あおり運転の対策!通報で後日対応はしてもらえる?
最近、あおり運転(煽り運転)を原因とする重大事故についての報道が目立つようになりました。
特に「高速道路であおり運転に遭い怖い思いをした」という方は少なくないと思います。
今回は、あおり運転に遭わないための対策や、万が一、あおり運転に遭ってしまったときの対応法(警察に通報するべきか、後日でも対応してくれるのか)について解説します。
1.あおり運転とは|刑罰・罰則
「あおり運転」には、「どこからがあおり運転である」というような明確な定義があるわけではありません。
しかし、次のような故意で行われる他車に対する嫌がらせ運転のことを、一般的に「あおり運転」と呼んでいます。
- 先行車に対して接触間近まで車間距離をつめる
- 先行車を意識的に追い回す
- ハイビームやパッシング、クラクションで威嚇する
- 無理な幅寄せをして並走する
- ウィンカーを右に出し続ける
あおり運転は、道路交通法違反を問われる可能性のある危険な行為です。
あおり運転した際に問われる可能性のある罰則は次のとおりです。
- 車間距離保持義務違反
- 過失運転致死傷罪
- 危険運転致死傷罪
(1) 車間距離保持義務違反
最も典型的なあおり運転は、車間距離を空けずに先行車両にぴったりくっつくことです。高速道路の追い越し車線などで怖い思いをしたという方も多いと思います。
道路交通法では、車両を運転するときには、「直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離」を保って運転しなければならないと定められています(道路交通法26条)。
車間を詰めて運転するあおり運転は、この車間距離保持義務に違反します(違反点数2点・反則金9,000円(高速道路・普通車の場合))。
なお、悪質な車間距離保持義務違反は、一般道では5万円以下の罰金(道路交通法120条1項2号)、高速道路では3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法119条1項1号の4)に処される可能性があります。
(2) 過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪
あおり運転が原因で死傷事故となったときには、加害者は「過失運転致死傷罪」や「危険運転致死傷罪」に問われ、逮捕される可能性があります。
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の量刑は下記のとおりです。
過失運転致死傷罪:7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(自動車運転処罰法5条)
危険運転致死傷罪:傷害事故は15年以下の懲役、死亡事故は1年以上の有期懲役(自動車運転処罰法2条)
なお、3年を超える懲役刑または禁錮となったときには、執行猶予は付かないので必ず実刑となり刑務所に収監されます。
2.あおり運転の対策
あおり運転に関しては、被害者の方は悪くないことがほとんどです。
とはいえ、以下のように「きちんと自衛する」ことも大切です。
- 極力走行車線を走行する
- 無理な車線変更をしないなど、走行姿勢に注意する
- 「ドライブレコーダー録画中」「カメラ録画中」などのステッカーを貼る
- 実際にドライブレコーダーを導入する
高速道路でのあおり運転のほとんどは追い越し車線で発生しています。
あおり運転の被害に遭わないために、必要のあるとき以外は極力「走行車線を走行する」ことをおすすめします。
また、他の運転手から反感をかうような走行(無理な車線変更など)をしないようにすることも重要です。
さらに、車両後方に「ドライブレコーダー録画中」「カメラ録画中」といったステッカーを貼ることで、あおり運転を行う車両の運転手に警告を発することも1つの方法です。
これらの対策グッズは、カー用品ショップなどで購入することができます。
万が一のときに備えて、実際にドライブレコーダーを導入することを検討しても良いかもしれません。
ドライブレコーダーにより、あおり運転だけでなく、もらい事故や当て逃げの被害に遭ったときに備えることもできます。
[参考記事]
ドライブレコーダーの証拠能力。交通事故で提出するべき?
