自動車保険 [公開日]2020年2月13日

SNS上での損保ジャパンの交通事故示談問題について

先日、ツイッター上で「追突事故に遭ったのに相手の保険会社である損保ジャパンが示談金を支払ってくれない」というツイートが拡散されていました。

投稿者は「明らかに相手に過失がある事故で愛車が壊されたのに、大手損害保険会社である損保ジャパンが支払いを拒否するのはなぜなのか?」と憤っており、同調する人もたくさんいたようです。

実際、追突事故などの明らかに加害者に責任のある事案でも、加害者側の保険会社が示談金支払いをしぶるケースは少なくありません。

今回は、損保ジャパンを始めとする保険会社がどういった理由で保険金支払いを拒むのか、また支払いを受けられないときにどのように対応したら良いのか、弁護士が解説します。

1.損保ジャパンの示談金問題の概要

(1) 事故の概要

今回取り上げる「損保ジャパンによる示談金不払い」事件の概要は以下のとおりです。

被害者は、母親を後部座席に乗せて愛車を運転していたところ、高速道路で追突事故に遭い、車が大きく損傷し、本人も母親も負傷しました。

ところが、相手方の任意保険会社である損保ジャパンは修理費用を全額支払わず、車を買い替えるとしても「買換諸費用は払わない」と通知しました。また、代車の提供も途中で打ち切られたそうです。

被害者は「なぜ保険会社が修理費用を全額払わないのか」「買い替える新車の費用全額と買い替えにかかる諸費用を払ってほしい」と望んでいます。

また被害者は直接損保ジャパンの担当者と話をしており、損保ジャパンの担当者に対しても強い憤りを感じていて、「担当者を変更してほしい」という希望も持っているようです。

(2) 被害者本人が直接協議している理由

本件では、被害者が損保ジャパンの担当者と直接交渉をしており、被害者側の保険会社は間に入っていません。

一般的な交通事故であれば被害者側にも保険会社がついて、加害者の保険会社と保険会社同士で話し合うものです。今回は何故、被害者側の保険会社が間に入っていないのでしょうか?

それは、おそらく今回の事故が追突事故で「加害者の過失割合が100%」だからです。

被害者側に過失がない場合、被害者側の「対人賠償責任保険」や「対物賠償責任保険」が適用されないので、それらの保険に附随する「示談代行サービス」も適用されません。

被害者の過失がない事故では保険会社が示談を代行してくれないので、被害者が一人で加害者の保険会社と示談交渉をしなければならないのです。

このことで、被害者は大きなストレスを抱えることとなり、示談が紛糾してトラブルが拡大する要因にもなります。
被害者はどうしても感情的になりますし、交通事故の賠償金計算方法などについての詳しい知識を持っていないからです。

2.損保ジャパンの対応について

(1) 修理費用を全額払わない理由

さて、今回、損保ジャパンは被害者に対し「車の修理費用を全額支払わない」と言っています。
このことも被害者の感情を逆なでする要因となっているのですが、なぜ損保ジャパンは修理費用を全額負担しないのでしょうか?

それは、物損事故における車の修理費用の支払い基準と関係します。

物損事故で対物賠償責任保険が適用されれば、当然、保険会社が修理費用を支払います。
ただしその金額は「車の時価」が限度です。車が壊れたとき「時価を超える損害は発生しない」と考えられるからです。

車が古くなっていて時価が落ちていると、車の修理費用よりも時価の方が低くなるケースが少なくありません。その場合、修理費用を全額出してもらえず時価までしか補償されません。

本件でもおそらく、車の時価が低くなっているため、修理費用の全額に満たなかったと考えられます。

とは言え、被害者にしてみると「大切な愛車が壊れたのになぜ修理費用が全額出ないのか?」と憤るのは当然でしょう。

(2) 代車を途中で打ち切る理由

今回、被害者は車を買い替えることにしたようですが、損保ジャパンは新車の納車を終える前に代車を回収しようとしています。
なぜ、まだ代車が必要なのに、損保ジャパンは代車利用を打ち切ってしまうのでしょうか?

