後遺障害等級11級とは|慰謝料相場と逸失利益を解説
交通事故に遭われてしまった方で、懸命に治療を続けたものの身体に痛みなどの後遺症が残ってしまった、という方もいらっしゃるかと思います。
医師からの後遺症の診断が出ていれば、交通事故が原因の後遺障害として、加害者側から受け取れる賠償金額を増額できる可能性があります。
ここでは、後遺障害の11級に認定された場合の後遺障害に関する賠償金(後遺障害慰謝料・逸失利益)について具体的に見ていきます。
1.後遺障害11級の事例
まず、交通事故後に以下のような症状が残った場合、後遺障害11級に該当する可能性があります。
- 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
- 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
- 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
- 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
- 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 脊柱に変形を残すもの
- 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
- 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
より具体的には「瞬きが通常通りには出来ないような場合」「瞼を閉じたときに、角膜など目全体を覆いきれない場合」「10本以上の歯を失った・使用不能になってしまったような場合」「片方の手の人差し指、中指または薬指のうちのどれか1本を失った場合」などは、後遺障害11級と認定される可能性が高いでしょう。
この他、後遺障害11級の症状は多岐にわたることから、交通事故に遭い、当該症状の疑いがある方は、すぐに医師や弁護士に相談されることをおすすめします。
2.後遺障害11級で請求できる慰謝料・逸失利益
11級に留まらず後遺障害が認定された場合は、相手方に請求できる賠償金の項目として「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」の2項目が増えることになります。
これらの項目は、後遺障害認定が非該当の場合は請求できないものになります。
いずれも金額は高額になることが多く、事故後の生活を補償してくれるものですので、後遺症が残った場合は適切な等級で認定を受けることが非常に重要となります。
(1) 後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料は、怪我をしたことによる慰謝料(入通院慰謝料・傷害慰謝料)とは別に請求できる、後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料(精神的損害への賠償)になります。
慰謝料の算定基準には、「自賠責基準」「任意保険会社基準」「弁護士基準(裁判基準)」の3つがあります。
どの基準で算定をするかにより金額に大きな開きが現れますが、交通事故の加害者側の任意保険会社は、大抵の場合最も低額な自賠責基準に近い金額を提示してくるでしょう。
【後遺障害11級の後遺障害慰謝料相場】
自賠責基準:136万円
任意保険基準:約150万円(保険会社により異なる)
弁護士基準(裁判基準):420万円
このように、弁護士基準とその他の基準では300万円弱も変わってきます。
弁護士基準は裁判でも利用される算定方法であり、弁護士が示談交渉に介入することにより適用することができます。
よって、被害者の方の将来を適正に補償できるだけの後遺障害慰謝料を受け取るためには、弁護士に依頼することが必須と言えるのです。
[参考記事]
交通事故の慰謝料は、弁護士基準の計算で大きく増額!
(2) 後遺障害逸失利益と計算方法
「逸失利益」とは、後遺障害が残ってしまったことにより失われてしまった利益のことを言います。
具体的には、後遺障害が残ってしまったことにより労働能力が喪失してしまうことから、その分の将来的な労働によって得られたであろうはずの利益を賠償してもらうのです。
逸失利益は、次の算式で計算します。
後遺障害逸失利益=基礎収入(税金などの各種控除なしの年収)×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
後遺障害11級では、労働能力喪失率は原則として20%です。例えば、基礎収入(年収)800万円の人が後遺障害11級の認定を受けると、事故後一年間の逸失利益は単純計算で「800万円×(100分の20)=160万円」となります。
なお、就労可能年数は、通常は67歳までを基準とします。
また、逸失利益は一括で受け取ることになるため、将来的に生じ得る利息分(中間利息)を控除するために、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用いて調整を行います(※「国土交通省 就労可能年数とライプニッツ係数表」を参照)。
例えば、年収800万円、年齢45歳、労働能力喪失率20%の場合、ライプニッツ係数は15.937(令和2年4月1日以後に発生した事故の場合)であり、逸失利益は以下のように計算されます。
逸失利益=800万円×20%×15.937=2549万9200円
ただし、症状的には11級の認定が認められても、例えば脊柱の変形傷害など、「実際の仕事に影響が出ていない」と思われるような症状のケースでは、保険会社が逸失利益を低く見積もって提示してくることもあります。
このような場合には弁護士を入れて、就労について影響が出ていることを立証する必要があります。
3.まとめ
泉総合法律事務所には、後遺症が残ってしまうような大怪我を負った交通事故被害に関するご相談が数多く寄せられ、後遺障害等級認定にも力を入れて取り組んでまいりました。
その中で培われたノウハウや実績、経験則などには絶対の自信がございます。
交通事故被害でお悩みの方や、後遺症が残ってしまった方は、是非とも泉総合法律事務所にご相談いただければと思います。
お悩みの方一人ひとりに寄り添った、丁寧な対応をお約束いたします。