レンタカーで交通事故!自動車保険による補償はどうなる?
レンタカーを運転中に交通事故に巻き込まれてしまった場合、レンタカー会社に対する支払い義務が発生する可能性があります。
その際、レンタル時に加入した自動車保険や、自分がもともと加入していた自動車保険による補償はどのように適用されるのでしょうか。
万が一の場合に備えて、各自動車保険の保障内容をよく確認しておく必要があるでしょう。
この記事では、レンタカーによる交通事故のケースで、各自動車保険による補償がどのように適用されるかについて解説します。
1. 「相手が悪い」事故でもレンタカー会社に支払う?
レンタカーで交通事故に遭ったケースでは、自動車保険の免責額に達するまでの金額や、ノンオペレーションチャージ(交通事故でレンタカーの修理が必要となったことにより、一定期間レンタカーを休車させなければならなくなったことによる営業上の損害を補填するもの)について、オプション料を支払っていない限り、レンタカー会社に対する支払いが必要になります。
しかし、レンタカーの運転者には交通事故の責任が全くない場合にも、このようなレンタカー会社への支払いを行わなければならないのは納得いかないという方もいるかと思います。
この点、法的にはどのように考えられるのでしょうか。
(1) レンタル契約上の責任は免れない
結論から言えば、運転者がレンタカー会社に対する責任を免れることはできないことがほとんどでしょう。
なぜならレンタカー契約においては、交通事故のケースについて、運転者の過失の有無にかかわらず、運転者が車両の破損による損害やノンオペレーションチャージについて賠償義務を負うと定められているのが通常だからです。
運転者に過失がない交通事故のケースでは、レンタカー会社と運転者の間では、「どちらにも責任がない」状態といえます。
しかしこのような場合にも、どちらかが発生した損害を被らなければなりません。
これを「危険負担」といいます。
実際にどちらが損害を被るか(危険を負担するか)については、契約内容によって定めることになっています(契約の定めがない場合は、民法の規定に従います)。
そのため、レンタカー契約において運転者が交通事故についての危険を負担するという内容が規定されていたとしても、契約の定め方の問題に過ぎず、あながち不合理とはいえないのです。
(2) 加害者に対して求償することは可能
ただし、運転者がレンタカー会社に対して支払わなければならなくなった金銭については、運転者が交通事故によって被った損害といえます。
そのため、相手方に過失が100%あるケースでは、運転者は加害者に対して、レンタカー会社に支払った金銭の全額を損害賠償として求償することができます。
2.自身が加入している自動車保険はレンタカーに適用できる?
もともと車を所有している方が、旅行先などでレンタカーを借りるようなケースでは、すでに自分が運転する車について任意の自動車保険に加入していることも多いでしょう。
その場合、自分がもともと加入していた自動車保険を、レンタカーに対して適用して補償を受けることは可能なのでしょうか。
(1) 原則として適用できない
この点、任意の自動車保険は、原則として車両ごとに加入することになっています。
つまり、車両にかけられた自動車保険は、その車両を運転している最中に発生した交通事故のみを補償の対象としているのです。
したがって、レンタカーなどの他の車両を運転している最中に交通事故に遭った場合には、自分の車両にかけている自動車保険による補償を受けることが原則としてできません。
(2) 他車運転特約があればレンタカーにも適用可能
ただし、任意で加入する自動車保険には、「他車運転特約」を附帯させることができる場合があります。
他車運転特約とは、自動車保険をかけている車両だけではなく、他の車両を運転している最中に交通事故に遭った場合にも保険金を受け取ることができる特約をいいます。
他社運転特約を付けている場合には、自分が所有している車にかけている自動車保険を、レンタカーに対しても適用することが可能です。
しかし、他車運転特約を用いて自分がもともと加入していた自動車保険を適用した場合には、保険等級が変更され、それ以降の自動車保険料が上がってしまいます。
このことを考慮すると、他車運転特約付きの自動車保険に加入済みだとしても、レンタカー契約時の自動車保険を利用して補償を受けた方が、トータルで見るとコストを抑えられる場合もあるかもしれません。
3. レンタカーで交通事故を起こしてもまた借りることはできる?
被害者としてでも加害者としてでも、レンタカーで交通事故を起こしてしまった場合、その後レンタカーを再び借りることができなくなってしまうのではないかと不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
実際の取扱いはどのようになっているのでしょうか。
レンタカーを借りることについては、レンタカー会社の間で問題がある利用者についてのブラックリストのようなものをシェアしているということはありません。
したがって、借金を踏み倒した場合などとは異なり、レンタカーで交通事故を起こしたとしても、次回以降のレンタカー利用に影響が生じることは、基本的にはありません。
しかし、実際に交通事故を起こしたレンタカーを借りたレンタカー会社については、交通事故の態様などによっては、個別に出入り禁止処分を受けてしまう可能性もあります。
たとえば酒気帯び運転や、きわめて乱暴な運転を行ったようなケースでは、レンタカー会社から問題のある利用者と認識され、次回以降の利用を断られてしまう場合もあるかもしれません。
交通事故は、時として一定の確率で起こってしまうものではありますが、運転者の側から積極的に交通事故などのリスクを高めるような行動を取ることは、厳に慎むようにしましょう。
4.加害者としてレンタカーで交通事故を起こした場合
最後に、レンタカーを運転中に加害者として交通事故を起こしてしまった場合、どのような責任が発生するかも簡単に見ていきましょう。
交通事故によって相手方に損害を与えてしまった場合、運転者はその損害を対人・対物ともに賠償する義務を負います。
また、交通事故によりレンタカーを壊してしまった場合、レンタル契約違反に該当し、レンタカー会社に対する損害賠償義務も負います。
レンタカー会社に対して賠償しなければならないのは、主に車両の破損に関する賠償と、ノンオペレーションチャージの2つです。
車両の破損に関する賠償については、基本的には車両の修理費相当額の支払い義務を負うことになります。
一方ノンオペレーションチャージは、レンタカーの破損の程度にもよりますが、おおむね数万円程度が設定されているケースが多いようです。
レンタカーを借りる際に自動車保険に加入した場合には、交通事故時に運転者が負担する責任について補償を受けられます。
レンタカーの自動車保険は、被害者に対する対人賠償・対物賠償、さらにレンタカー会社に対する車両賠償のいずれも補償の対象に含んでいることがほとんどです(ただし、レンタカーの自動車保険による補償には「免責額(損害賠償義務がその金額を超えた部分のみ補償が行われるライン)」が設定されている場合があるので注意が必要です)。
また、レンタカー会社に対して支払うノンオペレーションチャージは、原則として自動車保険による補償の対象外となります。ただし、レンタカー会社に対してあらかじめオプション料を支払っておけば、ノンオペレーションチャージ自体を免除してもらえるケースもあります。
なお、無免許運転・酒気帯び運転・契約者以外がレンタカーを運転している最中に交通事故に遭った場合など、交通事故の態様が悪質なケースについては、自動車保険からの補償が一切行われないこともあります。
5.まとめ
交通事故に遭ってしまったケースでは、保険の適用のされ方なども含めてさまざまな事情を考慮し、対処方法を考える必要があります。
もし突然交通事故に遭ってしまい、どう対応したら良いのか分からない、専門家の意見を聞きたいという方がいらっしゃれば、泉総合法律事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
なお、当サイトは交通事故で被害にあった方の専用の窓口となっているため、加害者の方からご依頼やご相談はお受けしておりません。ご了承ください。