これについては、代車が認められる「一般的な期間」と関係します。

代車を提供するときには、保険会社が代車費用を負担しているのが通常ですが、代車の利用が認められるのは必要かつ相当な期間です。

車を修理する場合には2週間程度、買い替えるとしても1か月程度が限度とされるケースが多数です。車を買い替えるのに1か月もあれば充分だろうという理解です。

本件でも、損保ジャパンは事故後ちょうど1か月くらい後に代車の回収を打診しています。

こう考えると、損保ジャパンによる対応は異常とはいえないのですが、被害者としては納得できないと感じられるでしょう。

(3) 買い換え費用を全額払わない理由

本件の被害者は、事故車の修理をせずに買い替えることにしたようです。
ところが損保ジャパンは新車の費用を全額負担することはできないと主張し、被害者が憤慨しています。

なぜ、損保ジャパンは買い替え費用(本体代金)を全額負担しないのでしょうか?

これについても先ほどの「物損事故における負担限度額」と関係します。

車が壊れたら保険会社は損害賠償を行いますが、その限度は「車の時価額」です。交通事故で車が壊れたときに「時価を超える損害が発生することはあり得ない」からです。

賠償金を受け取った被害者が修理に使うか買い替えに使うかは被害者の自由ですが、買い替えるとしても時価以上の金額は出ません。

よって、損保ジャパンは「時価までしか本体代金を払わない」という対応をしているのです。

被害者としては「事故で車が壊れて新車が必要になったのに、なぜ全額を払ってもらえないのか」と納得できず、トラブルになっているのでしょう。

(4) 買換諸費用を払わない理由

損保ジャパンは、買い替え諸費用についても支払を拒絶してトラブルを拡大させています。

損保ジャパンが車の買い換え諸費用を払わないのは妥当な判断と言えるのでしょうか?

これについては、妥当といえない可能性があります。
裁判例でも、車の買い換えが必要なときには加害者は買い替えに必要な諸費用を負担すべき、と判断したものがたくさんあるからです(東京地裁平成6年6月24日、東京地裁平成8年6月19日、東京地裁平成15年8月4日など)。

被害者が加害者へ請求できる諸費用として、以下のようなものが挙げられます。

  • 自動車取得税
  • 登録費用、登録にかかるディーラーの費用(報酬として相当な分)
  • 車庫証明の費用、車庫証明の代行費用(報酬として相当な分)
  • 納車費用など

本件でも、被害者が訴訟を起こせば、買い替え諸費用の請求が認められる可能性があります。

3.保険会社の対応が悪いときにはどうすれば良い?

本件で被害者は「保険会社の対応が悪い、冷酷で非常識だ」と嘆いていますが、このように保険会社の対応に納得できないときにはどうすれば良いのでしょうか?

(1) 交通事故の賠償金計算についての知識を得る

まず必要なのは、交通事故の賠償金計算についての知識です。物損と人身の損害で、それぞれどのような損害賠償金をどの程度受けられるのか、法的な相場を知っていれば、相手の対応が正しいのか・間違っているのかを判断できます。

間違っているなら法的な根拠を示して反論できますし、正しいなら納得して受け入れる姿勢を取れるので、トラブルを避けられます。

(2) 弁護士に相談する

では、「どうやって交通事故の賠償金計算についての知識を得る」のかですが、ネット記事は不正確なことも多いので、鵜呑みにするのは危険です。
特に、ツイッターなどのSNSでは、知識のない人が適当に同情し、煽ったり、あるいは攻撃してきたりすることがあります。

正確な知識を得るには、個別に弁護士へ相談すべきです。交通事故案件の経験が豊富で、詳しい弁護士なら、状況に応じた適切なアドバイスを行えます。

交通事故で保険会社の対応に不満…。弁護士に交渉を任せれば解決する!

[参考記事]

相手の保険会社の対応が悪い・連絡が遅い場合

4.交通事故の不満・疑問は弁護士にご相談を

交通事故で保険会社の対応に疑問をお持ちの方がおられましたら、トラブルが大きくなる前に、交通事故の解決実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

たとえば、本件のような事案なら、相手方保険会社の対応が正しいのか・間違っているのか、間違っているならどのように示談を進めれば良いのか等をアドバイスできるでしょう。
ご希望なら、そのまま弁護士が示談交渉を代行できます。

交通事故の不満・疑問は、お一人で抱え込まず、まずは一度弁護士に相談していただければと思います。

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