自転車保険に入るメリットとは〜自転車の交通事故に備えて
自転車は、自動車のように免許は不要で、非常に便利な乗り物です。小学生からお年寄りまで、日常的に乗り回している方も多いでしょう。
しかし、自転車は対自動車では被害者、対歩行者では加害者となるケースがあります。
自転車運転者は必ずしも交通ルールを熟知しているとは限らず、いったん交通事故になると、自分が被害者になったときにも加害者になったときにも大きなトラブルに発展します。
自転車事故には、自動車対自動車の事故とも自動車対歩行者の事故とも大きく異なる特性があるので、以下で押さえておきましょう。
1.事前知識として知っておくべき4つのポイント
(1) 自転車は車両に該当
自転車は道路交通法上「軽車両」といって、車両扱いとなります。
従って、自転車には道路交通法による各種の規制が及びます。
(2) 思わぬ大怪我を負う可能性
自転車は、普通に運転していれば速度10キロ前後のスピードが出ます。
そのため事故発生時に受けるダメージが大きいことも少なくありません。
ヘルメットやプロテクターをしていない人がほとんどで、無防備状態ですから、頭を打って大ケガをすることも多いです。
(3) 罰則強化
近年、自転車事故の危険性が重視されたことにより、自転車運転への規制が強まっています。
2015年6月、改正道路交通法が施行されて、危険な方法で自転車を運転した人に講習や罰則が科されるようになりました。
(4) 自転車保険の一部義務化
自動車やバイクの場合、自賠責保険(強制保険)に加入しなければならないことは周知されていますし、ほとんどの方は任意保険にも加入していることでしょう。
自転車でも自治体によっては自転車保険の加入が義務付けられている自治体があります。
たとえば、名古屋市、滋賀県、大阪府、兵庫県、鹿児島県などがあり、兵庫県はいち早く自転車保険の義務化を採用しました。
2.自転車の違反行為罰則は厳しい
先ほど述べましたが、近年自転車事故の危険性が重視されたことから、自転車の違反行為の取り締まりは厳しくなっている傾向にあります。
自転車を運転するときに違反となる行為は、以下の14項目です。
- 信号無視
- 通行禁止違反
- 歩行者用道路における徐行違反
- 通行区分違反
- 路側帯通行時に歩行者の通行を妨害する
- 遮断機が降りている踏切への立ち入り
- 交差点安全進行義務違反
- 交差点優先車妨害
- 環状交差点における安全進行義務違反
- 指定場所一時不停止違反
- 歩道通行時の通行方法違反
- ブレーキ不良自転車の運転
- 酒酔い運転
- 安全運転義務違反
以上のように、自転車には、歩行者にはなく、むしろ自動車に近い様々な交通ルールが適用されるので、交通ルールを守って運転しましょう。
3.いざという時のための自転車保険
自転車は気軽な乗り物ですし、日常、自転車に乗る機会は多いと思います。
気軽な乗り物ゆえに安易な気持ちで運転し、「事故に遭ってしまった」「事故を起こしてしまった」ということもあります。
そこで役に立つのが自転車保険です。
(1) 相手から十分な支払いを受けられない可能性
対自動車を相手に事故に遭うと、治療費などは基本的には加害者から支払いを受けることができます。
自賠責保険は強制加入ですし、任意保険にも加入しているのが通常ですから、加害者又は加害者加入の保険会社から治療費などが支払われます。
しかし自動車保険に加入していない場合には、十分な支払いを受けることができないおそれがあります。
そのため、自分がケガをしてしまった際の自衛手段としては、いわゆる「傷害補償」といった類いの自転車保険に加入しておくことをおすすめします。
(2) 物損(特に相手車両)の賠償
自転車の運転中、相手の車を傷つけてしまったら、相手から車の修理費用を請求されます。
相手の自動車が高級車なら、修理費用も高額になることもあります。また代車費用や評価損も請求されることもあります。
そこで、自分の落ち度によって自動車を傷付けてしまった場合に使えるいわゆる「個人賠償責任保険」といった類いの自転車保険です。
自動車保険の対物賠償責任保険といったイメージに近いでしょう。
(3) 被害者への賠償金支払い
自転車同士や対歩行者相手に事故を起こすと、自分が加害者になってしまいます。
その場合、被害者に対して治療費、休業損害、慰謝料といった支払いや、さらに後遺障害が残った場合には数千万円から場合によっては1億円前後の高額な賠償金を支払わなければなりません。
被害者に対する賠償として、自動車保険で言うところのいわゆる「対人賠償責任保険」といったイメージです。
4.自転車事故の過失割合
(1) 自転車対自動車の過失割合
自動車と自転車の事故の場合、自転車の方が弱い立場になるため、一般的な過失割合はやはり自動車のほうが高くなってきます。
そうは言っても、場合によっては自転車側の過失が大きいとして、加算修正されることがあります。
たとえば、以下のようなケースでは、自転車に加算修正されてしまいます。
①著しい過失があった場合
- 自転車の二人乗り
- 脇見運転
- 自転車のブレーキなどの制御機能が正常に作動していなかった。
- 飲酒運転
②重過失があった場合
両手放しで運転していた場合は重大な過失と判断され、大幅に過失割合が加算されることになります。
③高速走行
時速20キロ以上で走行していた場合は過失割合が加算されます。
④夜間走行
夜間は車が自転車を発見しにくい状況にあり、車が自転車を発見することの方が難しいからとされています。
これらのような場合には自転車の過失割合は高くなってしまい、20%~30%の過失割合とされることもあります。
そうなると、たとえば自動車の修理費用が50万円だったとして、10万円から15万円の負担となり、決して軽くはない負担となります。
その場合の自動車に対する賠償として、自転車保険が役に立つという訳です。
(2) 自転車対歩行者の過失割合
対歩行者の場合、自転車は車両の扱いになりますので、自転車のほうが過失割合はやはり高めになります。
たとえば、以下のようなケースでは自転車の過失100%(修正要素がある場合もありますが)とされています。
- 歩行者が青信号で横断を開始し、自転車が赤信号で侵入した場合
- 歩行者が青信号で横断開始、その後赤信号になったとしても、自転車が赤信号侵入した場合
- 横断歩道上内での事故
- 歩行者用道路における事故
- 歩道における事故(自転車も歩道を直進走行している場合)
- 路側帯における事故(自転車が路側帯を直進走行している場合)
- 歩車道の区別のない道路であっても歩行者が右側端を通行している場合
このように対歩行者の場合は自転車に過失100%とされるケースが少なくありません。
その場合の歩行者(被害者)に対する賠償として、自転車保険が役に立つという訳です。
5.まとめ
以上、簡単ではございますが、自転車保険の内容についても触れつつ、自転車事故を起こしてしまった場合のご説明でした。
泉総合法律事務所には、これまで多数の交通事故問題を解決させてきたという実績が豊富にあります。初回相談は無料ですので、まずは当事務所の弁護士へご相談ください。
それぞれのお悩みに適した解決方法をご提案させていただきます。