むち打ち(神経障害)の後遺障害慰謝料

むち打ちとは

「むち打ち」は交通事故による負傷としてもっとも多い症状です。むち打ちは正式な傷病名ではなく、車の追突や衝突、急停止などにより、頭部(首)がムチを打つように振られて、痛みやしびれを引き起こした状態で、診断書などでは、頸椎捻挫、頸部捻挫、頸椎挫傷、外傷性頸部症候群といった傷病名がつけられます。

症状としては、首・肩の痛みや圧迫感、上肢の痛みやしびれ、頭痛、めまいなどがあります。また、むち打ちの場合、同時に腰椎捻挫などで腰部痛、下肢痛、下肢のしびれなどが生じていることも多いのですが、その症状及び発生原因は頸部のむち打ちと共通性があります。 むち打ち損傷(腰椎捻挫などの腰部の損傷も含む)については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。

【むち打ち損傷に関する後遺障害等級と認定基準】

等級 後遺障害の内容(認定基準)
別表第2
12級13号
局部に頑固な神経症状を残すもの
※具体的には、画像所見や神経学的異常所見などの他覚的所見により、症状が医学的に証明できる必要があります。
別表第2
14級9号
局部に神経症状を残すもの
※具体的には、他覚的所見により症状が医学的に証明できるとまでは言えないものの、治療状況や症状の経過などから、被害者の自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定できる(医学的に証明まではできないが説明はできる)必要があります。

後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)

等級 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) 弁護士基準
12級 93万円 (224万円) 290万円
14級 32万円 (75万円) 110万円

注)12級の自賠責保険金額224万円のうち、93万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。 ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。

むち打ち損傷による症状は痛みやしびれなどの自覚症状が中心ですので、客観的に見て分かるものではありません。そのため、痛みやしびれなどの後遺症が残っていても、他覚的所見により医学的に証明ができない、医学的に説明できない、として後遺障害等級が認定されず、非該当となってしまうケースが少なくありません。

非該当と判断されるケースとしては、①事故態様が軽微、②医療機関への通院実績に乏しい、③症状の一貫性・継続性がない、④症状が重篤でない、⑤症状に常時性がない、⑥画像所見・神経学的所見に乏しい、といったケースがあります。以下、具体的に説明します。

① 事故態様

後遺障害等級認定を受けるためには、後遺障害が残ることの説明がつく事故態様でなければなりません。事故態様が重大であるほど、後遺障害等級認定がされる可能性は高くなり、事故態様が軽微の場合、事故と後遺障害の関連性が認められない可能性があります。

② 医療機関への通院実績

事故から症状固定までの期間の医療機関への通院実績(通院回数)も、後遺障害等級認定の判断に影響します。痛みやしびれがあるのであれば、普通はきちんと通院して医師の診察を受けるはずですから、通院実績が乏しいと「本当に痛みやしびれがあるのか?」と疑われてしまいます。

事故から症状固定までの間に、何か月間で何日通院しなければならないという基準があるわけではありませんが、一般的には、通院期間としては6か月以上、通院頻度としては、事故から3か月程度は週2~3日程度は通院することが望ましいと言えるでしょう。 なお、医療機関というのは、整形外科などの病院のことで、整骨院や接骨院への通院は医療機関への通院実績とはみなされませんから、整骨院や接骨院に通院する場合でも、必ず並行して病院へ通院する必要があります(そもそも、後遺障害診断書は医師に書いてもらう必要がありますから、その意味でも病院への継続的な通院は必須です。)

③ 症状の一貫性・継続性

後遺障害等級認定を受けるには、受傷直後から症状固定まで症状が一貫・連続していることが必要です。症状が一貫・連続しているかは、診断書やカルテなどの記載から判断されます。たとえば、事故直後の診断書やカルテに記載のなかった症状が、事故から3か月経過後のカルテに記載されていたとしても、一貫性・連続性は認められない可能性が高いでしょう。そのため、事故直後から医師にきちんと自覚症状を伝えて、カルテや診断書に記載してもらうことが重要となります。

④ 症状の重篤性

後遺障害として認定されるためには、残存した症状がそれなりに重くなければなりません。ある程度重篤なものでなければ、いずれ治るとみなされてしまいます。診断書や後遺障害診断書に記載された自覚症状が、「凝り」、「違和感」、「だるさ」などとなっている場合は、重篤でないとして非該当とされる可能性が高いでしょう。

⑤ 症状の常時性

基本的に、後遺障害は常にその症状がある場合でなければ認定されません。「普段はしびれがないが、天気の悪い日や寒い日にはしびれが出る」とか、「普段は痛みがないが長時間歩くと痛みが出る」という記載ですと、非該当とされる可能性があります。

もし、実際には、「普段からしびれがあるが、天気の悪い日や寒い日にしびれが強くなる」とか、「普段から痛みがあるが長時間歩くと特に痛みが強くなる」というような場合は、医師に自覚症状を正確に伝え、そのように記載してもらう必要があります。

⑥ 画像所見・神経学的所見

画像所見の画像とは、レントゲンやMRIなどの画像のことです。事故からなるべく時間が経たないうちに、病院でレントゲンやCT、MRIを撮ってもらい、何か異常がないか調べてもらいましょう。画像上で異常が見つかり、それが外傷性のものであると判断される場合には、後遺障害が認定されやすくなります。

また、以下のような神経学的検査を行い、正常な状態には見られない異常な結果が出た場合にも、後遺障害が認定されやすくなります。

・神経痕症状誘発テスト
(頸部では、ジャクソンテスト、スパーリングテストなど。腰部では、ラセーグテスト、SLRテスト、FNSテストなど。)
・深部腱反射テスト
・徒手筋力テスト(MMT)
・筋萎縮検査

部位別後遺障害慰謝料一覧

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