人身事故 [公開日]2018年5月21日[更新日]2021年4月8日

交通事故の現場検証|すること・してはいけないこと・注意点は?

交通事故被害に遭い、怪我を負ったケースでは「人身事故」として扱われることになります。

人身事故の場合は、事故の状況等を確認するための現場検証が行われます。
現場検証では、事故の状況を警察に話さなければいけません。そして、この現場検証での供述は、その後の事故処理にも大きく影響する重要な証拠となります。

もっとも、ほとんどの方にとって現場検証は初めてのはずです。何を聞かれるのか、どう答えればいいのか分からず、緊張してしまうこともあるでしょう。

そこで、今回は現場検証の内容について解説します。現場検証の概要から、気をつけるべきこと、知っておくべきことまでをご説明します。

1.現場検証について

(1) 現場検証とは

現場検証とは、交通事故においては交通事故後に行う「実況見分」のことを指します。
捜査官が人身事故などの刑事事件につき、現場の状況や当事者の供述、目撃者の供述を確認し記録することになります(物損事故の場合、現場検証は行われません)。

警察が到着すると、当事者の立会いの下、現場検証が始まります。

加害者・被害者の氏名、住所、車両ナンバーなどの個人情報を聞き取った後、事故の態様の説明を求められます。
衝突した場所や、相手の自動車に気づいた位置、ブレーキを踏んだ位置、事故当時どのくらいのスピードを出していたのかなど細かく説明を求められるでしょう。

事情聴取の間、事故状態の保存のため車両の撮影が行われ、「実況見分調書」が作成されます。

(2) 現場検証で作成される実況見分調書の必要性

人身事故の場合は、事故を刑事事件として立件する可能性があるため、証拠を集めるために現場の状況を記録しておくことが必要です。そのために、実況見分調書の作成が必要となるのです。

実際の実況見分調書には、当事者の氏名や住所、本籍、車のナンバー、保険証券番号等の個人情報が記録され、現場での衝突地点、衝突に気づいた地点、ブレーキを踏んだ地点など事故の態様が事細かに記録されています。

この実況見分調書は、当該刑事事件において重要な1つの記録となり、検察官が起訴・不起訴を判断する有効な書類となるのです。

また、保険金の支払いに必要である・過失割合の判断材料になる・示談交渉の資料になるなど、実際上は民事事件、つまり、加害者・任意保険会社への損害賠償請求をするためにも重要な書類です。
よって、報告義務違反という犯罪になることはもとより、実況見分調書の作成のためにも、人身事故で「現場検証をしないで立ち去る」という行動はするべきではありません。

[参考記事]

交通事故の供述調書・実況見分書とは?裁判の証拠にもなる!

(3) 現場検証にかかる時間

現場検証では、現場を撮影、車両を確認、当事者と目撃者への事情聴取が行われますが、これにかかる時間は早くて20分程度、長ければ2時間かかるケースもあります。

軽い事故の場合は実況見分も比較的早く終わりますが、玉突き事故のように当事者が増えると時間がかかってしまうこともあります。

また、大きな事故の場合、怪我人をすぐに救急車で運ばなければならず、その場で実況見分を実施できないこともあります。
この場合は、救急車で運ばれた当事者のみ、別の機会に事故状況の聞き取り(調書作成)を行うことになります(後日警察に呼び出されるか、警察が病院に伺うことになります)。

後日呼び出しを受けた場合でも、30分〜1時間程度で聞き取りは終了します。

2.現場検証でしてはいけない・注意すべきこと

現場検証で警察に話した内容は、証拠として重要な意味を持つものになります。加害者の起訴・不起訴や損害賠償請求の資料にも利用されます。

そのため、できる限り詳細で正確な情報を提供する必要があります。

あとで、「思っていた内容とは違う」と言っても、原則として、実況見分調書が修正されることはありません。
受け答えをする際は、以下の3点に注意してください。

(1) 嘘をつかない

まず大事なことは、嘘をつかないことです。

加害者も被害者も、できるだけ自分に非がないように話してしまいます。これはある程度は仕方のないことです。
ですが、警察は当事者全員から話を聞くため、矛盾がある場合は問いただされることになります。

