過失割合 [公開日]2018年3月1日[更新日]2020年7月17日

センターラインオーバー事故の過失割合について|判例で解説

「正面から走ってきた車がセンターラインオーバーだったために正面衝突してしまった」というような場合、自分は一方的な被害者だと思っていても、相手から過失相殺を主張されることがあります。
また、損害賠償(慰謝料)額について争いになる場合もあるでしょう。

相手方の保険会社の言い値で示談すると、適切な金額の賠償金を受け取れないことがあります。

センターラインオーバー事故では、相手方保険会社から提示された過失割合や損害賠償金額に納得いかない場合、自己判断せずに弁護士に相談した方が良いでしょう。

今回は、センターラインオーバーにおける過失割合や賠償金額について説明します。

1.センターラインをはみ出した事故の過失割合

(1) 基本的な過失割合|原則被害者に過失はない

「相手がセンターラインオーバーして(センターラインをはみ出して運転して)いたことによって正面衝突した」というような交通事故の場合には、過失割合は原則として、加害者100:被害者0になります。

自動車は道路の左側部分を通行しなければいけないことになっています(道路交通法第17条4項)し、道路の左側に寄って通行しなければならない(同法第18条1項)ことになっているからです。

被害者の過失を0とした判例

センターラインオーバーした自動車が、対向車線上のA自動車、B自動車に順次衝突した事案
B自動車の運転者がセンターラインオーバーした自動車の運転手の相続人に損害賠償請求したというケースです。

「一般に自車線内を走行する車両運転手には、対向車のセンターラインオーバーを予期すべき注意義務は要求されないから、具体的危険を認識するに至るまでに若干の時間的余裕を許容する必要があるし、また左側への避譲については後続車および自車の安全に対する配慮の余裕をも許容する必要があることを考慮すると、被害者が加害車両とA自動車との衝突直後に衝突回避措置を講じなかったとしても、被害者に過失相殺において斟酌するべき過失があったということはできない」(岡山地方裁判所平成23年9月12日判決)

(2) 被害者に過失が認められるケース

以下のような場合は、被害者にも過失が認められることがあります。

被害者の義務違反

加害者がセンターラインを超えて起こった交通事故で、被害者にも過失が認められるのは、まず、被害者自身にもなんらかの義務違反がある場合です。

「被害者が仮にその義務をきちんと守っていたならば、衝突を回避することが可能だった」と認定されれば、被害者にも過失が認められます。

被害者の義務違反として多いのは、被害者の車が左寄り通行義務を果たしていなかった場合や、被害者の車にスピード違反があった場合などです。

被害者に著しい過失や重過失がある

被害者の「著しい過失」とは、「前方不注視の場合」や、「センターラインオーバー車を発見したときに遅滞なく対処すれば、容易に衝突を避けられたと認められるような場合」などが当てはまります。
この場合には、被害者に10%の過失が認められます。

被害者の「重過失」とは、先述の前方不注視の時間が長い場合などです。この場合は、被害者の過失は20%となります。

また、加害者が他の車両を追い越すためにセンターラインオーバー中の場合に、被害者が15㎞以上の速度違反があれば10%、30㎞以上の速度違反があれば20%の過失となります。

もっとも、加害者にも速度違反やその他に過失があった場合には、被害者の過失割合が減るということもあります。

例えば、見通しの悪いカーブでの衝突において、加害者がわき見運転とセンターラインオーバーの過失、被害者が減速不十分で道路中央部付近を走行した過失がそれぞれあると認定された事故では、加害者80:被害者20の過失割合であるとされた判決があります(京都地方裁判所平成24年9月5日判決)。

結局は、個別具体的な事情によって、過失割合が決められるということです。

被害者に過失ありとした判例

普通乗用自動車を運転する加害者が、渋滞している自動車を避けて前方の右折直進レーンに入るためにセンターラインオーバーで進行していたところ、被害者(バイク)に正面衝突した事案

被害者の方に、速度制限違反(制限速度40㎞の道路を約時速50㎞で走行していた)と前方不注視があったと認定されました。
前方不注視の過失があったと認定されたのは、衝突の2秒前になってやっとセンターラインオーバーしている対向車線の車の存在に気付いたためです。

そのため、「被害者が制限速度を守り、前方をきちんと見ていればセンターラインオーバーの車がいたとしても衝突を避けることができた」と判断され、過失割合は、加害者80:被害者20と認定されました(名古屋高等裁判所平成26年11月28日判決)。

被害者(普通乗用自動車)が夜間に見通しのよい交差点に進行したところ、加害者(バイク)が何らかの事情によってセンターラインを超えて進行してきたために衝突した事案

被害者は見通しがよい道路を走行していたのに、加害者のバイクとの衝突直前まで加害者のバイクの存在に気付かなかったのは、前方不注視の過失があったからであると認定されました。

そのため、「被害者がもっと早くに加害者のバイクに気付くことが可能であり、加害者のバイクに早めに気付いていれば衝突を避けることができた」と認定され、加害者85:被害者15の過失割合と認定されています(東京地方裁判所平成24年5月25日判決)。

2.センターラインオーバー事故の被害者になってしまったら

このように、センターラインオーバーによる交通事故の被害者になってしまった場合、相手方から「被害者にも過失があった」と主張されることがあります。

確かに、センターラインオーバーの事故は原則として100:0とはいえ、事故の態様によって過失割合は変わります。
「こちらはセンターラインを守っていた」「相手が突っ込んできただけなのに」というもっともな主張でも、判例では被害者側にも過失が認められていることもあるのが現実です。

過失相殺がされると、被害者が受け取ることができる賠償金の合計額は大きく変わってしまいます。

交通事故における過失相殺について|損害賠償に大きな影響

[参考記事]

交通事故における過失相殺とは何か?わかりやすく解説

事故内容をきちんと検討し、被害者が正当な賠償金額を受け取れるようにするには、弁護士に保険会社と交渉してもらうことをお勧めします。

弁護士は、供述調書・実況見分書などから事故の正確な状況を把握した上で、過去の判例を元に正しいと思われる過失割合を相手方保険会社に主張します。

また、慰謝料(精神的損害に関する賠償金)につきましても、弁護士に依頼することで過去の裁判例を元にした計算方法で算出しますので、任意保険会社の主張する金額よりも大幅に増額できる可能性があるのです。

交通事故の慰謝料は、弁護士基準の計算で大きく増額!

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3.対向車が突っ込んできた!交通事故の相談は弁護士へ

センターラインオーバーに限らず、交通事故の被害者になってしまったら、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

「過失割合に納得がいかない」「相手方保険会社との示談交渉を任せたい」「受け取れる賠償金額を正当なところまで増額したい」などのお悩みは、弁護士に相談することで一挙解決できる可能性があります。

交通事故の解決実績が豊富な弁護士が、適切な損害賠償金額の獲得のために被害者の方を全力でサポートいたします。

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