後遺障害 [公開日]2018年3月5日[更新日]2024年4月19日

交通事故と脳内出血について。後遺障害慰謝料請求は弁護士へ

交通事故と脳内出血について。後遺障害慰謝料請求は弁護士へ

【この記事を読んでわかる事】

  • 交通事故が原因で脳出血すると、後遺障害認定が受けられる可能性が高い
  • 脳内出血による高次脳機能障害の後遺障害等級は、それぞれの障害の程度により変わる
  • 弁護士ならば、適正な値段の賠償額を保険会社に請求できる

脳内出血(脳出血)とは、文字どおり、脳の血管が破れることにより脳内において出血することです。
交通事故に遭い頭を強く打つなどして脳内出血を起こしてしまったとき、「身体は元のように回復するのだろうか?」「後遺症は残らないのだろうか?」「賠償はしっかりされるのだろうか?」など、被害者本人や家族の方々は多くの疑問と不安を持つでしょう。

今回は、時には死亡に至るケースもある交通事故の脳内出血について、損害賠償や後遺障害認定の問題を中心に解説します。

1.交通事故による脳内出血について

(1) 脳内出血の症状

脳内出血とは、脳の血管が破れることにより脳内において出血することです。
その原因としては、必ずしも頭部の外傷によるものに限られません。しかし、交通事故による脳内出血は基本的に頭部の外傷により起こります。

脳内出血が起きた場合、血の塊(血腫)が脳組織を圧迫して壊すことにより、頭痛、吐き気、嘔吐、片方の手足のしびれ・麻痺、感覚障害、構音障害(発音が正しくできなくなる障害)、言語障害、めまい、てんかん、歩行障害、記憶障害などさまざまな症状が出現する可能性があります。

各症状の程度については、出血の場所や出血量などにより、軽いものから意識障害を伴い後遺症の残るものまでさまざまです。
しかし、重症となれば脳内出血により植物状態(遷延性意識障害)となったり、最悪の場合は命を落としてしまうケースもあります。

また、このような脳内出血による具体的症状は、事故直後には認められない場合でも時間の経過により出現することがありますから注意が必要です。
よって、頭部外傷がなく事故直後に主だった症状がなくとも、頭を強く打ったならば一度医師の診断を受け、CT・MRIなどにより脳の検査を受けておくべきでしょう(脳神経外科など)。

なお、仮に脳内出血の可能性はないと思っても、明らかな物損事故の場合を除き、可能なかぎり早期に病院を受診するようにしましょう。
後の損害賠償における後遺障害等級認定などでは、事故直後の医療記録が有力な証拠となることがあるからです。

(2) 脳内出血の治療

まず、意識状態の悪さ(意識不明など)のため死の危険があるような場合には緊急手術を実施します。
他方、その程度に至らない場合には、基本的には手術はしません。

脳内出血による症状の程度のピーク(急性期)は、出血後3時間以内であるとされ、この段階での治療は、主として意識状態や全身状態の安定および改善を図ることです。

もっとも、ベッドにおいて寝たきりのまま全く身体を動かさない状態では、筋力低下、関節機能低下、皮膚の壊死、精神的疾病など(廃用症候群)の二次障害を起こすリスクがありますから、これを予防するため、感覚の刺激、ストレッチ、簡易なコミュニケーションを図るなどのリハビリを開始することが大切であると言われています。

意識状態や全身状態の安定したあと(回復期)は、本格的にリハビリを開始します。
この段階での治療の主たる目的は、運動機能の障害あるいは高次脳機能障害に対する回復を図ることです。

具体的には、運動機能の障害に関しては、平行棒を使用した直立・歩行練習などのリハビリを行います。
また、高次脳機能障害に関しては、たとえば、最初は簡易な作業・情報処理に慣れていき、徐々に複雑な作業・情報処理をこなす課題を与えるなどのリハビリを行います。

2.脳内出血が原因の後遺障害

後遺障害等級認定とは、被害者に後遺症(治療を続けてもこれ以上良くはならない症状)が残ってしまった場合、損害保険料率算出機構(自賠責調査事務所)が、被害者又は加害者側から提出された資料に基づき、その後遺症が自賠法施行令で定められた等級に該当するかどうか調査し、認定することを言います。

後遺症が後遺障害として自賠責保険に認定されることで、後遺障害が残ってしまったことについての精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料や、逸失利益(後遺障害によって労働能力が喪失・低下することにより、将来得られるはずであったのに得られなくなってしまった収入)を加害者側に請求できます。

交通事故による脳内出血が原因の後遺障害として、代表的なのは高次脳機能障害です。

(1) 脳内出血により高次脳機能障害になる可能性

高次脳機能障害とは、交通事故により脳に損傷を受け治療をした被害者が(外見上は回復しているにもかかわらず)事故前と比較して、その人格・性格の変化、記憶・判断能力などの知的能力が低下してしまうという症状全般の総称です。これにより、社会生活や日常生活上の支障を抱えることになるケースが多いです。

一般的に、高次脳機能障害が残存した者には「①知的障害(認知障害)」「②性格・人格変化(情動障害)」の2つの類型の障害を認めるとされています。

知的障害とは、具体的には、記憶力・記銘力の低下、注意力・集中力の低下、判断力・業務遂行能力の低下、病識欠如・自己洞察力の低下などの障害を意味します。
他方、性格・人格変化とは、感情抑制能力の低下、自発性の低下、幼児性の出現、極度の気分のムラの出現、病的嫉妬、被害妄想の出現などです。

後遺障害「高次脳機能障害」はどのような症状か?

