交通事故で後遺障害3級と認定されたら?加害者に請求できる損害賠償
【この記事を読んでわかる事】
- 後遺障害3級の場合、後遺障害慰謝料は通常1990万円程度
- 後遺障害慰謝料に加え、入通院慰謝料も認められる
- 後遺障害慰謝料だけでなく、逸失利益なども請求することができる
ご家族が、ある日突然交通事故で後遺症を負い、後遺障害3級と認定された場合に、加害者に対して、どのような損害を主張できるのでしょうか?
また、その場合の損害額はどのようにして計算されるのでしょうか?
そして、後遺障害3級とはどの程度の障害なのでしょうか?
請求できる損害の種類や額は、個々の事案に応じて異なりますが、共通して請求することが多い項目について、計算方法や裁判上で認められる平均的な金額などを説明していきます。
1.後遺障害って何?
後遺障害とは、事故などの負傷が、一般的に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待しえない状態で、かつ残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状固定)に達したときに、身体に障害が残る状態をいいます。
後遺障害に基づく慰謝料などの損害賠償を加害者に対して請求するためには、症状固定の状態で、損害保険料算出機構(自賠責調査事務所)などの等級認定を経る必要があります。
後遺障害は、第1級から第14級までの等級で分類されていて、後遺障害3級は後遺障害の中でも3番目に重い後遺障害の等級です。
では、どのような後遺症が残れば、3級と認定されるのでしょうか?
2.後遺障害3級の症状
それでは、どのような場合に、後遺障害3級と認定されるのかを見ていきましょう。
後遺障害3級は、
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になった場合
- そしゃく機能や言語機能を廃した場合
- 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
- 両手の手指の全部を失ったもの
に分類されます。
1の、失明とは、眼球を失ったものや、明暗を区別できないもの、ようやく明暗を区別できるものとされています。
2は、具体的には流動食以外は摂取できなくなった場合や、4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、咽頭音)のうち、3種以上の発音が不能となった場合などとされています。
3および4は、生命維持に必要な身の回りの動作は可能であっても、高度の神経系統または胸腹部臓器の機能に著しい障害があって、終身にわたって、労務に服することができないような状態を指します。
5は、親指にあっては指節間関節、その他の指にあっては近位指節間関節以上を失ったものを指します。
ここで、③の「労務に服することができない」というのは、特に高次脳機能障害の場合には、身の回りのことは自分でもできるため、一見すると働くことが出来そうに見えたりもします。
しかし、障害によって感情をコントロールできず、職場で他人と意思疎通ができない場合や、作業に取り組んでもその作業への集中を持続することができず、すぐにその作業を投げ出してしまうような場合や、課題を与えられても手順通りに仕事を全く進めることができない場合や、大した理由もなく突然感情を爆発させるなどして、社会的に見て働けないと判断されるような場合などにも就労が不能と判断されます。
3.後遺障害3級の慰謝料相場
それでは後遺障害3級に該当すると慰謝料などの損害額はどのくらいになるのでしょうか。
後遺症に関する損害は、大きく分けると、①後遺症に関する慰謝料、②後遺症によって働けなくなったことによる損失(逸失利益と言います。)、③その他の損害(被害者の症状や固有の事情によっても異なるもの)などがあります。
①の後遺症に関する慰謝料は、3級の場合、通常1990万円程度とされています。ただ、個々の事案に応じて増減したりします。
また慰謝料としては、後遺症に関する慰謝料のみならず、後遺症以外の損害の中に、別途事故時から症状固定時までの入院、通院期間の長短を基準として算定される慰謝料もあり、入通院慰謝料とも呼ばれています。
この入通院慰謝料は、症状固定までの入通院期間に応じて発生するもので、たとえば事故後1年間入院したのちに症状固定したケースでは、入通院慰謝料としておよそ320万円認定されたケースがあります。
このようなケースだと、後遺障害慰謝料とあわせて合計2310万円の慰謝料が認められることとなります。
4.後遺障害3級の逸失利益の計算
後遺障害に関する損害は、慰謝料だけではありません。
後遺障害3級の被害者は、後遺症によって一生働くことができない程度の障害とされていますので(実際に後遺障害3級の方が、働くことが禁止されているという意味ではありません)、後遺症がなければ働いて得られるだろう生涯にわたる収入を請求することができるのです。
これを逸失利益と言います。
具体的には、被害者の①基礎収入、②労働能力喪失率、③労働能力喪失期間、④中間利息控除率をそれぞれ乗じて算定されます。
ここで、①の基礎収入とは、被害者の方の事故前までの現実の収入を基礎として計算されます。
ただ、現実の収入額以上の収入を得られる立証ができれば、その金額を基礎に計算することも可能です。
また、事故時に未成年で就業していなかったような場合には、別途賃金センサスと呼ばれる、我が国の賃金統計調査による平均的な賃金を計算の基礎とする場合もあります。
②の労働喪失率とは、後遺症によって労働が制限される割合のことですが、後遺障害3級の場合には、終身にわたって労務に服することができなくなる程度の障害とされているため、通常100%として計算されます。
③の労働能力喪失期間とは、後遺症によって労働が出来なくなる、または労働能力が制限されている期間のことを指しますが、後遺障害3級の場合には、終身にわたって労務に服することができない程度の障害ですので、労働能力は障害にわたって喪失されるとされ、労働能力喪失期間の計算の際には、通常は、就労可能な年齢とされている67歳までとされています。
④の中間利息控除率とは、逸失利益という損害は、将来にわたって発生するものですが、損害請求は、一般的には一括で請求するため、将来分の損害金をあらかじめ受け取ることによって将来発生する運用益に相当する利息を控除するというものです。
一般的には、ライプニッツ係数とよばれる係数を用いて計算します。
【参考】後遺障害・死亡事故で請求できる逸失利益の具体例と計算方法を解説
5.その他固有の事情による損害
そのほか、被害者の症状などの固有の事情に応じて認められる損害もあります。
たとえば、神経系統機能の障害として、高次脳機能障害の場合を例にしますと、介護費用が認められることがあります。
後遺障害3級は、通常は自分の身の回りのことはできる程度の障害とされているため、介護費用が交通事故による損害とは認められないことがあります。
一般的に、介護費用が通常認められるのは、後遺障害等級2級以上とされています。
しかし、後遺障害3級の障害であっても、場合によっては、介護費用が認められることがあります。
その一例が、高次脳機能障害の場合です。
高次脳機能障害の場合には、火や刃物に対する注意力が低下することからその取扱いに注意が必要だったり、入浴時の介助が必要だったりするため、職業付添人または近親者による定期的な看視が必要とされ、介護費用(看視費用)が認められるケースもあります。
【参考】交通事故で起こりうる後遺障害「高次脳機能障害」はどのような症状か
6.後遺障害以外に認められる損害
後遺症に関する損害以外にも、先ほどの入通院慰謝料のほかに、治療費、入院費用、医療器具などの費用、近親者の付添の費用や休業損害など、交通事故に関連して発生した損害が後遺症に関する損害とは別途請求できます。
7.まとめ
泉総合法律事務所では、これまでに数多くの交通事故被害者の方からご相談いただき、解決させてきました。
その中で培われた実績や経験値、キャリアには絶対の自信がありますので、交通事故被害でお悩みの方は是非とも当事務所にご相談ください。
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