通院交通費明細書の書き方|通院交通費の請求方法
交通事故で怪我をして通院をした場合、入院費や治療費だけでなく通院交通費も請求することができます。
しかし、ご自身で通院交通費明細書を書き、保険会社に提出しなければ、これらの費用は請求することができません。
また、通院交通費明細書を記入する際に「通院以外、例えば事故後の通勤でタクシーを使った場合はどうなるの?」など疑問が生じ、書き方に迷う方もいらっしゃるでしょう。
今回は、交通事故で怪我を負い通院している方のために、通院交通費明細書について解説します。
1.通院交通費明細書について
(1) 通院交通費明細書とは?
交通事故の被害者になると、さまざまな経済的損害が出てきます。車の修理費をはじめ、怪我をした場合の治療費、入院費用、慰謝料など、これらの損害は、加害者に対して請求すべきものです。
最近では、多くのドライバーが任意保険会社に加入しているため、任意保険会社に請求するのが一般的でしょう。
治療には様々な経費がかかりますが、このうち通院・入院するためにかかった交通費も相手方の保険会社が負担します。
しかし、実際上どれくらいの交通費がかかったのかを保険会社が把握するのは容易ではありません。公共交通機関を利用したのか、それともタクシーや自家用車を利用したのかによって、どれくらい通院に費用がかかったのかは異なるためです。
この通院交通費を把握するために作成されるのが、通院交通費明細書です。
保険会社から提出を求められ、通院交通費を請求する被害者が提出することになります。
このように、通院交通費明細書とは、通院にかかった費用を保険会社に報告する書類のことを指します。
(2) どこでもらえる?いつ提出するもの?
通院交通費明細書は、保険会社から取得することができます。
多くの場合は、保険会社から送付されてくる書類の中にありますので、その中のフォーマットに従って記入し送付すれば大丈夫です。
ただし、相手方が任意保険会社に加入しておらず自賠責保険に請求する場合には、ご自身で用紙を用意する必要があるので注意が必要です。
また、提出時期ですが、通常は症状固定の時期以降となります。
医師からこれ以上医学的にみて改善しない状態を指す「症状固定」あるいは「怪我の完治」が言い渡されたら、示談交渉に入ります。
このとき、保険会社に通院交通費明細書を提出すれば問題ありません。
もっとも、通院交通費が大きな負担となり、ご自身で負担し続けるのが難しいという場合もあるでしょう。
この場合は、毎月通院交通費を支払う対応を任意保険会社が取る可能性もありますので、一度任意保険会社に相談してみましょう。
(3) 嘘の内容を記入するとどうなる?
通院交通費に関する報告はご自身で行うものです。
このとき、「少し多めに記載しておこうか」などという良くない考えが頭をよぎるかもしれません。
では、虚偽の内容を書いてしまうとどうなるのでしょうか?