矛盾に対してしっかりと説明できなければ、嘘をついていると判断され、自分の主張は認められなくなってしまいます。

したがって、どれだけ過失の程度が重くても、嘘をつかないことは大切です。被害者も事実以上のことを話さないようにしましょう。

(2) 曖昧な受け答えをしない

曖昧な表現は避けるようにしてください。
「多分そうだと思う」、「そう言われたらそうかもしれない」などの表現は、事実として記載される可能性があります。

「あなた自身も前方をしっかり確認しなかったのでは?」というように、被害者にも非があった可能性を指摘されることもあります。曖昧に「そうかもしれない」と流されず、違うことは違うとはっきり言うことが大切です。

また、覚えていないことについては「覚えていません」とはっきり答えるようにしましょう。
「そうだったと思います」と答えてしまうと、不利な証拠として扱われる可能性もあります。

(3) 納得いかない内容にはサインしない

実況見分調書を作成すると、署名押印を求められることになります。「内容に間違いはない」と当事者が太鼓判を押すようなものです。

警察官にいわれるがまま、「わかりました」と署名押印をする方が多いのですが、納得できない場合はサインする必要はありません

この場合は、実況見分のやり直しを希望することも可能です(実際にやり直しがされる可能性は低いですが、納得いかない実況見分調書が完成されることは防げるでしょう)。

3.現場検証に関するよくある疑問

最後に、現場検証に関するよくある疑問についてお答えします。

(1) 現場検証に立会えない場合は不利になる?

仮に救急車で運ばれてしまい、現場検証に立会えないと、不利な状況になってしまうのでしょうか。

まず、実況見分は一方だけに行われるということは通常ありません。必ず事故の当事者全員に話を聞きます。

交通事故後に救急車でそのまま病院に運ばれた場合、当日に現場での実況見分は行われますが、怪我をした本人は立会いができません。
この場合、怪我人からの聞き取りは後日行われることになります。

そのため、救急車で運ばれた方の主張も必ず実況見分調書に記載されます。

もっとも、現場での実況見分はすでに終わった後のため、一方当事者だけの主張で実況見分の大筋が完成していることになります。そのため、後日の事情聴取では一方当事者の主張をもとに同意・不同意が求められます。

この場合は、そのまま同意してしまうと不利な形で実況見分調書が完成してしまうことになりかねません。
意識がはっきりとしているときに、聴取を行ってもらうようにしましょう。

内容をしっかりと聞き、間違っている場合は訂正してもらう作業を怠らないようにしてください。

(2) 実況見分調書を確認することはできる?

実況見分調書は、事故証明とは異なりますので簡単に入手することはできません。刑事事件においては、起訴・不起訴の重要な判断資料となるためです。

しかし、交通事故の当事者であれば、閲覧・謄写の申請をすれば確認することは可能です。
謄写とは、簡単に言うとコピーすることです。

これを行うためには、管轄の警察署の交通事故係に行き、「実況見分調書を謄写したい」ことを伝えます。
そうすると、送致日、送致番号、送致先の検察庁の確認を行ってくれます。この内容をもって、検察庁にいき謄写依頼を行います(なお、刑事事件として裁判中の場合は裁判所に閲覧・謄写を申請することになります)。

送致日と送致番号を伝えれば、実況見分調書の謄写を行ってくれます。

しかし、例外的に閲覧・謄写が認められないこともあります。それは、起訴・不起訴が決まるまでの間です。
この間は、捜査中のため、実況見分調書の取得はできないことになっています(刑事訴訟法47条)。

4.交通事故でお困りの方は弁護士に相談を!

現場検証では、その後の事故処理に大きく影響する実況見分調書が作成されるため、事実に基づき冷静に対応する必要があります。
事実と異なる内容で実況見分調書が作成されてしまうと、後日損害賠償請求において不利になりかねませんので注意してご対応ください。

もし、相手方保険会社から提示された損害賠償額に納得がいかない場合には、一度弁護士にご相談ください。弁護士なら裁判所の基準で慰謝料額の算定を行うため、損害賠償額がアップする可能性があります。

交通事故の示談交渉、過失割合、損害賠償額等に不満・不安がある場合は、ぜひ泉総合弁護士事務所にご相談ください。一連の流れについて、弁護士がしっかりサポートいたします。

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