過失割合 [公開日]2018年4月23日[更新日]2021年5月17日

自転車事故の「弱者救済の論理」とは?自転車と自動車の過失割合

近年、自転車が絡んだ交通事故が増えています。

特に自転車対自動車の事故の場合、自動車の過失割合が当事者の予想以上に大きくなる傾向があります。
そのため、「過失割合に納得がいかない」と思う方は結構多いのではないでしょうか。

今回は、自転車対自動車の事故の場合、自動車の過失割合が大きくなる「弱者救済の論理」について、具体的な過失割合の例も絡めながら解説します。

1.自転車事故の過失割合について

(1) 過失割合とは

交通事故の損害賠償額を算定するにあたっては、その被害者の過失を考慮します(民法722条2項)。

過失割合とは、事故の当事者のうち、「どちらにどれくらい責任があるか」を示す割合です。

例えば、加害者の被害者に対する損害額が100万円で、被害者にも過失があり、被害者:加害者の過失割合が30:70という事故があった場合、加害者側に支払ってもらえる賠償額は100万円の70%(=70万円)となります。

交通事故における過失相殺について|損害賠償に大きな影響

[参考記事]

交通事故における過失相殺とは何か?わかりやすく解説

過失割合は、事故の詳細な状況を聞いた加害者側の保険会社が算定・被害者に提示してきます。
しかし、被害者はこの過失割合に納得がいかない場合、二つ返事で合意する必要はありません。

[参考記事]

交通事故の過失割合|もめる・ごねる相手に納得いかない場合の対処法

(2) 自転車の過失割合が軽減される理由

自転車対自動車の事故が起きると、多くの場合、自転車の過失割合は小さく、自動車の過失割合が大きくなる傾向があります。

自動車側からすると「理不尽では?」と思ってしまうような極端な割合になることもあり、なかなか示談成立に至らないケースもあります。

と言うのも、そもそも自転車は、以下のような理由から「立場が弱く救済されるべき」とされているのです。

  • 免許制ではない
  • 子どもや高齢者も運転する
  • 保険に入っていない使用者が多い
  • 自動車のように車体で保護されておらず、事故で受けるダメージが大きい 等

よって、「弱者は救済されるべきである」という弱者救済の考え方(弱者救済の論理)が適用され、自転車の過失割合は小さく・自動車の過失割合は大きくなる傾向があるのです。

2.自転車対自動車の具体的な過失割合

自動車同士の事故はもちろん、自転車対自動車の場合も、過去の裁判例などを参考にした「過失割合」の基準があります。
これらには、弱者救済の論理が適用されています。

(1) 信号機のある交差点での事故

双方の信号が何色だったかによって過失割合が決められます。

【直進車同士の事故】
自転車青:自動車赤 → 0:100
自転車赤:自動車青 → 80:20
自転車黄:自動車赤 → 10:90
自転車赤:自動車黄 → 60:40
どちらも赤 → 30:70

自動車が信号無視をした場合の過失割合は0:100である一方、自転車が信号無視をした場合の過失割合は80:20です。
自動車よりも自転車が保護されていることがよくわかります。

(2) 信号機のない交差点での事故

信号機のない交差点での事故の場合、道路幅や事故の形態によって細かく基準が設定されています。

例えば、道路幅が双方同じ・直進者同士の事故の場合、自転車:自動車の過失割合は基本的に20:80です。こちらでも自転車が保護されています。

(3) その他自転車関係の事故

他にも、以下のような過失割合が基準となっています。

【自転車の巻き込み事故】
自動車が左折する際、左方にいた自転車と接触 → 自転車10:自動車90

【渋滞中の事故】
渋滞時に車の隙間を自転車がすり抜けた場合 → 自転車10:自動車90

【ドア解放時の事故】
解放された自動車のドアに自転車がぶつかる事故 → 自転車0:自動車100

このように、自転車特有の事故でも、基本的に自転車の過失割合は小さく設定されています。

自己の形態はそれぞれ異なりますので、ご自身の事故のケースでは過失割合がどの程度なのか分からないという方は弁護士にご相談ください。

3.自転車の過失割合の修正

上で示した過失割合はあくまでも基準であり、事故の状況によって自転車の過失割合が小さくなったり大きくなったりします。

【自転車の過失割合が小さくなる場合】
自転車の運転者が子どもや高齢者 → -5%
自転車横断帯や横断歩道を走行中の事故 → -5~10%
自動車の著しい過失 → -5~20%
自動車の重過失 → -10~30%

 

【自転車の過失割合が大きくなる場合】
夜間の事故(車は自転車を視認しにくいため) → +5%
自転車が右側通行していた場合 → +5%
自転車の著しい過失 → +5%
自転車の重過失 → +10%

自動車側の過失としてはスピード違反や脇見運転が挙げられますが、自転車側の過失の例としては、右側通行、二人乗り、片手運転、飲酒運転、灯火義務違反(無灯火)などが挙げられます。

また、自転車の速度は通常時速15㎞程度と想定されており、これを大幅に超えている速度で走行していれば自転車の過失割合はかなり大きくなるでしょう。

この他、自転車の方が過失割合が多くなるようなケースについては、以下のコラムで詳しく解説しています。

[参考記事]

自転車と車の事故の過失割合|自転車が悪いとどうなる?

4.まとめ

このように、自転車と自動車の事故は「弱者救済」の考え方から、自転車側の過失割合が小さくなり、自動車側の過失割合が大きくなることがほとんどです。

よって、自転車が絡んだ交通事故は、過失割合において「双方が納得のいく解決」とはなりにくいのです。

交通事故でお悩みの方、不安がある方、過失割合に納得いかない被害者の方は、自転車事故に留まらず、どうぞお気軽に泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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