレールに当て逃げした場合は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金(117条の5第1項)」に加え、30日の免許停止となることも規定されています。
さらに警察に報告しなかった場合には、交通事故証明書を発行してもらえないことから、別の不利益が生じる可能性があります。どんな小さな接触事故であっても必ず警察に報告するようにしましょう。
参考:交通事故証明書の内容・取り方・後日届け出る場合の注意点
2.接触事故の相手方への賠償請求方法
接触事故で車や自転車を傷つけられた場合や、ぶつけられた結果怪我をしてしまった場合、相手が立ち去った後でもしっかりと賠償金を払ってほしいと思うのは当然です。
接触事故の相手がわからない場合や、後から連絡がつかなくなった場合はどうすれば良いのでしょうか。
(1) 接触事故の相手がわからない場合
交通事故の相手方の氏名や連絡先がわからないと、損害賠償を請求することは困難となります。
こうなると被害者は大きな損害を被ることになりますので、できれば事故直後に立ち去る相手の車両やナンバーをスマホなどで撮影しておくべきです。
とは言え、そんな暇もないまま相手が行ってしまった、というケースもあるでしょう。この場合は、警察に届出をして捜査を進めてもらうほかありません。
時たまに、交差点などに交通事故の目撃情報を呼びかける看板が立っているのを見たことがある方もいるでしょう。
これは、事故の詳しい状況が分からないケースで証拠資料を集めている以外に、警察が事故のひき逃げ・当て逃げの相手方を探している際にも設置されます。
警察の捜査によって相手方の連絡先等が判明した段階で、損害賠償や補償の話を始めることができます(相手方不明の段階で弁護士に相談しても無駄足となってしまうため、警察の捜査で連絡先が判明してから弁護士に相談しましょう)。
なお、仮に警察の捜査によっても相手方の身元が判明しない場合には、政府補償事業による支援を受けることができる可能性があります。
(後から加害者が判明した場合には、政府補償事業で国から被害者に支払われた損害賠償額につき、国が代位して加害者に請求することになります。)
このように、連絡先もわからないまま相手が行ってしまった場合は、被害者の不利益が大きくなります。
事故後すぐに加害者が立ち去ってしまったとしても、周囲の状況を撮影する、車の目撃者を探すなど、加害者を特定できる情報を集めておきましょう。
(2) 連絡先を聞いた後に連絡が取れなくなった場合
示談をするために事故後に連絡先を聞いたものの、後で連絡が取れなくなるケースがあります。
この場合は、相手方の加入する任意保険会社に連絡すれば大丈夫です。
そこで、事故後は氏名や連絡先を聞くだけでなく、加入している保険会社の名前は聞く、あるいは車検証などを撮影させてもらうことが大切です。
被害者に過失がない場合はご自身で相手方の任意保険会社に連絡する必要がありますが、被害者側にも少しでも過失がある場合はご自身が加入する保険会社に連絡をすれば対応してくれます。
相手方が任意保険に加入していない場合は、強制加入である自賠責保険に対し被害者自らの手で補償の請求をすることができます。警察に事故の届出をした後は事故証明書をもらい、それを参考に支払い請求をしましょう。
(なお、当事務所では相手方が無保険の場合のご依頼は承っておりません。ご了承ください。)
[参考記事]
任意保険未加入事故の被害者に…。損害賠償は受けられるか?
3.接触事故後の正しい対応とは?
接触事故に巻き込まれたら、被害者・加害者に関わらずすぐに事故対応をしなければいけません。
最後に、接触事故後にすべき事故対応をご説明します。
(1) まずは警察に連絡
接触事故を起こしたら、必ず最初にすべきは警察に報告することです。届出をしないとあらゆる書類が作成されず、事故の捜査もされないためデメリットが大きくなります。
届出の内容としては、以下の内容を伝えましょう。
- 日時と場所
- 死傷者の数、負傷の程度
- 損壊した物、その程度
- 車両の積載物
- 事故後にどのような措置を講じたか
道交法には上記のように規定されていますが、自ら全て話さずとも、警察に電話すれば警察官が順番に聞いてくれるので安心してください。警察官に聞かれたことに対しては真摯に応えるようにしましょう。
ちなみに、事故後すぐに警察に連絡するのが理想ですが、すぐにできなかったケースもあるでしょう。この場合は、後日できるだけ早い段階で通報するようにしてください。
また、事故の相手方がそばにいる場合は必ず連絡先を聞いておき、車検証を見せてもらう、車のナンバーを控えるなどの対応も必要です。
その場での当事者間の示談は、後日トラブルを招きますので避けるようにしてください。
なお、自転車も「軽車両」として車両の一つに含まれますので、「自転車で車にぶつかった」などの接触事故を起こした場合も警察に報告するべきです。
(2) 人身事故なら病院に行く
接触事故(人身事故)の被害者として車などと接触した場合は、警察に連絡した後、痛みがなくても念のため医師の診察を受けましょう。
軽い接触事故の場合、すぐに病院に運んでもらわなければいけないほどの重傷ではないケースも多いです。その場合は、警察の現場検証などを終えてから病院へ行ってください。
一方、怪我をして動けない程の重傷である場合は、事故の相手方あるいは事故の目撃者に救急車を呼んでもらうことも必要です。
治療が必要ならば整形外科に通院します。
病院の大きさは問いませんが、整骨院はNGです。事故直後に医師による診察を受け、必要な検査を受けた後に、診断書を書いてもらう必要があるからです(整骨院には診断書の書ける医師がいません)。
また、領収書は保存しておくようにしましょう。
(3) 物損事故なら自分の保険会社へすぐに連絡
電柱やガードレースに車をぶつけた(擦った)、などの相手がいない物損事故の場合は、警察に報告した後にご自身の保険会社に連絡をしてください。損害賠償請求などで必要な対応について教えてもらえます。
停まっている自転車や車にぶつけた場合など、相手方(物の持ち主)がいるケースでは相手の連絡先や車のナンバーなども聞かれることがありますので、事前に抑えておきましょう。
車の修理をした場合は、領収書を保管しておいてください。後で相手方や保険会社に請求する際に役立ちます。
4.接触事故・当て逃げの被害は弁護士へ相談を
接触事故で相手が逃げてしまった場合、相手の連絡先がわかる場合は修理費や慰謝料を請求することが可能ですが、相手がわからない場合は警察に相手を探してもらわなければいけません。
相手がわからないままだと、当然ながら損害賠償は請求できません。
接触事故で相手の連絡先が分かっているものの応答がない場合や、相手方からの対応が不誠実な場合には、弁護士に相談するのも一策です。
交通事故でお悩みの方は、一度泉総合法律時虫の弁護士にご相談ください。初回の相談は無料となっております。