もし多めに請求してバレてしまった場合、保険会社に返還を要求されます。金額が大きく悪質性が高いと判断された場合は、警察に通報されてしまう可能性もあるのです。
もっとも、故意に記入したのではなく、間違えて多めに記入してしまうこともあるでしょう。この場合は、バレたとしてもその分の返還が要求されるにとどまります。
このように、嘘の内容を故意に記載し、通院交通費を多く受け取ると、保険金詐欺として逮捕されてしまう可能性があります(詐欺罪)。
虚偽の内容は書かないようにしてください。
2.通院交通費明細書の書き方
次に、通院交通費明細書の書き方を理解しておきましょう。わかりやすいようにテンプレートもご紹介いたします。
(1) 通院交通費明細書の内容
通院交通費明細書の作成は、それほど難しいものではありません。一般的に必要な氏名・住所などの内容と、通院に関する情報を書き込むのみです。
具体的には以下の情報を記入します。
- 請求者の氏名
- 被害者の氏名
- 事故の発生日
- 書類作成日
- 通院の手段、回数
- 病院の名前
- 請求者の署名捺印
通院の手段は、電車・バス・自家用車の中から選ぶことが多いでしょう。自家用車がなく、公共交通機関がない等、必要がある場合にはタクシーが認められることもあります。この点は、事前に保険会社に確認した方が無難です。
回数は病院に通院した回数を正確に記入するようにしましょう。
(2) 通院交通費明細書のテンプレート
では、実際に通院交通費明細書がどのように書かれているのかを見てみましょう。
以下は、SBI損保の公式サイトに掲載されている記載例となります。
※タクシー、有料駐車場利用の際は領収書必須
あいおいニッセイ同和損保、東京海上日動など、内容は保険会社によって少しずつ異なりますが、書くべき内容はほぼ同じです。
通院交通費明細書書式は、各保険会社がホームページ上に掲載していることも多いため、ぜひ参考にしてみてください。
3.通院交通費に含まれる範囲
最後に、通院交通費に含まれる範囲を確認しておきましょう。
残念ながら、通院交通費はどんなケースでも請求できるわけではありません。
具体的には、加害者や任意保険会社に交通費を請求することが相当といえる場合に限定されます。たとえば、タクシーの場合には、公共交通機関を利用できない理由など、その必要性が吟味されることになります。
では、通勤にかかった交通費や、家族がお見舞いに来た際の交通費は請求できるのでしょうか?
(1) 事故後の通勤・通院の交通費
通院で車を利用する場合のガソリン代・駐車場代
通院で車を利用する際にかかるガソリン代は、当然請求できます。
走行距離1kmあたり15円と定まっているため、通院交通費請求書にもガソリン代の領収書は必要ありません。
また、有料駐車場を利用しなければならなくなった場合も請求できますが、この場合は領収書が必須です。
怪我の影響で電車通勤からマイカー通勤に切り替えた場合
電車通勤の場合のよりもガソリン代などで費用負担が大きくなる可能性があります。
しかし、この場合、通院とは直接関係ないため請求は難しくなります。
ただし(生活への影響度合いや保険会社の対応にもよりますが)、増額した分のみ認めてもらえることがありますので、聞いてみましょう。
(2) 家族のお見舞い・駆けつけ費用
交通事故で被害に遭い怪我をした本人以外でも、通院交通費が認められるケースがあります。具体的には、以下の通りです。
- 入院付添人の交通費
- 重症だった場合、家族が病院に駆けつける際にかかった費用
まず、入院の際に付添人が必要な場合、付添人の通院交通費は請求可能です。
ただし、これは医師の指示等で付添が必須と考えられる場合や、子どもが入院する場合等に請求できるのみであり、「不安だから」という精神的理由での付添人の通院交通費は認められません。
また、家族がお見舞いに来る際にかかった交通費も請求できるケースがあります。
例えば、事故にあった被害者が重症で家族が病院に駆けつけた場合などです。
もっとも、軽い事故の場合や友人などの通常のお見舞いに関しては、通院交通費は請求できません。
ちなみに、付添人に関してはタクシー代が認められないケースがほとんどです。付添人は公共交通機関を利用するのが適切と考えられるためです。
もっとも、深夜に事故に遭い、公共交通機関を利用できず、タクシーを利用した場合などは請求できるのが相当といえるため、付添人でもタクシー代を請求できる可能性があります。
この他、交通事故の通院費と通院以外の交通費の請求可能範囲については、以下のコラムで詳しく解説しています。
[参考記事]
交通事故の通院費と通院以外の交通費|すべて請求可能か?
4.通院交通費請求で疑問がある場合は弁護士に相談を
個別ケースで通院交通費を請求できるのか疑問が生じたら、まずは保険会社に相談してみることです。
そして、保険会社の答えに納得できない事情がある場合は、弁護士に相談してください。本当に請求できないかどうか、個別のケースで判断・アドバイスいたします。
通院交通費請求以外でも、交通事故の損害賠償でお悩みの方は泉総合法律事務所にご連絡ください。
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