[参考記事]

交通事故の後遺障害「高次脳機能障害」はどのような症状か?

(2) 高次脳機能障害の後遺障害等級認定

交通事故における外傷性の頭部損傷で脳内出血や脳挫傷が発生し、それが原因で高次脳機能障害が残存した場合には、その障害の程度に応じ後遺障害1級、2級、3級、5級、7級、9級のいずれかに認定される可能性があります(数字が少ないほど重症とされ、賠償金額も上がります)。

しかしながら、高次脳機能障害は脳そのものの異常ではなく脳の機能障害のため、外部的・客観的に症状を判断することは容易ではありません。
障害の発見自体困難であることに加え、その医学的メカニズム自体が未解明の部分を残しており、交通事故との因果関係を証明することの難しい後遺障害であるため、その認定を受けることは容易ではありません。

実際、平成5年に起きた交通事故につき、20年後に高次脳機能障害を理由に損害請求訴訟を提起した事案において、裁判所は、事故当時の医療記録あるいは交通事故と被害者の高次脳機能障害との因果関係の有無に関する医師の意見書などを踏まえ、交通事故による高次脳機能障害の後遺障害を認定して、その損害賠償請求を認め、当時高次脳機能障害の概念は普遍的ではなかったことから被害者の長期間の通院歴のない事実は事故と高次脳機能障害との因果関係を否定する要素にはならないとしました(静岡地裁平成28年9月30日判決)。

現在の実務において、高次脳機能障害の後遺障害等級認定は、以下の順序により行われることになります。

まずは、

  • 意識障害の有無およびその程度・期間
  • 脳の画像所見
  • 交通事故との因果関係の有無

をポイントとして、交通事故による高次脳機能障害の発症を判断します。

次に、交通事故による高次脳機能障害の残存の程度につき、就労において必要となるものと思われる

  • 意思疎通能力
  • 問題解決能力
  • 作業負荷に対する持続・持久力
  • 社会行動能力の喪失の有無および程度

を判断して、その4つの能力の喪失の程度および介護の要否・程度を考慮して後遺障害の等級の認定を行います。

こうした高次脳機能障害の後遺障害等級認定の判断においては、CT・MRIなどの画像所見、治療終了時に作成される後遺障害診断書などの医療記録はもとより、介護者・家族により記載された精神症状についての具体的所見などを判断資料とします。

3.脳内出血などの人身事故対応を弁護士依頼するメリット

後遺障害等級認定は、原則として「書面審査」のみで行われます。
この認定が受けられない(非該当となる)と、高次脳機能障害など後遺障害に関する賠償金は一円も受け取ることができません。また、1級~14級まで用意されているどの等級に当てはまるかで、賠償金の額は大きく変わってきます。

認定申請の方法には、加害者の加入している任意保険会社に申請してもらう「事前認定」と、被害者が直接申請する「被害者請求」の2種類があります。
被害者請求を選べば、被害者側に有利になるよう十分な書類を揃えて認定申請ができるほか、任意保険会社との示談成立前に自賠責分の保険金を受け取れるというメリットがあります。

しかし、被害者の方が一人で被害者請求の準備を行い、申請することは困難ですので、弁護士に依頼してサポートを受けることが重要です。
後遺障害等級認定を検討している被害者の代理人として、弁護士は後遺障害認定の可能性を高めるために、適宜、申立資料の収集・整理、担当医との折衝などを行います。

そして、弁護士は最終的に被害者が受領すべき適正額の賠償金を算定して、これを加害者・相手方保険会社に対して請求します。

その請求において、過失割合や後遺障害による損害の評価などの法律上の問題点があるような場合には、弁護士は専門的知識・経験をフル活用して、依頼者である被害者の最大の利益を図るよう努めるのです。

また、弁護士は治療中でも的確なアドバイスをしたり、保険会社と治療費や休業補償に関する内払いの交渉を行ってくれたりします。

交通事故の慰謝料は、弁護士基準の計算で大きく増額!

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4.交通事故の後遺障害認定等は弁護士へ

交通事故について弁護士に依頼するメリットは多岐に渡ります。
交通事故において脳内出血を起こしたような場合には、特に、証拠収集、後遺障害等級認定、適正賠償額の算定などにつき問題が生じる可能性は高いですから、弁護士に依頼するメリットは極めて大きいでしょう。

もちろん、脳内出血を伴わない事故の場合でも、人身事故を弁護士に依頼するメリットは大きいケースが多いです。
交通事故の被害に遭われた方は、一度、泉総合法律事務所の弁護士への無料法律相談をご利用ください。

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