上肢の後遺障害慰謝料
上肢とは、肩から先の部分、つまり、上腕、前腕、手を含めた部分を言います。 上肢の後遺障害としては、①欠損障害、②機能障害、③変形障害があります。それぞれの後遺障害等級と認定基準は以下のとおりです。なお、手関節から先の部分については、手指の後遺障害として、別途後遺障害等級が定められています。
① 欠損障害
上肢の欠損障害については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。
【欠損障害に関する後遺障害等級と認定基準】
等級 | 後遺障害の内容(認定基準) |
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別表第2 1級3号 |
両上肢をひじ関節以上で失ったもの ※「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、(1)肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの、(2)肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの、(3)ひじ関節において、上腕骨と橈骨(とうこつ)及び尺骨とを離断したもの、のいずれかに該当するものを言います。 |
別表第2 2級3号 |
両上肢を手関節以上で失ったもの ※「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、(1)ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの、(2)手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの、のいずれかに該当するものを言います。 |
別表第2 4級4号 |
1上肢をひじ関節以上で失ったもの |
別表第2 5級4号 |
1上肢を手関節以上で失ったもの |
※なお、「離断」とは、関節部で切り離すことで、「切断」とは、関節部ではないところで切り離すことです。
後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) | 弁護士基準 |
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1級 | 1100万円 (3000万円) | 2800万円 |
2級 | 958万円 (2590万円) | 2370万円 |
4級 | 712万円 (1889万円) | 1670万円 |
5級 | 599万円 (1574万円) | 1400万円 |
注)1級の自賠責保険金額3000万円のうち、1100万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。 ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。
② 機能障害
上肢の機能障害については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。
【機能障害に関する後遺障害等級と認定基準】
等級 | 後遺障害の内容(認定基準) |
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別表第2 1級4号 |
両上肢の用を全廃したもの ※「上肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)の全てが強直(きょうちょく)し、かつ手指の全部の用を廃したものを言います。 ※「強直」とは、関節部の骨及び軟骨の変形や癒着が原因で起こる関節可動域制限(簡単に言うと、動かなくなること)です。 |
別表第2 5級6号 |
1上肢の用を全廃したもの |
別表第2 6級6号 |
1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの ※「関節の用を廃したもの」とは、(1)関節が強直したもの、(2)関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの、(3)人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、のいずれかに該当するものを言います。 ※「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものを言います。 |
別表第2 8級6号 |
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
別表第2 10級10号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの ※「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、(1)関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの、(2)人工関節・人口骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの以外のものを言います。 |
別表第2 12級6号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの ※「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものを言います。 |
後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1100万円 (3000万円) | 2800万円 |
5級 | 599万円 (1574万円) | 1400万円 |
6級 | 498万円 (1296万円) | 1180万円 |
8級 | 324万円 (819万円) | 830万円 |
10級 | 187万円 (461万円) | 550万円 |
12級 | 93万円 (224万円) | 290万円 |
注)1級の自賠責保険金額3000万円のうち、1100万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。 ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。
③ 変形障害
上肢の変形障害については、次のように後遺障害等級と認定基準が定められています。
【変形障害に関する後遺障害等級と認定基準】
等級 | 後遺障害の内容(認定基準) |
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別表第2 7級9号 |
1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ※「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、(1)骨幹部等(上腕骨の骨幹部又は骨幹端部)に癒合不全を残すもの、(2)橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの、のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものを言います。 |
別表第2 8級8号 |
1上肢に偽関節を残すもの ※「偽関節を残すもの」とは、(1)上腕骨の骨幹部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要とするもの以外のもの、(2) 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要とするもの以外のもの、(3) 橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの、のいずれかに該当するものを言います。 |
別表第2 12級8号 |
長管骨に変形を残すもの ※「長管骨に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものを言います。0 (1)(a)上腕骨に変形を残すもの、(b) 橈骨及び尺骨の両方に変形を残すもの、のいずれかに該当する場合で、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)以上のもの (2)上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの (3)橈骨又は尺骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、硬性補装具を必要としないもの (4)上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの (5)上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に、又は橈骨若しくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの (6)上腕骨が50度以上回旋変形癒合しているもの |
後遺障害慰謝料(自賠責保険基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責保険の慰謝料基準(自賠責保険金額) | 弁護士基準 |
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7級 | 409万円 (1051万円) | 1000万円 |
8級 | 324万円 (819万円) | 830万円 |
12級 | 93万円 (224万円) | 290万円 |
注)7級の自賠責保険金額1051万円のうち、409万円が後遺障害慰謝料に相当する額です。以下の級も同様の考え方です。 ご覧のように、弁護士基準の場合、後遺障害慰謝料だけで、自賠責保険金額の上限額に近い額となります。