被害者請求はどのように行うのか?開始の手順と準備するべき書類
交通事故(人身事故)の被害者となってしまった場合、加害者が加入する自賠責保険と任意保険会社を相手に、損害賠償請求をすることができます。
そして、自賠責保険に請求する「被害者請求」という方法を利用すれば、示談交渉が成立する前であっても保険金を受け取ることができます。
しかし、保険金を早期で受け取れるというメリットがある反面、この請求は必要書類の収集など煩雑で手間がかかります。
そこで、「被害者請求」は被害者が弁護士に委任するのが一般的です。
この記事では、自賠責保険の「被害者請求」について、詳しく解説していきます。
1.被害者請求とは?
被害者請求とは、交通事故の被害者自身が、加害者に対して請求すべき損害賠償金を加害者が加入する自賠責保険会社に対して直接請求する方法です。
対して、加害者自身が被害者に事故の損害賠償をし、その後自賠責保険に対して保険金の請求を行うのが「加害者請求」です。
加害者請求では、加害者に損害賠償の資力がなければ救済できない被害者が発生してしまうため、被害者請求の制度があります。
ただし、自賠責保険に被害者請求できる金額には次の通り上限があり、これを超える額を獲得するには、加害者との示談や訴訟によるしかありません。
- 傷害による損害:120万円まで
- 後遺障害による損害:75万円~4,000万円(後遺障害等級により限度額は異なります)
- 死亡による損害:3,000万円まで
一方で、加害者が任意保険に加入していれば、示談成立後、任意保険会社は自賠責保険が負担すべき保険金を立て替えて被害者に一括して支払い、その後、立て替えた保険金を自賠責保険に求償することが通常になります。
被害者の治療費が、任意保険会社から治療を受けた病院に直接支払われるのも、この「一括払い」制度の一貫です。
2.被害者請求のメリット・デメリット
被害者請求のメリット・デメリットをまとめると以下の通りです。
メリット |
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デメリット |
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※自賠責保険に被害者請求する際には、被害者の過失が7割以上にならなければ過失相殺されることはありません。
これらのメリットから考えると、被害者が「被害者請求」を利用すべきケースは、次の3つになります。
- 示談が長期化するおそれがあり、示談金の受け取りまでに時間がかかるケース
- 被害者の過失割合が高く示談金が大きく過失相殺されるケース
- 加害者が任意保険に未加入で十分な補償を受けられない可能性があるケース
3.被害者請求の流れ・やり方
被害者請求についての概要が分かったところで、次に、事故に遭った後の被害者請求の流れ・やり方について解説します。
被害者請求のやり方は、手間がかかる以外はいたってシンプルです。
(1) 加害者側の自賠責保険に連絡
まず、交通事故が発生したら、必ず加害者が加入している自賠責保険の保険会社を調べます。
通常、加害者が加入する保険会社は、被害者が自分で自動車安全運転センターから取り寄せることができる交通事故証明書に記載されており、特定することは容易です。
特定した自賠責保険会社に事故の連絡を行い、保険金請求のための必要書類を送付することになります。
(2) 自賠責保険に必要書類を提出
必要書類は、事故状況や負傷の程度などを確認してもらうために送付します。必要書類は、原則として原本を提出します。
この送付する書類が、正当な賠償金を獲得するにあたり非常に重要になります。
被害者請求で必要な書類は以下の通りです。
- 自動車損害賠償責任保険支払請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 診断書、診療報酬明細書
- 通院交通費明細書
- 休業損害証明書(休業損害がある場合)
- 印鑑証明書
- 後遺障害診断書(後遺障害が残った場合)
- レントゲン画像 など
これらの書類を被害者自身が一人で取り寄せ、収集するのは大変ですので、弁護士のサポートを受けるのが効率的かつ一般的です。
(泉総合法律事務所において、被害者の方にて取り付けをお願いしている書類としては、後遺障害診断書、印鑑証明書、レントゲン画像資料などです。)
必要書類は、保険会社ごとによってフォーマットなどが異なりますので、事故連絡のときにあわせて確認し、指示に従いましょう。
必要書類の入手方法などについて詳しく知りたいという方は、以下のコラムがおすすめです。
[参考記事]
被害者請求(後遺障害申請)で必要となる書類
(3) 自賠責保険会社が調査会社に損害調査依頼
必要書類の提出を受けた自賠責保険会社は、事実確認のために調査会社に確認調査依頼をします。
調査が終了すると、調査会社は、その結果を自賠責保険会社に報告します。
(4) 保険会社の支払い額が決定し支払われる
自賠責保険が調査結果に基づき支払額を決定した後に、被害者は保険金を受け取ることができます。
(5) 書類提出から支払いまでの期間
重い後遺障害が残っているなどの場合を除き、書類の提出から保険金の支払いまでには1~2ヶ月の期間がかかるのが通常です。
被害者請求のそれぞれの手続きについてどれくらいの期間がかかるのか気になる方は、是非、次のコラムもご一読ください。
[参考記事]
被害者請求に要する期間は?手続きに不安があれば弁護士へ
4.被害者請求をするべきタイミング
被害者請求は、請求権が時効にかからなければいつでも可能です。
しかし、損害がある程度まとまったタイミングで請求するのが一般的です。
例えば、後遺症が残り、医師からそれ以上治療しても改善が見込めない「症状固定」と判断された場合です。
症状固定後は残った症状に対して治療を行っても効果が出ないため、その後、治療費や入通院慰謝料を請求することはできなくなります。代わりに、後遺障害等級認定を受けることで、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」を請求することになります。
この場合、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、被害者請求を行うことになるでしょう。
【被害者請求の請求権の時効】
被害者請求ができる権利にも、他の民事上の請求権と同様、時効があります。
平成22年4月1日以降に発生した事故については、傷害に関する請求は事故発生日の翌日から3年間、後遺障害に関する請求は症状固定日の翌日から3年間、死亡に関する請求は死亡日の翌日から3年間行使しないと消滅時効にかかります。なお、平成22年3月31日以前に発生した事故については、上記の3年というところが2年になります。
5.被害者請求は泉総合法律事務所へ
被害者請求は、文字通り被害者がご自分で行うことも可能ですが、交通事故案件に強い弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士に依頼した場合、以下のようなメリットが考えられます。
- 必要書類の収集手続き負担の軽減
- 賠償金をより迅速に受け取れる
- 適切な後遺障害認定を受けられる可能性が高まる
交通事故案件に強い弁護士は、被害者請求の手続き経験も豊富です。医療機関への依頼方法や効果的な書類の出し方を熟知しているのです。
また、書類の取り寄せや保険会社とのやりとりを一任できるのは、心理的にも物理的にも気が楽になるというメリットがあります。
被害者請求を考えている方は、どうぞ弁護士にご依頼ください。
泉総合法律事務所にご相談いただければ、交通事故を熟知した弁護士がご相談にあたります。
交通事故の損害賠償金請求について疑問点があるという方は、ぜひ一度当所の無料相談をご利用ください。