3.あおり運転をされた場合の対処法
万が一、他車からあおり運転をされたときには、「落ち着いて運転する」ことが何よりも大切です。
後方車ばかりが気になって他への注意が疎かになると非常に危険です。
以下のことに気をつけて運転を続けるようにしましょう。
(1) 相手に進路を譲りやり過ごす
あおり運転された場合の最も基本的な対応は、「相手に進路を譲って先に行かせる」ことです。
特に、高速道路で、車間を詰められたケースや、後方車からパッシングされるケースの多くは、「先を急ぎたい」という相手運転手の心理による場合が多いでしょう。
したがって、進路を譲って相手を先にいかせれば、それ以上問題が悪化することは少ないはずです。
なお、この際にも慌てて隣の車線の状況を確認せずに進路変更することは非常に危険です。
落ち着いて、安全な場所で進路を譲り、そのまま相手をやり過ごしましょう。
(2) 安全を確認した上で車を停める
あおり運転する車に進路を譲ろうとしても、しつこく追い回されることもあり得ます。
その際には、「安全なところに車を一時停止させる」「PAやSAが近いときには立ち寄る」といった方法で、相手の車を完全にやり過ごす方法が考えられます。
なお、やむを得ず路肩など車両を停止させるときには、車両の安全確保(ハザードランプを点灯させるなど)に気を配ることも忘れてはいけません。
相手の車がこちらの停止にあわせて停止し、運転手が詰め寄ってくることもあるかもしれません。
その際には、車のドア・窓を完全にロックし、絶対に車両の外に出てはいけません。
むやみに車外に出ることは危険なだけでなく、傷害事件に巻き込まれるリスクも高くなります。停止した車両に詰め寄ってくる運転手は相当に興奮していることが少なくないからです。
また、興奮した相手運転手があなたの車に傷をつけるなどの行為をすることが考えられます。
そのようなケースでは、相手に対して損害賠償(修理代)を請求することも可能です。加害者特定のために相手車両のナンバープレートを記録するなどの措置も重要です。
ただし、携帯やスマホで相手運転手や相手車両を撮影する行為は、相手運転手をさらに興奮させる可能性があることにも注意すべきでしょう。
(3) 対処困難なときには警察に通報
停止後にもさらに運転手が詰め寄ってくるケースでは、警察に通報することも検討すべきでしょう。
方法としては、車から出ず、携帯電話から110番で警察に通報をしましょう。
事情を話せば、現場に駆けつけて対処してもらうこともできます。
なお、あおり運転を後日になってから通報したい(現行犯以外)というケースもあるかと思いますが、通常警察への通報は即時の連絡が推奨されています。
後日通報する場合、「ドラレコなし」など、証拠がないとその後の捜査が難航しますので、警察への通報はできる限り早いタイミングで行いましょう。
もっとも、証拠があったとしても、後日の通報だと被疑者の逮捕まで至ることは難しいようです。
あおり運転に遭ったとき、自分で撃退しようとして「相手を刺激する対応」をすることは絶対に控えるべきです。相手のマナーのない運転にいらだちを覚えることもあると思いますが、「ぐっと我慢する」ことも身の安全を守るためには大切です。
たとえば、相手の車をあおり返す行為・クラクションを鳴らす(不必要に多用する)・急ブレーキをかけるなどの対応は、相手をさらに刺激するだけでなく、事故を誘発する可能性の高い危険な対応です。また、こちらの「あおり返し」が相手に通報される可能性も否定できません。この場合「先にやられたからやり返した」という言い訳は通用しません。
急ブレーキによって追突事故となった際には、こちら側にも過失が認められる場合もありますので絶対にやめましょう。
4.まとめ
あおり運転をされた場合には、「平常心を保って」「安全運転に徹する」ことが何よりも大切です。相手車両に進路を譲ることで多くの場合はやり過ごすことができます。
こちらに非がないときには怒りを覚えることもあるかもしれませんが、冷静さを欠いたために事故を起こしてしまっては本末転倒です。
身の安全を守ることを第一に考えて行動するようにしましょう。
万が一、あおり運転が原因で事故が生じてしまった際には、相手側との示談交渉がもつれる場合も少なくありません。
その際には、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。