網膜裂孔(もうまくれっこう)とは?交通事故の後遺障害
交通事故で怪我をする場所といえば、一般的に手足や頭部、首などが多いです。
しかし、交通事故が原因で、目に障害を負ってしまうこともあります。
今回は、目に関する交通事故後遺障害の中でも、網膜裂孔になった場合に気を付けなければならないこと、網膜裂孔による損害賠償請求が難しい理由を解説いたします。
1.網膜裂孔とは?
よく、眼の機能をカメラに例えることがあります。
眼の機能をカメラに置き換えて説明すると、網膜はフィルムの役割を果たしているといわれています。
他にも、レンズやピント合わせを担当するのが角膜と水晶体、シャッターの役割を果たすのが瞳孔、絞りの役割を果たすのが虹彩と呼ばれます。
網膜裂孔とは、網膜に亀裂や穴などが生じることです。
網膜裂孔になると、前述のカメラの例でいえば、歪んだり破れたりしたフィルムで写真をとるようなもので、視野や視力に悪影響が現れます。
さらに、網膜裂孔によって網膜がはがれて、その部分が光を感じなくなった状態を網膜剥離といいます。
網膜裂孔は、網膜剥離の原因となるといわれています。
網膜裂孔を放置しておくと、隙間に水分が入り込み、網膜がはがれてしまうことがあるからです。
2.網膜裂孔の損害賠償請求が難しい理由
(1) 網膜裂孔が生じる原因
網膜裂孔は、事故による外傷によって発生することもありますが、それ以外にも老齢化に伴って発生したり、強度の近視、激しいスポーツなどをする場合にも発生したりします。
通常、眼球の内部は、硝子体という無色透明のゼリー状の組織で満たされています。
網膜は、そのガラス体の表面と接していて、加齢によって硝子体が液体に変化し、その容積が減ってくることがあります。硝子体の液化によって硝子体と網膜の間に隙間ができたり、硝子体が眼球内で動きやすくなったことで硝子体の動きで網膜が引っ張られて破れてしまったりすることがあるのです。
老齢化では、このようにして網膜裂孔となることがあります。
また、若年者であっても網膜裂孔が発生することがあります。
例えば、強度の近視の場合、眼球の長さが通常よりも長いため、眼球の壁も薄くなり、網膜もそれに伴って薄く変位した部位ができることがあります。
このような薄い網膜が委縮して裂孔ができることがあります。
このメカニズムによる網膜裂孔は、若い人に多くみられるといわれています。
他には、激しいスポーツなどでの眼球打撲を受けると、急激に眼球が変化して、それに伴って網膜裂孔が生じることもあります。
そのため、網膜裂孔とは、交通事故のような外圧によって生じるとは限らないのです。
(2) 交通事故との因果関係の証明が難しい
交通事故における衝撃で網膜に裂孔が生じ、網膜剥離となり、最終的には失明に至るケースも考えられますが、その網膜剥離が事故による外圧で発生したのか、老齢によって既に裂孔が生じていたものが事故によって被害が大きくなったのか、その因果関係を立証することは一般的に難しいといわれています。
実際に、交通事故に伴って網膜剥離となり失明した場合には、その結果と事故による因果関係を証明するために、医師の意見だけではなく因果関係に関する法律上の意見が必要不可欠です。
3.網膜裂孔の後遺障害の賠償金額
仮に網膜裂孔で両眼が失明した場合には、後遺障害等級は一番重い1級相当となり、1眼が失明し他方の視力が0.02以下となった場合には2級となります。
1級の場合には後遺障害の慰謝料だけで2880万円、2級の場合でも2370万円が受け取れるとされています(弁護士基準の場合)。
実際には、この他に逸失利益(後遺障害がなければ将来得られていたであろう収入)などの損害が加わるため、総損害額はその何にも膨れ上がる可能性があります。
とはいえ、先述の通り網膜裂孔は交通事故との因果関係を証明することが難しい後遺症なので、正しい等級認定及び適切な賠償金の請求には弁護士のサポートが必要不可欠です。
相手方保険会社との自力の交渉では思ったような賠償額を得られないので、一度交通事故に強い弁護士までご相談ください。
[参考記事]
交通事故における後遺障害1級の慰謝料相場と逸失利益の計算
4.まとめ
泉総合法律事務所では、これまでに数多くの交通事故被害者の方からご相談いただき、慰謝料や後遺障害申請の問題を解決してきました。
その中で培われた実績や経験値、キャリアには絶対の自信がありますので、交通事故被害でお悩みの方は是非とも当事務所にご相談ください。
一人ひとりのお悩みに合った適切な解決方法をご提案いたします。